夢の魚好きと飛行機好き
翌日、美咲と悠斗は、放課後、図書室で、空飛ぶ魚に関連する本を探していた。
「ねえ、悠斗君、鹿児島に関する本を見た方がいいと思わない?それとも、虹とか、昔話とか」と美咲は、無数にある本を見渡しながら言った。
「うーん、もしかしたら、飛行機に関係する本の方がいいんじゃないかな」と悠斗は、飛行機の歴史や科学、最新の技術などを紹介する本を手に持ちながら言った。
「ねえ、それって、飛行機の本ばっかりじゃない?空飛ぶ魚の本を探した方がいいと思うんだけど」と美咲は、呆れたように言った。
「いや、この本には、空飛ぶ魚の話も書いてあるかもよ」と悠斗は、真剣な顔で言った。
「そうなのかもしれないけど、伝説とか、昔話とか、魚の本とか、そういうのの方がいいんじゃないの。悠斗君は、飛行機のことは、よく知ってるんだし、違う角度から見てみたら」と美咲は言った。
美咲と悠斗は、図書室で、空飛ぶ魚に関する本を探していたが、なかなか見つからなかった。美咲は、悠斗の飛行機に対する偏見にイライラしていた。悠斗は、美咲の図書室に対する執着に呆れていた。二人は、言い合いになりそうだった。
「もう、いいわよ。私は、自分で調べるから。悠斗君は、好きにすればいいわ。」美咲は、本を片付けて、立ち上がった。
「え、どこに行くの?」悠斗は、驚いて尋ねた。
「鹿児島に行くわよ。空飛ぶ魚を見に。」美咲は、決然と言った。
「は?鹿児島?どうやって行くの?飛行機で?」悠斗は、呆然と言った。
「そうよ。飛行機で。悠斗君は、飛行機が好きでしょ。私は、空飛ぶ魚が好きなの。だから、私は、自分の好きなものを見に行くの。」美咲は、言い放って、図書室を出て行った。
悠斗は、美咲の後を追おうとしたが、すでに遅かった。美咲は、校門を出て、タクシーに乗ってしまった。悠斗は、慌てて、自分の自転車に飛び乗った。美咲のタクシーを追いかけた。悠斗は、美咲が本気で鹿児島に行こうとしているとは思わなかったが、一応、確かめたかった。
空港に付くと、美咲は、あたりを見回し、立ちつくしていた。
美咲は、飛行機に乗ったことがない、空港も初めてだった。「お爺ちゃん。」美咲は呟いた。
悠斗は自転車を漕ぎ、猛然と空港に向かっていた。
悠斗は空港にようやくの思いでたどり着いた。
空港は、広い、美咲をどうやって探そうかと思った。しかし、彼の思いとは裏腹に、美咲を呆気なく見つけられた。
彼女は、人々が行きかう中、立ち尽くしていたのだから、目立っていたのだ、一目で分った。悠斗は、美咲を見つけた。そこにいる、大勢の中から。
悠斗は、人々は、白黒に見え、美咲だけがカラーに見えた。色とりどりの、色彩を放っているように見えた。
「美咲」悠斗は、声を張り上げた。
美咲は、悠斗の声に振り向いた。彼女の顔には、驚きと怒りと悲しみが混じっていた。
「悠斗君、どうしてここにいるの?私を追ってきたの?」
「美咲、本当に鹿児島に行くつもりなの?空飛ぶ魚を見に行くなんて、冗談でしょ?」
「冗談じゃないわ。私は、空飛ぶ魚が見たいの。お爺ちゃんが、鹿児島には空飛ぶ魚がいるって言ってたの。お爺ちゃんは、空飛ぶ魚を見たことがあるって言ってたの、知ってるでしょ。」
「空飛ぶ魚は、居るかもしれないよ。でも、いくらなんでも、鹿児島に行くのって、突然過ぎない。だって、お金あるの。鹿児島に行くのだって、お金がかかるんだ。それに、色々と手続きが必要なんだ。」悠斗は美咲を慰めるように言った。
「だって、空飛ぶ魚を今すぐにでも見たいの、悠斗君は、飛行機ばかりだし、私は、私は、」美咲は今すぐにでも泣き出しそうだった。
「わかったよ。美咲ちゃん、僕が、連れてってあげるよ。僕には、飛行機仲間が居るからさ、こんな所で、鹿児島に行ったって、目的地にたどり着けるか、どうか分からないだろ、お爺さんだって心配するはずだよ。」
悠斗が慰めるように言うと、美咲は、自分の浅はかさに今にも泣きだしそうだったが、我慢をした。
「悠斗君、今すぐにでも空飛ぶ魚の島に行きたいの。分かって」
「ああ、分かっているよ、じゃあ、今すぐ、仲間の所に電話してみよう。
今回は、冒険に出かけたかったのですが、美咲と悠斗がどうしても、このエピソードを書いてと言っているような気がしたので、冒険に出発するエピソードになりました。