33.で、どうすりゃあいいんだ?-これに慣れて頂ければ-
全48話予定です
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戦闘は艦載機同士の戦いから始まった。敵は艦載機を満載しての戦闘を、こちらは艦載機とエルミダスからの増援とで対処したのである。
「で、どうすりゃあいいんだ?」
アルファワンがボヤく。確かに艦長は[信じてやってこい]と言っていた。だが、自分の目で見なければ信用できない、という心情もその通りだと思う。だからこんなボヤきがボソリと出るのだ。
「ファイブワンといいます。もう一機はファイブツーとお呼びください。ディスプレイに予測線を出します」
ファイブワンはそう言うと直ぐに行動に移す。それは立体地図の中に浮かんだ線状のものである。その線の通りに敵戦闘機が飛ぶのが、最低でも六〇パーセントという線なのだ。だが、これには慣れが必要である。いくら三次元ディスプレイが実装されているとはいえ、その運用は道半ば。まだまだの面が大きい。
しかし、
「これに慣れて頂ければ」
というファイブワンに、
「そうだったな。クレイジーマンの話は聞いているし、そもそも実際に一緒に戦った仲だ。戦場は結果がすべて、そうだよな」
と声は明るい。戦場を経験して来た船乗りはそういうものなのかも知れない。とっつきづらいが、一度打ち解ければ話は早い、そんな感じである。
「ええ、もちろんそちらの指揮下に入りますが、この予測線を利用して頂ければ幸いです」
とファイブワンは答える。
「了解だ。しかしその喋り方といい、本当に人工知能なのか?」
との問いには、
「すみません、私たちにも守らないといけない規則があります。その質問はそれに抵触してしまうのです」
としか答えられない。それはそうだ、コンピューターを埋め込んだ脳みそだけの存在、なんて知れでもしたら。
だが、これはいずれは認知されていくものなのかも知れない。新型兵器も、秘密兵器も世間一般に浸透していけば新型でも秘密でもなくなる。だが、それにはまだまだ時間がかかる。それ故の[人工知能]という訳だ。
「ああ、困らせてしまったな。その辺りは艦長からも[深く聞くな]と言われていたんだ、すまない。じゃあ気分を変えていざ出陣、というところかな」
アルファワンは笑っていた。
戦場で笑えるのは素晴らしいものだ。何故ならそれだけの余裕があるという証拠だからである。心に余裕があるから笑えるのである。
艦載機が順次発艦していく。
ファイブワンはアルファリーダーと共に、ファイブツーはブラボーリーダーと共に作戦行動を、となった。三五FDIも三八FIもそうだが、多元リンクというものが組めるようになっている。
これは通常型の三五Fにも搭載されているのだが、互いにリンクする事で敵戦力の位置を三次元で特定し、その行動予測を算出するというものだ。つまりは今まで散々出て来ている予測線、というやつである。そして通常型が算出した予測線よりも最新鋭機たちが算出した予測線はより精度が高く出来ている。通常型が出した予測線、つまり敵の行動がその線通りに進む確率が五〇パーセント行くかどうかというのに対して、最新鋭機が算出したそれは、最低でも六〇パーセントは硬いというものなのだ。
そして多元リンクは単元リンクと違い、数が多ければ多いほど精度が増すのだ。
つまり、三八FI二機がそれぞれリンクした状態で予測線を算出する。その算出に使用するのが艦載機の三五Fすべての機体、という事になる。
ちなみにレイドライバーとのリンクも構築できるようになっている。
この、多元リンクシステムを考案したのは軍の人間だが、実現にこぎつけたのは研究所の功績が大きい。研究所というのは何も人体実験だけをしているのではない。兵器の開発もその一部に含まれているのである。
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