4.流石ですね-ポイントは[自分の意思で]ってところかな-
全48話予定です
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「流石ですね」
話を終えて共に部屋をあとにしたアイザックがそう称える。
「今までいろいろなシチュエーション、いろいろな人物に接してきたお陰かな。それに、ただ言う事を聞かすだけなら薬剤、という手もあるし。ポイントは[自分の意思で]ってところかな。人から言われるのと自分からするのとでは違うでしょ?」
と返す。そして、
「もちろん、モニタリングは続けてください。そして否定的な情動にはブレーキを、肯定的な情動にはアクセルを、それぞれ悟られない程度にかけ続けてください。レイドライバーの制作もこれから行うんだ、彼女たちには[考える時間]が出てくる。その間に考えが変わられても困るからね」
と続ける。
「レイドライバー本体の作成も、組織培養についても急ピッチでお願いします。とにかく帝国がどう出るかが分からない現在、一体でも多くのレイドライバーを揃える必要が出てきたんです」
――それが一番かなぁ。
本来であれば[調律]された、正規のパイロットなりサブプロセッサーなりを積んだ方が良いのは目に見えている。だが、現実がそうさせてくれない。現実は、カズたちの予想より早いペースで進んでいるのだ。三期生にしても本来ならもう数か月は待ってからの配備になる予定だった。それが二人も早めて配属になったのだから。
しかし、今回頭数を揃えるからと、廃棄予定だったサブプロセッサーを搭載して、果たして戦力になり得るのか、という疑問が付きまとう。
だが、そこは[アップデート]の力である。ある程度の疑似戦闘経験を積ませた状態で配備が可能になるのだ。これは非常に大きな点である。何故なら以前に語った通り、これからもしサブプロセッサー単体で戦地に出す事が一般化した場合、被検体を選ばずに[処置]出来るからである。独特の間という問題を無視すれば男性だってサブプロセッサー候補たり得るのだ。そして、もしかしたらいずれは[独特の間]すらも克服できるかもしれない。それはまるで実際に脳科学の著しい発展があったように。
――それでも、今はそのレベルじゃあない。
のはカズが一番良く分かっている。子宮のリンクという現在のシステムを採用している時点で、パイロットやサブプロセッサーは女性でなくてはならないのだ。それは簡単に変更出来るものではないのだから。
「ちなみにどのくらいで出来ますか?」
とカズが尋ねれば、
「本体の組み上げには一週間もあれば。部品はそろっていますからね。組織培養もほぼ同程度の時間があれば出来上がるかと」
という答えが返って来る。
「確認です、二体のレイドライバーが一週間程度で配備できる、それでいいんですね?」
「その通りです」
即答である。
「ではその間、彼女たちの心の変化には十分注意してください。もしネガティブな感情になった場合はそれをそらす方向で。あくまでも気づかれない程度にお願いします」
と念を押す。
「ですが、実戦配備になった時に彼女たちにどうやって命令を聞かせるんですか?」
これも当然の疑問だろう。その答えは、
「その際は生体コンピューターに頑張ってもらいましょう。あのコンピューターは、どの個体もそうですが、コントロール権限はこちら側にあるんですから。つまり、どうあがいても彼女たちは[枷]から逃れられない」
つまりは[枷]を有効利用しよう、というのだ。
――自分で作っておきながら何だけど、このシステムは本当に当事者にしてみれば酷なものだと思うよ。思考の自由すら操作されるんだから。
それだけ植え込んだ生体コンピューターというのが、良い意味でも悪い意味でも高性能なのだ。観測者、被験者のどちらが使うかによって用途がまったく異なる。そしてそれは完璧に動作するのである。
「了解です。ではそのように」
アイザックはそう言うと、先ほどの部屋に戻っていった。
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