32.やれやれ、夜戦とはな-要は[使えるか、使えないか]それだけなのだ-
全48話予定です
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同盟連合の艦隊が帝国の艦隊を捉えた、という情報は夜半になってもたらされた。帝国は夜戦を仕掛けてきたのだ。
「やれやれ、夜戦とはな。で、お嬢ちゃん、新型は出していいのか?」
その相談事をゼロフォーにしてきたのである。
ジャクソン率いる空母群にも当然作戦参謀となる人物がいる。指揮官に対して助言や進言をするのが主な仕事だが、今回の作戦は彼らが想定しているのとは違う、従来の戦法が大きく変わった戦闘であるという認識がある。そのジャクソンをして作戦参謀にではなく[人工知能]であるゼロフォーに尋ねてきたのだ。
それは彼女の戦いっぷりを目の前で何度も見せられた為だ。もちろんカレルヴォ大尉が操縦桿を握っていた。その彼をクレイジーマンと呼んだのもジャクソンである。しかし、その背後にいた存在も当然考慮に入れなければならない。
そんなジャクソンに、
「はい、指揮系統はそちらに準ずる形でいいかと思います。この無人機は今回が初参戦です。ですので、まずは戦闘経験の豊かなリーダーの元で戦うのが良いかと。ただし、高性能なコンピューターに変わりはありません。もちろん艦載機はすべて三五Fと認識しています。その機体には」
そう、通常型の三五Fは、最新鋭機である三五FDI等とリンクして敵の予想ラインが三次元ディスプレイに映されるように設計されている。三五Fはあらかじめ設計段階から三五FDI等の最新鋭機と組むように設計されているのである。それはアップグレードではない、設計当初からの標準装備である。研究所は新型機である三五Fの設計にも関わっているのだ。そして現在、同盟連合はこの機体の配備を各地で進めつつある。
また、研究所もその機体へのサブプロセッサーの搭載、更には一段階あげて指揮官機を三八FIにする計画も軍に通してある。
しかしながら今回は三八FIのお披露目である。当然指揮官機にはまだ早い、と来れば経験を積ませるべきであろう。三八FIの秘密はまだ研究所から出向している整備クルー以外は知らない。ゼロフォーにはあらかじめそれを知っているから、彼女は[リーダーの元で]と言ったのだ。もちろん三次元ディスプレイの件は伝えてある。なので、指揮は通常戦闘機が、予測進路を三八FIが示すという形をとったのである。
「分かった、じゃあこっちはそれでいいとして、嬢ちゃんはどう見る?」
それは敵レイドライバーの話である。その言葉に、
「私は、敵はHALO降下で来ると踏んでいます。ですので艦隊にはSAM(艦対空ミサイル)をお願いしたく思います」
と答えた。ジャクソンは[ふーむ]と言ってから、
「分かった、上空だな?」
と返す。その問いに、
「はい、指揮官殿」
とだけ返した。
「よーし、んじゃあ上空監視を厳に、対艦戦闘用ー意」
どうやらジャクソンの腹は決まった様である。
それ程にゼロフォーという存在はジャクソンの中に深く刻まれたのだ。相手が人間なのか、それとも[人工知能]なのか、等というのは実際にコックピットを開いてみてみなければ分からないし、そんなのはジャクソンにしてみればどうでもいい話である。要は[使えるか、使えないか]それだけなのだ。そしてゼロフォーはジャクソンの中では[とても使える]人材なのだろう。
「じゃあ、艦隊と上空はこっちで受け持つ。だが、HALOで来るとなれば撃墜は難しいだろう。対人型戦闘は任せる」
とジャクソンは一任したのだ。
その問いかけにも、
「もちろんです」
とゼロフォーは返すのだ。
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