空の旅、風の島
美咲は青い海に目を奪われていた。飛行機の窓から外を見ると、空の中央には太陽が輝き、その光が海面に反射してキラキラと輝いていた。海面には白い波が揺れていて、時々小さな船が見えた。美咲はその景色に見とれて、しばらく目を離せなかった。
「このあたりなんだよ」と、悠斗は飛行機を操縦しながら美咲に言った。彼は、雑誌で見た島を、指さした。「ほら、あれが、風の島なんだ」
美咲は、窓から風の島を見た。島は、風に揺れる草原と岩場が見えた。
「えっ、こんな小さな島なの」
美咲は、驚いて目を見開いた。彼女は、想像していた島は、もっと、広く、広大で、木が青々と茂り、豊かな森を想像していた。だが、美咲の目に映るのは、小さく、やっと、海面に姿を現しているような島だった。
悠斗は、美咲の少し、がっかりしたような表情をみて、「空飛ぶ魚は、島の大きさとは関係ないんだよ。魚は、泳ぐものだし、空を、飛んでるんだから」と言った。彼は、優しく微笑んで、彼女を慰めた。
「それは、分かっている、けど、なんか、もっと、いかにも、おとぎ話とか、そういうのに出てくる島を想像してたから」
美咲は、少し、機嫌悪そうに、唇を尖らせて、窓の外を見た。
悠斗は笑い、「まあ、そうだね。」と美咲を見て言った。彼は、彼女の手を握って、優しく揺らした。
「虹が出てたって言うじゃあない、きっと空飛ぶ魚は虹が出たときに見えるのよ。虹が出ないかな」と美咲は、島を見て言った。彼女は、悠斗の目を見て、期待と不安が入り混じった表情をした。
「まあ、虹なんてそんなに簡単に見られるものじゃあないしね、とりあえず、この島を見られただけでも、空飛ぶ魚に一歩近づいたんじゃあないかな」と悠斗は、美咲に言った。彼は、美咲の顔を見た。彼女は、寂しそうに窓を見ていた。悠斗は、彼女の肩に手を置いて、励ました。彼は、彼女の髪をなでて、やさしく囁いた。
「大丈夫だよ。きっと見られるよ。」
美咲は、悠斗の優しい声に感謝した。彼女は、頷いて、返事した。
「ありがとう。虹出ないかな」
二人は、しばらく無言で、空と海を見つめ続けていた。
二人が乗る飛行機は、風の島の上空を旋回していた。
「風がでてきたね」と悠斗は、操縦席で言った。
飛行機は、風に煽られて、揺れていた。 「大丈夫?」と美咲は心配そうに尋ねた。彼女の声は、少し震えていた。 「これくらいは、大丈夫だけど、やっぱり、風の島っていうぐらいあるからね、もう少し風が強くなると、やばいかもしれないから、いったん、着陸して、虹が出そうなときに、また来ようよ」と彼は、美咲に提案した。彼の顔は、平静を装っていたが、目には不安が隠せなかった。 「うん、そうだね」と美咲は、残念そうに言った。彼女は、唇を噛んで、不安そうに悠斗を見た。彼女の手は、ぎゅっと握りしめていた。
「あれ、操縦が効かない、どうしよう、」
悠斗は、思わず声に出し、しばらくして、美咲を見た。
彼女は悠斗を見て、微笑んでいた。
飛行機は急速に高度を落としていった。