18.なるほどな、第三陣か-可能性として考えられるのが-
全48話予定です
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――さてと、ここらで上の人にちょっと相談してみようか。
相談事。それは第三陣の予想について、である。
カズは研究所の所長室から専用の回線で米州の相手に繋ぐ。このラインというのは軍、政府それぞれの上層部の代表が二十四時間、少なくともどんな時間帯でも同盟連合の意思決定が出来るだけの人物たちがそこにはいるのである。
だから、
「あぁ、きみか。どうしたね」
と直ぐに向こう側の声がする。
「折り入って相談、というか所見が聞きたく思いまして」
と言って、先ほどの話を切り出す。
「なるほどな、第三陣か。確かに、こちらでもその情報は追っている。そして共和国の動静もな」
――忘れてたよ、共和国がいたな。[モグラ]から連絡はないが、上手くやっているのか。
素直にそれも話すと、
「確かに共和国は沈黙を守っている。だが、先日の襲撃にもあったように、まったく手を休めているという訳ではなさそうだ。こちらでも現地の動静は探っているが、目立った動きは無いのが現況だ。差し当たって共和国は除外してもいいのではないかな。それより本題の第三陣だが」
軍部が掴んでいる第三陣。これはどうもエルミダスに近い場所のようだ、という話らしい。
「近い、というのは具体的には?」
当然そう返すが、
「まだ不確定なのだが、可能性として考えられるのが」
旧イエメンだ。
この地はしばらくの内戦が続いたあと、一旦は落ち着きを見せた。しかしながら貧困、格差が著しくある為、常に政権が入れ替わっていたという過去を持つ。いっとき同盟連合への加盟を打診していた時期もあったが、現在は帝国領になっている。それでも民主化の流れはくすぶっており、統治しているはずの帝国は事実上、この地の自治を任せたままになっている。しかし軍隊は解体していったと聞く。そんなちょっと変わった土地である。
しかし、この地は海を隔てているとはいえ、アルカテイルから直線距離で二百キロととても近くに存在する。
「確かに、ここに敵が現れたらちょっと厄介ですね」
それは研究所の傍にレイドライバーが出現するのと同義だからだ。もちろんレイドライバーは海を泳げない。しかし、先の日本戦ではないが、レイドライバーという兵器がそこに存在しているだけで脅威になりうるのだ。それに航空機で二百キロというのは文字通りひとっ飛びである。そんな場所に敵が現れたらどうなるか。
「そちらの見立てではどうなんですか?」
当然疑問に思うだろう。その疑問に、
「我々の見立てではおそらく、かの地に帝国が軍を派兵するであろうと踏んでいる。もちろんレイドライバーもな。もし仮にそうなるとしたら先が読みづらいが、一か月かそこらだろうと予想している」
――一か月か、それはまた急だな。でもそのくらいのペースでないと揺さぶりにはなりにくい、か。
「そこで、だ。我々から出向いていくというのはどうかね」
と逆に相談されたのだ。
「それは侵攻、という意味で?」
「そう、侵攻だ。聞けば旧イエメンは同盟連合への併合を望んでいた時期があった。実はそれは今でもくすぶっているそうなのだよ。半島の中で飛び地と言えるかの地を同盟連合が手に入れればどうなるか」
――それは帝国にしても痛手、更に言えば共和国にしても脅威足りえる、か。それにエルミダスという土地の背後を守るという意味でも強固なものに出来る、と。
「そうですね、そのお話、ちょっと乗っかってみましょうか」
カズは確かにそう言ったのだ。
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