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呪われし勇者の伝説シリーズ/ガーランドのモンスター図鑑「女王蟻」~勇者の見る夢2・闇の王より~ 作者:田中円
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第三章 皇帝の退屈ばらし

革のマントを翻して、風の無い一本道を、アースは行く。肩にクラウンを乗せて、月を背に。
遠くから聞こえてくるのは、微かな暴走族のクラクションの音。町を徘徊しているのだ。
ルイス・チャップマンのレポートによれば蟻の一味のリーダーの一人で、女子高生コンクリート詰め殺人事件の副主犯格の男が、暴走族を率いて改造バイクに乗り、町の中央を走る高速道を徘徊しているとのことだった。
勇者はクラウンの持っている袋から、黄と黒の縞の工事用ロープを取り出し、道の端から、道路をまたぐように、腰ぐらいの高さでそれを張って行く。

「ゴキブリホイホイならぬ、アリホイホイだ~。」

と、訳のわからぬテンションでロープを張り終えると、勇者はそのピンと張ったロープの上に、拳法の達人張りに爪先を立てて乗り、腕を組む。クラウンが肩でそれを真似している。道路の先を見つめる勇者。

蟻の暴走族がやってくる。といってもまだ変身しているのは半分程で、リーダー格の男はしんがりを務めている。様々な色のライトでデコレーションされ、カラースプレーで女性アイドル歌手・小泉今日子の描かれた黒のバイクに、天上天下唯我独尊と刺繍のされた特攻服を着て、木刀を携えている。

勇者はおもむろに、近くで盗んだバイクで走り出し、音と光のイルミネーションの彼らの間を、縫うように走り挑発する。騒然とする暴走族。リーダーの所まで行きファイルを取り出して、顔を確認すると、頷いて列の先頭へ走り出し、バイクの上へ曲芸の様に立ち上がり、ズボンとパンツを下ろし、生尻でお尻ペンペンをする。
激昂する暴走族達。彼らはみんな軍隊蟻に変身し、恐ろしいスピードで勇者のバイクを追いかけてくる。もうすぐロープを張ったポイントだ。勇者はバイクからジャンプして飛び上がると、空中を飛ぶクラウンの足を取り、パタパタと遠ざかる。

「お、重い・・・。」

クラウンが主張しつつ、道路の端へ勇者を降ろす。勇者はガードレールの上に、また拳法家の様に立ち、暴走族集団を見守る。

”ズガーン!”

ロープに。凄い速度で突っ込んで行く暴走アリ達。彼らの三つの胴体が千切れ赤と透明の体液の混じった血がシャワーの様に道路に散乱する。そこへ次々と突っ込んで行く暴走族アリ達。

「あーっはっはっはっ!」

腹を抱えて笑い転げるアースとクラウン。アースは剣を抜くと、腰に下げたウォッカの酒瓶を飲み、うおーっと愉しげな雄叫びをあげて、彼らへと向かっていく。

アースは踊るように、歌うように、蟻を殺していく。事故で倒れているアリのヘルメットを左手で持ち上げ首を落とし、左から襲ってくるアリをバイクのはずれたバックミラーで殴り殺し、右のアリの胴を切りつける。
幸い事故に巻き込まれずに済んだアリ達が尾を高く持ち上げてアースへと迫ってくる。

レポートによれば、彼ら暴走族のアリ達は、アリの集団において戦う役目を持ち、尾には毒針があり、それは人の遺伝子を変えアリにしてしまう蟻酸という毒を含んでいるのだという。

「キシャーッ!」

彼らが尾から黄色の分泌液を、交尾を焦らされた犬のペニスから出る、先走り汁のように垂らしながら襲い掛かってくる。右と左から。勇者は、閃いた!とばかりに、グーにした右手とパーの左手を叩き合わせ、彼らの頭を掴み頭突きさせ、尾を両手で掴む。そして、互いの彼らのアゴの中へそれを差し込み、二人の下腹に蹴りを入れる!発射される精液ならぬ蟻酸。彼らの顔はもろくも蟻の酸によって溶けていく。

「暴力はしないさせない許さな~い。」

クラウンが宙に浮かびお尻を振りながら勝手な節をつけて歌っている。彼らはこの毒液で毎夜住民達を襲い、この町全体を蟻の巣へと変えていった。
言わば蟻の軍隊における侵略部隊。彼らだけが酸を使う能力を持っている。

パイプで襲い掛かってくる彼らのリーダー格の男。勇者は腹に蹴りを入れると、それを奪い、ぼこぼこにし、目のついた触角をもぎとり、胴の中央にその鉄パイプを恐ろしい力で突き立て、コンクリートまで貫く。

「げぼぅ!」

蟻が昆虫と人間の色の混じった薄赤い血を吐くと、クラウン。

「今回は、強いねぇ・・・。いつもやられたい放題なのに。」

勇者は血に塗れた顔で高笑いすると、そのリーダー格の男のバイクのガソリンのふたを開け、それをバイクごと持ち上げて、彼にかける。そして、蜘蛛の絵の描かれた愛用のジッポーを取り出し、セブンスターの煙草に火をつけると一服して、彼の頭を固いブーツの靴で踏みつけて、言う。

「素直に話せば許してやる。何で、あの子を殺した。」

もう力を失い、人間の姿へと戻った暴走アリのリーダーの男が、勇者を怯えた目で見て言う。

「つまらなかった。毎日がとてもつまらなかったから、あいつをいじめていると、えらくなれた気がした。」

朦朧とした意識の中で、勇者はモンスターの魂へとつながる。死を懸けた戦いはいつもそうだ。モンスターの痛みを、俺は全部背負う。それが、俺の、仕事。
女子高生コンクリート事件の副主犯格であり、主犯格の次に暴行を主導した彼は幼い頃から何でも暴力で解決する癖があった。彼の両親は、仲が悪く、彼は愛されて育たず、頭も悪く、中学の時のスキーでの事故でスポーツも出来ずに、非行へと走っていった。
だが、親に愛されず、何の能力も持たない人間が、必ず非行に走るわけではない。人による。彼の魂は言う。

「何の夢も無くて、生活に目的が無くて、学校を辞めるとね、することもなくなって・・・。誰かに誉められたい、目立ちたい、見せ付けたい。そうだ喧嘩だ。痛みだ、苦痛だ。その中でなら、つながっていられる。なんとなくみんなでつるんで、いじめれば、いばれる。何も考えたくない・・・死ねぼけがぁ、怖い、怖いよ・・・どうしてあんなことしたんだろう。一人だ。寂しい・・・誰もいない・・・この世は虚ろ・・・無。・・・無!」

最後の力を振り絞って、その副主犯格だった男は、勇者に、尾の毒針を突き立てようとし、大あごを大きく開いて、咬み付こうとする。だが、全く、効かない。

「カスが。うぜーんだよ。」

勇者は副主犯格の男の頭を林檎のように踏み付け砕き、煙草をもう一息吸うとそれを地面に落として、彼に火をつけた。

「ガキは家でオナニーでもしてろ。人に迷惑をかけんな、ほんと。くそガキ共め。」
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