28.カズの立案した作戦とは-ではそれで行こうではないか-
全48話予定です
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「で、きみとしてはどう思うね」
――ですよね、そう来るとは思っていたさ。
事実、レイドライバーという兵器の運用は、最新鋭機などと合わせて人の脳を使用した兵器の運用はカズに一任されている。現に作戦指揮の他に作戦立案にもこうやって関わっているのだ。それだけカズという存在は軍にとってなくてはならないし、階級を鑑みてもこうして聞いてくるという、それ自体が信頼を置いているという証拠に他ならないのである。
「正直な感想を述べますと、これ、という作戦は立てられないのが現状です。ですが、相手は帝国にしたって共和国にしたって待ってはくれない。そこでです」
カズの立案した作戦とは。
まず帝国相手になるのは間違いないので、合流した機動艦隊を含む空母群を旧イエメンの主要な港近くまで派兵する。これは空母の機能である[移動式滑走路]の役割を期待しての話になる。そして、今回は三八FIを出す予定でいる。それは失う訳にはいかない機体だ、となればいつでも着陸可能なように近隣地帯に空母を、という話になるのである。
ただ、相手も当然空母群を差し向けてくると想定されるので、艦隊戦を考慮に入れないといけない。そこでイージスシステムをもつ合流した機動艦隊、という訳だ。今回合流する機動艦隊はイージス艦が二隻、ミサイル艦が四隻、フリゲート艦が四隻という布陣だ。これがそのまま現在の空母群に加わると、空母が一隻、イージス艦が二隻、ミサイル艦が七隻にフリゲート艦が六隻という大所帯になる。
だが、この艦船をすべて出していいものか。相手の目標はあくまで旧イエメンだと推測されるが、前述のとおりエルミダスとは目と鼻の先にある。当然、目標変更を、となる可能性にも着目しなければならない。
ならば、
「そもそも敵艦隊をこの海域に近づけさせなければいいのではないでしょうか。旧イエメン沖の、ある程度のところで合流した艦隊を展開して迎え撃つ。インド沖にいた空母群は現在、所定の停泊場所であるインド沖に向かったばかりです。この艦隊に、もしも大陸からの増援艦隊が来た場合は対処してもらっては?」
確かに、これなら無理なく戦える。イージス艦とミサイル艦の一部を防衛の為にエルミダス沖に残したとしても十分な打撃部隊だ。エルミダスには空軍基地もあるから航空戦力は大丈夫なはずだ。
「それに、相手のレイドライバー輸送の手段は原子力潜水艦である、と推測が付きます。それは、港に接岸しなければ降ろすことが出来ない、という意味を持っています。仮にそれらが単独行動で港に寄港したとして、上陸部隊はレイドライバー二体だけ、という形になります。ただし、この辺りには帝国の基地もある、そう考えれば航空支援は十分考慮に入れないといけません。ですが、それで相手がそれを良しとするか、これは賭けではありますが、艦隊支援が得られない状態で上陸は考えづらいか、と」
カズの言うのはもっともだ。こちらは艦隊支援も航空支援もある状態で、向こうはレイドライバー単独行動もしくは、せいぜいがあって航空支援。これは、当の指揮官としては無条件でゴーサインは出せまい。
「それで?」
と意見を続けるよう聞いてくる。
「続けます。もしも艦隊戦になり、ある程度の被害を与えられれば、その場合上陸のオプションは取りづらくなる、というのを考慮に入れて、次は共和国戦です。私感ですが、もしも帝国が上陸できなければ、共和国はそのまま引き返すと思っています。それでも敢えて戦うというのであれば、こちらはレイドライバー三体での戦闘です。これは相手が相当数を確保するか、単体の性能が良くないと相手にはなりません」
事実、共和国の人型は敏捷性にこそ優れてはいるが、射撃性能はそれほど精密、という訳ではなさそうだ。現に、ワンワンとワンツーが戦った時は、被弾は多数受けたが致命弾となるような箇所には被弾していない。それは逆に動きの比較他的遅いケンタウロス型の胸部に弾を当てられなかった、という事にもなる。
それに、
「共和国の技術が弾道回避能力に反射の原理を取り入れているのであれば、それ用に弾を撃てばいい、我が方のレイドライバーにはそれだけの演算能力はあるはずです」
反射を利用しているのであれば、反射で移動できる箇所というものがある。例えば前から弾が飛んできているのに前に飛ぶバカはいない。同様に後ろに飛ぶのもNGである。とすれば上か右か左、そして反射は個体の[癖]が出やすい。右に飛ぶ癖のある個体は右を選びやすいのである。逆に反射を利用しているからこそ、その[癖]を修正するのは難しい。
「ただ、懸案が一つ。それは相手が原子力潜水艦での輸送をあきらめた場合です。その場合はおそらく輸送機による投下が考えられます。ですが、その場合でも敵の物量にもよりますがこちらは三体、これ以上の数字は敵とて出せないでしょう」
と続けたあと、
「で、帝国も共和国も上手く撃退できたなら、この地を占領してみては如何でしょう。もちろん、占領軍という形でなくあくまでも対等の、同盟連合への併合、という形をとれば穏健派が何とかしてくれるかな、と」
確かに、それならば相手としてもメンツが立つ。占領されたとなれば内乱のきっかけにもなろうが、事実上の占領にしても[対等ですよぉ]と手を差し伸べれば、どちらにも益はある。特に、正式に同盟連合の州になれば発言権もあるし、貿易も関税なしで行える。更に言えば困った時は[本国たち]が助けてくれるのだ。
「ではそれで行こうではないか」
カズの言った作戦は了承、採用されたのだ。
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