24.旧イエメン?-で、オレはどうしたらいい?-
全48話予定です
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「旧イエメン?」
――確かにここからはそんなに離れてはいないな。直線距離にしても五〇キロあるかないかだろう。まずは海を渡らなければならないが、それを差し引いてもそれこそちょっと離れた隣街に行くようなもんだが。
マタルは素直にそう聞き返した。その反応に、
「そう、旧イエメン。知っての通り、かの地は帝国領でありながら共和国の中の飛び地だ。しかも一時期、同盟連合への加盟を打診していた場所でもある。帝国も今は自治を認めて半ば放置していたんだが、帝国はこの地に本格的に軍を置こう、そんな話が出ているようでね」
主任はそんな話をし始めた。
共和国だって情報ルートというものが無い訳ではない。それにこの辺りの土地は共和国の領地が隣接している、言ってみれば共和国にしてみれば[本国]であり[本土]なのだ。そんな土地の傍で他国が何かやらかそうとすれば、必然、それは情報となって降りてくる。
そしてその情報の中に、
「どうやらその話と前後して同盟連合がかの地を狙っている、そんな話が出ているんだよ」
――同盟連合が? 確かにエルミダスからも近いから手中に収めたいというのは分かるが、旧イエメンと言えば。
それはマタルの口を借りなくとも分かる。現在はほぼ独立自治政府が敷かれているような土地柄である。そこに帝国が軍を、というのはまず分かる。いくら内情がどうであれ、帝国領であるのは間違いないのだから。そこに同盟連合が乗り出してくる、というのも理解はできる。しかし、共和国はその一件に何がしたいのか。
そんな顔をしていたのか、それとも話の流れでそう持っていくつもりだったのか、
「どうもその地に帝国は人型を持ってくるという話らしい。同盟連合も攻めるとなれば当然、それに見合った兵装をしてくるだろうと予想される。そこで、だよ」
主任が言うには、二国間のその争いに[茶々]を入れようというのだ。あらかじめ[本国]に自前の研究成果である共和国産のレイドライバーを持ち込んでおいて、戦闘が始まってしばらく様子を見る。そして互いに消耗したところで越境、出陣という訳だ。
「そうすれば双方が弱った状態で戦える。もちろん両方の敵を撃退できれば一番いいのだろうが、それはまだ無理な話だ。そこで、より実践的なデータを取ろう、と」
――確かに、双方が戦って弱体化したあとであれば瞬殺はされずに済むだろう。そこでデータ取りをってのも分かる。これは、何としても情報を流さないと。
「じゃあ、オレたちも現地入り?」
少しカマをかけてみる。
「いや、研究チームはお留守番かな。だが、少数の人員は随伴しないといけない。何と言っても[自立]出来ている訳じゃあないからな。なので何人かは越境組について行く事になる」
主任はどこか嬉しそうだ。まぁ、彼の立場からすれば、ようやく本格運用に向けての試金石が敷けるのだ、それはさぞかし嬉しいだろう。マタルはそんな彼の言葉の抑揚を聞き逃さなかった。
「じゃあ、単品で行くのか?」
と尋ねてみる。それには、
「いや、万に一つでも敵を撃退できた場合に備えて[捨て兵]を連れて行くつもりのようだ。機械化部隊も一緒にな」
――機械化部隊も一緒、つまりは一部でも占領できれば御の字、という訳か。テータ取りも出来て占領の可能性も含む、それなら失う機体に見合うだけの価値にはなりそうだ。たとえ上手くいかなくても[捨て兵]なら痛くもない、か。
「で、オレはどうしたらいい?」
マタルは主任にそう尋ねた。
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