30.こんなに性能がいいのか?-相談にも乗ってもらえそうだ-
全48話予定です
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同盟連合の艦隊は二手に分かれて所定の帯域に展開していた。
それは、エルミダス基地を守る為のイージス艦を旗艦とした艦隊と、旧イエメンの、今回の作戦の要となる空母群である。
ゼロフォーを含む揚陸艦は、護衛のフリゲート艦を連れてアデン港へと向かう。
その他、主要海軍基地であるホデイダ、ソコトラ、アルムカラ、ペリム基地にそれぞれフリゲート艦を派兵した。
もちろん主幹である空母からフリゲート艦を離すのは賛否があるであろう。だが、今回は原子力潜水艦が相手である。フリゲート艦、つまり駆逐艦は対潜戦闘にも特化している。これなら港を破壊しなくとも相手の撃破が可能だ。何故なら原子力潜水艦はレイドライバーの揚陸の為に必ず接岸しなければならないからである。そんな至近距離なら、いくら原子力潜水艦といっても爆雷攻撃の恰好の的、という訳だ。
更に言えば、港を破壊するのは極力避けたいという思惑があった。もしかしたらこれから同盟連合の州になる可能性のある国だ、下手に破壊行動に出て感情を逆なでしたくないというのがある。
もちろん艦隊は艦隊でアデン港近くで展開している。
ゼロフォーたちが上陸したあとの相手の攻撃は、なかった。それどころか歓声すら上がったのだ。もちろん自分たちが同盟連合である旨はあらかじめ無線で相手に伝えてある。それに対する相手からの返答は[歓迎する]だった。ここは首都からも近い。
そう首都。
この地はまだ[国]という体を保っているのである。逆に言えば、それだけ帝国の支配が薄い地ともいえる。その首都から道一本で来られるアデン湾に揚陸艦が入港した時も、実際にレイドライバーが揚陸した時も、一発の弾丸も飛んでこなかったのだ。
[我々は帝国よりも、共和国よりも同盟連合への加入を希望する。これはこの国の民意の総意でもある]
相手から帰って来た返答はこうであった。幾度となく内戦を経験し、共和国のテリトリーの中での帝国の飛び地、そんな立地で起きたエルミダスという土地の同盟連合の奪還。しかもその兵器は最新鋭の人型、これだけの条件がそろって、旧イエメンは帝国ではなく同盟連合を相手に選ぼうとしているのだ。
だが、とりあえずはここでの作戦指揮官は空母艦長のジャクソン・ジャーマン大佐だ。そしてレイドライバーは、今回[人工知能]が操縦している、という話になっている。もちろん三八FIについても同様だ。
初めはジャクソンは[そんなので大丈夫なのか]と、出航前に会いに来たカズに話をした。だが、ゼロフォーの話を出して[あれと同程度、とは言わないものの高性能な人工知能だから心配しなくてもいい]旨の話をした。
では、とジャクソンは相手と話がしたいと言ってきた。もちろんそれは無線越しに実現したのだが、
「こんなに性能がいいのか? まるで人と話しているようだ」
と驚いていた。無理もない、実際は[考えるモノ]である、元は人なのだから。だが、その情報は伏せられ、あくまで人工知能という事になっている。
「なので作戦指揮権ですが、今回は艦長にあります。レイドライバー部隊への指示もお願いします」
とカズが言えば、
「上陸部隊の指揮は正直分からないことだらけだ」
と返される。
ならばと、
「では指揮官機に任されるのが一番か、と」
カズはそう言うとゼロフォーの話をした。ジャクソンもその活躍は散々目にしてきている。そのゼロフォーが指揮官機だ、となれば、
「じゃあ、上陸部隊は彼女に任せよう。相談にも乗ってもらえそうだ」
となって現在に至るのである。
大まかな指示を艦長が出す。それで細かい部分はゼロフォーが指示を出して動く、そういう形になったのだ。
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