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35 決戦の前夜

俺は立ち止まり、周囲を見回した。

広がる大地の向こうに、いびつな山々の影が霞むように見える。

薄曇りの空からは冷たい風が吹き抜け、その風は砂塵と共に血臭の残滓を運び、どこか胸を刺すようだった。


「今日は、あまり急がなくてもいいかもしれんな。」

俺は呟き、背負っている霊刃を軽く手に取った。

刃を握る手には戦いの痕跡が染み付き、乾いた血のざらつきが指先に残っている。

疲労がじわじわと身体に染み込む中で、次の血戦に備えるには少しでも傷を癒す必要があると感じた。


「少し休んでから戦いに臨む。体力を回復する時間が必要だ。」

回復刀を使えば体力は減らないで討伐を続けられるが、それでは神威のサポートが無くなる。


少し先に、小さな村の影が見えた。

煙が立ち昇り、生活の気配が漂っているが、その空気には血の粘ついた重みが混じっていた。

俺はその村へ足を向けることにした。


村に入ると、広場に数軒の店が並び、村人たちが忙しそうに行き交っている。

しかしその顔には、恐怖と疲弊が深く刻まれていた。

俺は無言で道具屋に向かった。


「いらっしゃい。」

店主が無理に笑顔を作りながら迎え入れる。

その目の奥には、死に怯える者特有の陰りが見え隠れしていた。


「珍しいお客さんだね。魔物を討伐してきたのか?」


「ああ。」

俺は簡潔に答える。「少し整えたい。」


店内を見渡しながら必要なアイテムを探す。

壁には何かの血痕がこびり付き、乾いたままこすり落とされていない。

次の戦いに備えるには、どんな小さな準備も怠るわけにはいかない。


焦げた肉片を纏い、血を滴らせながら襲いかかる魔物の幻影が脳裏に焼き付く。


必要なアイテムを購入して店を出た。

広場に立ち止まり、空を見上げる。

曇天は、血と炎に焼け爛れた戦場の予兆のようだった。


「休息を取ったら、また戦いだ。」

心の中でそう呟くと、神威が冷たく語りかけてきた。


「お主が疲れを感じることもあるんだな。だが、その分だけ次の戦いで全力を尽くせるだろう。」


その言葉を受け入れ、俺は村の様子を見渡した。

周囲の村人たちがちらりと視線を向けてくるが、その目には恐怖が滲んでいる。

俺はそれを気にすることなく心を整えていく。


夜が更けると、村外れの小屋で休むことにした。

小屋の中にはかすかに獣の血の匂いが染み付き、かつてここで争いがあったことを示していた。

身の回りの道具を整え、霊刃を手入れする。

刃を磨くたびに、血と脂が鈍い光を放ち、刃が飲み込んだ命の記憶が甦るようだった。


どれほどの血が流れようと、次の狩猟場で何が待っていようと、全力で挑む準備はできていた。

小屋の外では、風が怨嗟の声のように唸り、俺の次なる戦いの到来を告げていた。



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