37.トリシャとクリスは-機体は改修を受けた-
全48話予定です
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第一世代型のレイドライバーの背中にあるメンテナンスハッチを特殊なボルトで外すと、そこには[人]が入っている。いや[人]と呼べるだろうか?
その手足は無く、それぞれの付け根には機械が取り付けられている。
体はというと、カズたちが着ているパイロットスーツのような、体のラインがぴっちり出るような素材のものが着せられていて、女性がそこには据え付けられているのだ。その証拠に胸にはふくらみがある。そして股間のあたりにパイプがつながっている。
頭部は、というと、バイク用より一回り小さい、顔の輪郭が分かりそうなヘルメットをしていて、口のあたりと頭頂部に何かパイプのようなものがつながっている。硬質な全頭マスク、と言ったら近いのだろう。事実、人であるのが分かるのが、カバーを外した為、呼吸音が聞こえてその胸が上下している。
そして、その頭部があるちょうど斜め上の後ろにもう一つのカタマリがあるのだ。
これが第一世代型、つまりはカズとレイリアが搭乗している機体なのだ。カズの機体は少し特殊なのだが、レイリアの機体はその当時の標準的な構成で出来ている。
レイリアには姉と弟がいる。姉はコアユニットとして手足を切り落とされてレイドライバーに据え付けられ、弟は生体コンピューターを埋め込まれて自我を無くし、演算装置[プロセッサー]としてコアユニットの頭部の斜め上にセットされている。
現在のサブプロセッサーは、レイドライバーに搭載されているものについては自我、つまり意識があり会話が出来る存在なのだが、第一世代型が作られた当初は自我を保ったままの生体コンピューターの埋め込みが非常に難しかったのである。
それはトリシャ、クリスの両機にも言える話だ。以前の彼女たちの機体にはコアユニットがいて意識のないサブプロセッサーが搭載されていた。
だが、二人の機体はアルカテイル攻防戦で背後からスナイピングを受けて両名のコアユニットの死亡という事態を招いた。もちろんそのままにしては置けない、修理なりの対策が必要になる。
そこでトリシャとクリスは[こちら側]の人間になる事で秘密を明かされ、さらに機体は改修を受けた。その際に搭載されたのが現在のゼロツー、ゼロスリーというサブプロセッサーである。彼女たちはコードネームで呼ばれ、決して本名で呼ばれる事は無い。それは彼女たちに施された脳科学の施術、さらには発育過程での[調律]のおかげ、というべきか。
実際、ゼロツーもゼロスリーも本名はおろか家族の名前すら憶えていない。その家族構成は憶えていても名前は消去されているのだ。
そんな環境にゼロフォーはいる。今回はゼロフォーもスリーワンもスリーツーもすべてパイロットを搭載していない。これはカズのいうところの[無人機]の実験なのだ。だから今回の戦闘にこの三体が駆り出されたといえる。
この三体に明確なウイークポイントは存在しない。何故ならサブプロセッサーである彼女たちはコックピットの座席下部に位置しているから。幾度かの改修、改善で、現在の機体ではそこにサブプロセッサーを置くという設計になったのだ。
これは被弾時の操縦に大きく関わってくる。第一世代型が背中へのスナイピングで行動不能になった教訓で、サブプロセッサーを設置する場所をより低重心化しようという話になったのだ。
同盟連合のレイドライバーは身長が約八メートルの機体になる。帝国もほぼ同程度のようではある、というのは戦闘で知り得た情報であるが。
そしてそのコックピットと言えば、人間でいうところの胸部から腹部にあたる部分だ。そのコックピットのパイロットが乗る座面にサブプロセッサーを置けば、少なくとも頭部、胸部に被弾したくらいではどうという事はなくなるのだ。そしてコントロール系統は低重心化の理念に沿ってサブプロセッサーのある場所から下に集中している。つまり人間でいうところの下腹部以下をやられなければ、ほぼほぼ行動不能になるというのはなくなるのである。
そして今回の作戦に使用されている機体は改修を受けたあとの機体、つまり低重心化された機体なのだ。
だからこそゼロフォーたち三体は背中の、それも少し下側に盾をセットして戦っているのである。
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