27.どう考えても共和国の人型技術は未熟だ-発展途上の兵器に一番必要なのは[情報]-
全48話予定です
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状況は芳しくない。
帝国相手だけでもそれ相応の損害が想定されるというのに、そこに共和国の人型が現れたらどうなるか? おそらくそれは人型単体ではないはずだ。当然ながら機械化部隊か何かの随伴がいて然るべきだろう。その根拠は、と言えば共和国の持っている人型の技術がそこまで高いとは到底思えないからである。
もしも完成度が高い人型が作れているのであれば、とうの昔にどこかの戦地で相まみえているはずだ。だが、共和国はこれまで不気味なほどに沈黙を貫いて来ている。それはアルカテイルというホットスポットで同盟連合と帝国との戦闘が行われていても、いっさい手を出してこなかったのだから。
――どう考えても共和国の人型技術は未熟だ。
この点から考えても、やはり共和国の人型はまだ発展途上なのだと考えるのが妥当だ。そして発展途上の兵器に一番必要なのは[情報]である。
まず一つ目の情報、それは兵器に対する情報である。
例えば銃器であれば命中精度向上の仕組みなどがそれに当たる。銃はただ単に弾を打ち出す筒(銃身)があればいい、という訳ではない。それでは命中精度が著しく下がる。ではどうするか。銃身の内側に溝を掘るのである。この、斜めに刻まれている溝の事をライフリングと呼ぶ。弾頭は銃身内を加速して発射されるのだが、このとき銃身の内側に刻まれている溝に弾頭が食い込み、溝に沿って回転していく。そして、弾を回転させるとコマの原理(ジャイロ効果)によって飛翔中の弾が空中で安定し、命中精度が向上するのである。
この技術があるのとないのとでは、兵器の性能はそれこそ段違いに変わって来る。これが一つ目の[情報]だ。
では別の情報というのは何か。
これは実戦配備されてからの情報になる。つまりは兵器の経験である。
同盟連合は、既にレイドライバーという兵器を実戦配備している。だが、この兵器一つとってみても実戦配備して終わり、という訳ではない。実戦で使用した感想や不満点を洗い出し、改良を加える。それは改修という形で実装されてまた戦場へと送られる。そして戦場というのはどんな状況になるか分からない。常にアスファルトの上で戦闘する訳ではないのだ。
同盟連合は日本奪還作戦時、旧マレーシア奪還作戦時にそれぞれ湿気や砂浜など、今主戦場としている場所とは異なる環境下での動作のデータを収集してきた。それは改修という形でまた実装されるのである。
更に言えば、兵器は常に新しいものが開発、配備されていく。そうすると古い兵器では太刀打ちできなくなる。ではどうするか。最新兵器の一部を[アップグレード]という形で換装していくという作業がある。そうする事で兵器として使える寿命が延びるのである。
これらを踏まえて、共和国の人型というのはあらゆる面で未熟と言えるだろう。実戦経験は一度だけ、しかも直ぐに撤退をしている。そして同盟連合のように[考えるモノ]であるサブプロセッサーは夢のまた夢、そんな兵器だが共和国なりの意図があっての事だろう。
ではこのタイミングで人型を出してくる理由は何処にあるのか。もちろん漁夫の利を得ようと画策してはいるのだろう。だが、いくら共和国とて同盟連合と帝国のレイドライバーに勝てるとは思っていないはずだ。
ならば二番目の、兵器の経験を取ろうとしているのではないか。そう考えると相手が弱った状態のところに出陣、というのは理にかなっている。おそらく戦闘は直ぐには決着しないだろう。そうなればある程度の時間の戦闘になるから最低でもデータ取りは出来る。もしかしたら一部なりを占領出来るかも知れない。
――もしオレが共和国の指揮官ならそう考えるよ。
それ程、兵器に対する[情報]というのは重要なのだ。もしかしたら兵器以上に重要かもしれない。情報、つまりはノウハウがあれば兵器など生産施設があれば作れるのだから。それは逆説もまた然りである。
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