11.トリシャは、ゼロツーと一緒かな?-さて、と。問題はトリシャだな-
全48話予定です
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予定通りの時間にエルミダス基地に艦隊が入港してきた。その姿はボロボロとまでは言わないものの、あちこちに被弾のあとが見られる。早速、被弾した艦艇は修理用のドックに入れられる。
ここエルミダス基地は同盟連合が元々支配していたのを、三国体制になる際に帝国が奪ってのだ。そしてしばらく帝国領として過ごしたあと同盟連合が再奪還した。その奪還時にレイドライバーという兵器が初めて使用されたのはもう数年前になる。そして奪還した際に拠点となりうるように、と港湾機能が強化された。整備ドックが設けられたのだ。なので艦隊の修理などもここで行えるようになっている。
カズはあらかじめ呼んでおいた研究所の看護師と共にまず着岸した空母へと向かう。その医務室にはレベッカがいた。
「マ、マスター」
起き上がろうとするのを手で制止する。
「よく頑張ったな。恨んでくれていいよ、今回の作戦立案したのはオレだから」
――オレがきみの立場なら[一発殴らせろ]くらいは言ってるよ。
そう思ったのだが、
「いえ、トリシャさんと一緒に組ませて頂いて感謝しています。もしよければまたご一緒させて頂いてもいいですか?」
そう言いながら頬を赤らめる。
「あぁ、なるほど、彼女に惚れたんだね。ダメって言ったらきみの心が折れそうだ。いいよ、好きになっても。ただし」
「マスターのご命令には背きませんから」
こちらが言いたい事を先に言ってくる。
「うん、それくらいはしないと、ね。今回はよくやってくれた、感謝する」
そう言ってハグをする。
――自分で仕組んでおいて今更だけど、すごいよね[調律]の効果は。
普通の関係性であれば[ふざけないで!]の一言があって然るべきなのだが、そこはあの孤児院の出身、それも二期生だ。その躰には、心には[調律]がしっかり効いている。たとえ自分がどんな不利な作戦に投入されようとも文句ひとつ言わずに従う、それが彼女たちなのである。そしてマスターであるカズのハグによってそれは更に深いものになるのだ。
「トリシャは、ゼロツーと一緒かな?」
カズが尋ねると、
「ええ、離船準備がありますから」
と答えが返って来る。
「とりあえず、きみの失った両足は何とかするから心配しないで。義肢の技術は今までとは比べ物にならないくらい良くなっているんだ。これからきみはその処置をする為にある場所に連れて行かれる。詳しくは彼女から聞くといい」
カズはそう言うと、付き添っていた看護師に[あとの処置は任せたから、終わったら連絡をくれる?]と事置きして、
「しばらくは安静にしていてね」
とレベッカのいる医務室から出る。
――さて、と。問題はトリシャだな。
カズの中でずっとトリシャの状態についての考察が回っていた。自尊心とプライド、そして被虐性。このワードがカズという人間を巻き込んでぐるぐると回っている。
カズはトリシャのご主人様になった。基本、彼女はカズに対して嘘は言わない筈である。だが、それは絶対なのか? と問われれば[調律]を受けていないトリシャについては分からないとしか言えない。つまりは一般人同士なのだから。確かに主従関係があるにせよ、それはもしかしたら[ごっこ]なのかも知れない。
そんな、いろいろな可能性について頭を巡らせているのである。が、
――ま、直接話してみないと分からないけどね。
カズにはこの状況を打開出来るであろうという確信があったのだ。
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