35.数は二-HALO降下を考慮すべきだし、考慮されるべきものだろう-
全48話予定です
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艦隊戦が行われる少し前、さぁこれから艦載機を出して戦うぞ、という所まで話は遡る。
――いよいよ艦隊戦、航空戦闘が行われる。私たちは本当にこのまま何も起きないで過ごせるのか。
そうゼロフォーが考えた矢先、アラートが鳴る。何事かと思えば、上空の高高度に敵飛行物体と思われるものが現れた、それを生体コンピューターがキャッチしたのだ。
数は二。
これはゼロフォーでなくともHALO降下を考慮すべきだし、考慮されるべきものだろう。
そう、同盟連合が先手を打った時点で、状況的に潜水艦での攻略は不可能なのである。それは主要な港はフリゲート艦が、つまり駆逐艦が押さえている。そんな状況下で浮上、陸揚げなどしていられるのか。
そして帝国はそうなるだろうと踏んだのであろう、輸送機という移動手段を用いてきた。それはおそらく[次はこの手は使えない]と既に分かっていのかも知れない。これがICBMなどのミサイルの類であれば海中発射をという手もあるが、いかんせんレイドライバーは精密兵器だ。それに技術では先んじている同盟連合でさえもまだ水中行動型のレイドライバーは開発できていない。それは帝国も同じだろう。
――飛行物体がある。迎撃指示を出さないと。
と考えている間に無線通信を送る。[無人機]同士の間に会話は不要だ。何故なら無線を送る側、受ける側、それぞれに生体コンピューターを積んでいるから。こちらは暗号化し無線を相手に送り、それを元に戻す復号という作業をしてその会話の内容をコンピューターが直接脳に伝える。その仕組みが出来上がっているからこそ、改めて言葉にする会話は不要なのだ。さらにそれは暗号通信というオマケつきである。
「SAMを」
流石に人間相手にはこの手は通用しない。なので無線で呼びかける。その呼びかけられた相手にしても当然レーダーで捕捉している。
なので、
「ミサイル発射」
と来る。通常の落下物であればSAM、つまり艦対空ミサイルであれば撃墜も可能かもしれない。だが、相手は高高度から降下してきている。
HALO降下(高高度降下低高度開傘)とは、まさしく対空砲の届かない高高度から降下を開始し、ギリギリまでパラシュートを開かず、地上に激突するギリギリの高度で開く、という戦術である。これなら対空砲の射程内には極力入らずに済む。だが、開傘のタイミングを逃せば、結果は言うまでもないだろう。
同盟連合は一度、この方式で敵地に攻め入っている。この技術というのはごく一般的なものなのだ。だが、一般的と言えるほどにこの降下方法は迎撃しにくい。敵は更に[仕掛け]をしてきていた。
デコイである。
これにはこちらのミサイルはかく乱されてしまった。当然だがこちらのレイドライバーは炸薬散弾を使用してはいるものの、相手が降下して来たポイントより距離が離れていた為にこの方法では補足できなかった。
――となれば、通常弾頭に切り替えて迎え撃つか。
その思考がそのまま各機に伝わる。
敵はやはり少し距離のあるところに着地したようだ。ざっと見積もっても十キロは離れている。逆に言えば十キロ程度しか離れずに降下したのだ。
――三角陣形で挑む。スリーワンとスリーツーは前に。
それぞれ指示を出す。もちろんゼロフォーの指示に抗う事は出来ない。この二個のサブプロセッサーはそれぞれに生体コンピューターを積んでいるからだ。反抗しようとすれば[修正]が入る。それはさぞかし不快なものであろう。
例えるなら、読書に集中したいのに大音量で音楽を流された挙句、目の前に別の文字が浮かぶ、くらいの感覚と言えば分かりやすいだろうか。反抗する事に集中しようとすると、コンピューターがそれを検出、思考に直接介入して[修正]を行うのだ。
必然、二体のレイドライバーは前面に出る。その少し後方でゼロフォーが構えるという陣形が出来上がった。
――そのまま直進。射程に収めたらそれぞれ射撃を。
ゼロフォーたちもリンクを使用している。なので単独での索敵よりもより正確な索敵、敵との距離が測れるのだ。
そして歩く事数キロ、敵と会敵したのだある。
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