17.ここのクルーはよく働いてくれている-ここには現在、使えない人間はいないのだ-
全48話予定です
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早速、ゼロフォーは整備ドックに連れて来られた。予備機はいつでも出せるように組みあがっている。
「子宮が出来次第搭載になるが、その前に組めるところまで組んでおこう」
クルーたちがテキパキとこなしていく。マリアーナとの[子供]の部品にはある程度ストックがある。使ってしまった[子供]の補充の組織培養はあとでもいいのだ。なので、ストックがある部品からそれぞれ機体に組み込んでいく。
「接続テストを」
ある程度組みあがったところで、テストを行っていく。
元々、子宮がなくとも直接の操縦は問題ないのだ。ただ、直感的なものが働かなくなる、というか効かなくなるのだ。人はそれを第六感などと呼ぶかも知れない。言葉よりも感覚に近いのかも知れない。そういった情報が得られなくなるのである。その結果[独特の間]が出来上がる。それは一瞬の隙が左右する戦場ではあまり良いものではない。その為の研究でもあったのだ。
カズたちの研究のなかに、リンクさせたい二体の遺伝情報を使用して、いわば[子供]を作って目的の器官になるまで[育て]て、その[子供]を使いパイロットとサブプロセッサーとリンクするというものがある。
現在の第二世代の基礎になっているものだ。
子宮でリンクする関係上、本来であればサブプロセッサーの子宮だって必要なはずだ。だがそれはパイロットの子宮にアクセスして使う、つまりは器官を共有するという事でクリアされてきた。
そして今回、その部品である子宮をより完全な形で再現し、ユニット化して取り付けようというのだ。これはパイロットの子宮の代わり、と言った方がいいのかも知れない。
パイロットがいない今回のケースの場合、パイロットであるサブプロセッサーの子宮が、完全なものが必要なのだ。そしてサブプロセッサー本体がレイドライバー各所に配置された[子供]から情報を得る。それと同時に子宮を通じてそれらの情報を得る。そこで生まれた情報の差異が[独特の間]なのだ。
一見すると一つ器官を介している分だけ情報が変化しそうなものなのだが、これも研究結果の賜物と呼んでもいいかも知れない。その差異が重要なのである。
「では一週間もすればモノになりそうですね」
作業を片隅で見ていたカズとアイザックがそんな話をする。
「ええ、ですが何しろ初めての試みですから、本来であればもう少し時間が必要なのですが、使用しているのは既存の技術ですから特に問題は出ないと思いますよ」
それはそうだ、子宮の部品というのはこれまでも作っているし実際に使用しているが、完全な子宮を作るのはこれが初めてである。
――実際、ここのクルーはよく働いてくれている。ふとした思い付きが技術として一般化するんだ、これは凄い事だよ。
カズは改めてそう思う。もちろんその裏ではカズが行ってきた[人員整理]が関与しているのは間違いない。
ここには現在、使えない人間は既にいないのだ。
「そうだ、三五FDIの件ですが、向こうから何か言ってきていますか?」
カズが尋ねると、
「差し当たって二機、こちらに輸送予定となっていますね。例の三体と同時に近々来るそうです」
とアイザックが答える。なので、
「今回、一機消失、一機大破という結果を招きました。補充が来たら直ぐ手配を。それ用のサブプロセッサーはありますよね?」
その答えは[もちろんですとも]であった。
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