21.[アップデート]という作業である-従来のアップデートは廃止される運びとなった-
全48話予定です
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それからの準備は大した遅滞もなくスムーズに行われた。
何といっても初の[無人機戦闘集団]での戦闘である。更に言えばゼロフォーが支配下に置く二個のサブプロセッサーは、戦闘は未経験である。
そこで威力を発揮するのが[アップデート]という作業である。これにより、実際に戦闘経験がなくとも疑似戦闘経験を獲得できる。準備している間に二個のサブプロセッサーには模擬戦闘を何度となくさせた。その効果は直ぐに現れていた。[アップデート]をして直ぐの戦闘もすんなりとこなしたのだから。その戦績はもちろんバーチャル空間とはいえ、主だった面々と遜色ないレベルに達していたのだから。
この[アップデート]は既存の問題を解決した状態で行われている。
どういう事か。
確かに[アップデート]、つまり戦闘データの蓄積を参照すれば経験の共有が出来る。もちろんそれを狙って行っているのだが、いかんせんそれは自分が経験した事ではない。それに脳にだって容量に限界がある。
そこでカズは今の[アップデート]を生体コンピューター側に移植できないか、と考えていたのである。
外部メモリー化して、その時必要なデータをバンクから取り出して自分のものにする、これが一番いいやり方であろうとカズは予想していた。
だが現実は直ぐにそうはならなかった。
現在の生体コンピューターにはそこまでの記憶容量がないのだ。脳の方が記憶容量があるというのは少し意外であるが、現実としてそれが事実なのだ。もちろん、生体コンピューターのメモリー増設の指示は出していた。だが、このまま[アップデート]を繰り返せば、いずれはサブプロセッサーの記憶野にも手を入れないといけない、少し前までの現実はそんなところまでひっ迫していたのだ。
記憶野に手を入れる、つまりは記憶の消去である。
もちろんそれをしない方法が一番なのは分かっている、し、記憶を消去したら人格が保てるかが問題である。ゼロフォーが一切合切を失った[事故]はあくまで偶発的なものであるし、立ち直ったのは、彼女が人一倍頭のいい、無感情な存在であったが故であるともいえる。
だが、現実問題として記憶野に手を入れるという可能性もあるし、その可能性は過去の段階では高い、と言わざるを得なかった。
そこでカズは外部メモリーの増強を考えた。それを政府上層部と相談したのだ。
初めは、現在入手が可能なメモリーと言われてパっと思いついたのが、全世界的に出回っているメモリーチップだった。このチップは小型の割には容量が四十テラバイトくらいあるものも出回っている。もちろんそれを使うという手もあるのだが、他にもっと大容量のものがあれば一番いい。
カズたちの研究では二ペタバイトくらいの容量が欲しい、そんな結論が出ていた。それを上層部に話すと、
[メモリーチップではないが、同盟連合が開発しているユニット型の記憶媒体がある。流石にメモリーチップほど小さくはないが、それなりの容量を確保できる。コネクター形状も独自規格を採用しているので、汎用性からは外れるが]
と言われたのだ。カズはそれでいい、いやそれがいいと考えていた。何故ならその方が機密保持と言う観点からも良いはずである。
どのくらいの容量があるのか、というカズの問いに、
[一つあたり一ペタバイトの容量がある]
というのだ。カズは早速、そのメモリーの手配を願い出た。そしてそれは順次搭載されていく形になった。初めはゼロゼロを改装し、次に研究所近くにいる三八FIを、といった具合に順次改装と、滞っていた[アップデート]を行って現在に至るのである。
そして、この形式の[アップデート]はサブプロセッサーたちの苦痛軽減にも大きく寄与した。
戦闘経験などのデータは記憶として外部メモリーに保存し、必要時にはサブプロセッサーが生体コンピューターを通じてバンクを参照、そのデータを読み出しして使う。その作業は、文章で書けば数行かかるが、実際にかかる時間は一瞬である。
そんな一瞬で、新人がベテランの戦闘経験を得とく出来るのだ。そして脳に直接書き込むという従来のアップデートは廃止される運びとなったのだ。
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