29.作戦は直ぐに実行に移された-今回の作戦は実験、という意味合いが強い-
全48話予定です
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実際、作戦は直ぐに実行に移された。
ゼロフォー率いるレイドライバー部隊は無事に仕上がり、研究所内のテスト場で一通りの動作確認をしてエルミダス港へと向かったし、そこに寄港している艦隊は艦隊で、各艦の割り振りを行っていた。カズの意見通り、イージス艦を一隻、ミサイル艦を二隻、フリゲート艦を二隻、それぞれエルミダス港の沖合にほど近い場所に展開した。これでエルミダスの守りは一通りなったと言える。
航空機の積み込みも順調だ。とはいえ今回の作戦域はエルミダスからそれ程離れていない。それこそ航空機であればひとっ飛びの距離である。なので艦載機も目一杯に搭載して、とはしない。具体的には三十機を搭載しての出航になる。残りは必要に応じてエルミダス空軍基地から飛び立つ手はずだ。
同時にエルミダス空軍基地に配備されている三八FIの、これが実質的に初めての戦闘となる。カレルヴォがレクチャーしたあとにサンドが同じようにレクチャーをし、ゼロフォーたちが行った戦闘データの[アップデート]をかけての実戦となる。ファイブワンとファイブツーの二機だ。
ジェイク・ニコルソン大尉たち二機の三五FDIは、後詰としてエルミダスに残す形となった。それは一機、ニック・アンダーヒル二階級特進少佐を先の戦闘で失っているというのもあるが、三八FIのデータ取りが優先に、という話になったのだ。
これはカズの意向が強く反映されている。カズが言った作戦の通りに事態が進めば艦隊戦である程度雌雄が決するのだ。
ただし、相手がどう出てくるかは確実性のある情報ではない。こちらの見立てでは原子力潜水艦でレイドライバーを輸送、と考えられてはいるものの、帝国が確実にその手段を取るとは限らない。まぁ、そんな事を言い出したら戦場に[たら、れば]は無いのだから今から気にしていても仕方がないのだが。同盟連合は今予想される敵の動きに合わせて部隊を動かす、それだけである。
行軍の準備と同時にアルカテイル基地に輸送機の配備も行われた。レイドライバーを搭載出来るように内部を改装された輸送機である。それは、結果がどう転んでもいいように、万一の追加派兵が出来るように、である。今回、ゼロフォーを指揮官機とした[無人機]部隊が事態にあたる。だが、それは同時に通常型のレイドライバーがいない、というのを意味している。そんな中でもしも敵が上陸し、こちらに向かってきたら? 相手は何処から来るかにもよるが実戦経験者であると推測される。対してこちらは模擬戦と知識を与えた未経験者が二体もいるのである。
確かに今回の作戦は実験、という意味合いが強い。それはカズの意向が色濃くにじみ出ていると言って過言ではない。何と言っても作戦立案はカズその人なのだから。そして[無人機]のレイドライバーと、同じく[無人機]の三八FIという次々世代戦闘機。これらの成績如何によっては次に予想される第四陣、第五陣の戦力分配が変わって来る。それほど今回の実戦は意味のある戦いともいえるのだ。
カズは、洋上は艦隊戦で雌雄が決すると考えている。だが、それはあくまで艦隊戦だけの話である。上陸部隊に対しては、仮に上陸されれば航空支援が考えられる。それほどこの、今回想定される作戦域というのは狭いのである。何なら帝国も同盟連合も、更には共和国だって近隣の基地から戦闘機を出撃させられるくらいの狭さなのだ。
それでも帝国はこの地を戦闘地帯に選んだ。それはやはりエルミダスという土地が気に食わないのだろう。出来れば同盟連合から取り返したいが、逆に内陸であるアルカテイルまで取られてしまった。そうなると次に控えているのはグランビア市、その先は触ってほしくもない一大軍需都市のジュケーである。
だから今まで旧イエメンには手を出さなかったのだろう。たが、そこに日本戦で見せた同盟連合のメッセージがある。[何処でも戦場たり得るのだ]と。そして見事にそのメッセージは同盟連合の政治を担っているバックボーンの人々の目論見通りに事が進んだのだ。つまりは帝国を裏で支えているバックボーンにとっても益のある話だったというオチなのだろう。
ただ、一つ確実な事がある。それは戦闘はまもなく開始されるだろうという事実だ。
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