36.伏せての遮蔽が可能だ、という話になる-と来れば榴弾が効果的なはず-
全48話予定です
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それは以前の、例えばトリシャたちの戦闘のようなひどい撃ち合い、というほど露骨ではなかった。
ゼロフォーたちの目の前には砂丘が広がっていたのだ。そしてその砂丘は波打っていた。だが、ずっと砂丘が広がっているという訳ではなく固い地面もある、そんな砂と岩石が混在した複合地形だ。そしてそれは凹凸がある地形になっている。
という事は伏せての遮蔽が可能だ、という話になる。
敵も味方も遮蔽をとりながら伏せた状態での戦闘になった。
――と来れば榴弾が効果的なはず。
というゼロフォーの思考がそのまま[命令]となってスリーワン、スリーツーに伝わる。
同盟連合のレイドライバーはマシンガンが標準装備である。
マシンガン、と言っても人間の兵士が持つそれとは威力がケタ違いだ。
この、マシンガンという装備は帝国も標準装備のようである。その弾丸の威力は、もちろん使っている弾頭よるが、一般的な弾薬であればレイドライバーの装甲をかなりへこませるくらいには威力がある。それはつまり同じ個所に続けて被弾した場合は損傷、という結果を招く。帝国の弾頭もほぼ同程度だろう。
だからこそ味方機を盾にしながら至近距離で撃ち合った前回の作戦では、お互いの僚機の大破、という結論を招いたのだ。同盟連合も帝国も射撃システムはしっかりしているようで、弾丸は効果的に一か所に集中していったし、一か所ずつ破壊されていったのである。
初めは盾を使用していたが、この盾というのは万能ではない。至近弾で、同じ個所に複数回弾を喰らえば当然破壊されるものだ。こちらも相手も効果的に破壊していく。
するとどうなるか。
そこにはむき出しの本体が現れるという訳だ。
話をマシンガンに戻すと、同盟連合の使っているそれにはオプション装備が付けられるようになっている。それは大抵がグレネードランチャーを装備している。そしてグレネード、つまり榴弾は一か所に集中する弾丸には劣るものの、相手の装甲を傷つけることくらいは出来るのである。そしてグレネードを複数回喰らえばそれなりのダメージが行く。先ほどの射撃システムではないが、同じ場所に当て続けられた場合、装甲を貫通する事だってあるのだ。
それに今は夜、つまり夜戦である。そして敵は例の装備を実装してきた。それは現在は同盟連合も開発にこぎつけられた兵装である。
格子模様のシート状のもので、そのシートは、熱線、X線、電磁波の、いずれの方法でも検知不可能なシートなのである。
確かに、熱線を出さないようにするシートは既に一般的に普及しているが、ここまでのステルス性能のあるものは、今までは帝国にしかなかった。それをとある戦闘で同盟連合が鹵獲、分析したのち開発に成功した、という内情がある。
戻ると、遮蔽のあるこの状況で取れるオプションと言えば限られてくる。熱源にも反応しない敵にマシンガンを下手に撃っても弾の無駄遣いになる。ならば弧を描いて飛ぶグレネード弾を使用すれば。
――こちらは三体、向こうは二体。必然的に攻撃は分散するはず。
三対二、これは大きな戦力差だ。実際、こちらのグレネードは効果的に敵に当っているように見える。もちろん遮蔽があるし、例の兵装があるから最終的に近くまで寄って行って確かめなければ実際のところは分からないが。
だが、それは相手にも言える話だ。現にグレネードと思われる弾丸が、文字通り[降って来た]のだから。ゼロフォーはこの状況をあらかじめ予測していた。それは地形データや相手との距離、接敵するであろうポイント、それらを複合的に見ての判断なのである。その判断とは砂丘を遮蔽に盾を背中にセットして伏せて戦う、というものだ。そうすれば敵がグレネードなり榴弾なりを放ってきた場合でもある程度の損害は防ぐことが出来る。もちろん盾を立てて弾を防ぐという方法も無しではないが、相手に前述の、榴弾の類を使用されては背中にダメージが行く。
第一世代型の背中はウイークポイントだった。いや、ゼロゼロとゼロワンがまだ現存するから正確に言えばまだ過去形ではないのだが。その背中はウィークポイントだというのは帝国に知られる事態となった。それを補うために装甲板を足しはしたが、そこは急造、そんなに頑強には作れない。
理由は至って単純、背中にはメンテナンスハッチがあるからだ。
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