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伝説の虹の中の空飛ぶ魚へ、夢をのせて  作者: 藍春希
1章 見上げた空からの始まり
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虹の谷冒険。空飛ぶ魚への憧れが紡ぐ少女と少年の物語

虹の谷と呼ばれる神秘的な場所に住む空飛ぶ魚。その存在に魅了された美咲は、家族や友達の理解を得られない中、夢を追い続ける高校生。彼女が巡り会ったのは、空に興味津々な悠斗。二人は共通の夢を見つけ、虹を探し、空飛ぶ魚を求めての冒険に出発する。

美咲は青い空を見上げた。空に浮かぶ白い雲と、その中を舞う魚のような飛行機に思いを馳せた。彼女は空飛ぶ魚が持つ自由と楽しさに憧れを抱いていた。だが、美咲の心には夢を叶えるための壁が立ちはだかっていた。


「美咲、授業中に夢見てるの?」


隣の席の女子が小声でからかった。美咲は無言で視線をそらした。彼女は学校で友達がいなかった。美咲は長い黒髪に色白の肌、大きな瞳と端正な顔立ちを持っていた。その美しさが逆に周りとの溝を深めていた。クラスメートたちは嫉妬や嫌悪の目で見つめ、先生たちは彼女を優等生として見ていたが、内面の葛藤や孤独さに気付いていなかった。


美咲は学校を嫌いになり、窓の外の青い空を見つめていた。そこには彼女の唯一の希望である空飛ぶ魚が見当たらないか探していた。


美咲にとって、空飛ぶ魚とは祖父の話に出てくる不思議な生き物だった。祖父は元パイロットで、美咲に空飛ぶ魚の素敵な話をよくしてくれた。彼の話は美咲の心を豊かにし、夢を抱かせてくれた。


祖父との二人暮らしは、美咲にとって特別なものだった。離婚し海外へ行った母親、仕事で忙しい父親。祖父はそんな家族の中で美咲にとっての支えであり、話し相手であり、そして夢のかけ橋だった。だが、美咲は祖父に対して、家族や友達、そして恋人としての側面も抱えていた。


美咲は高校二年生になっても、空飛ぶ魚の夢を捨てられなかった。彼女はパイロットになるために、勉強や部活に励んでいた。だが、周りの人たちは彼女の夢を理解してくれなかった。先生は彼女にもっと現実的な進路を考えるように言い、クラスメートは彼女の夢を馬鹿にした。美咲は誰にも心を開けず、孤独を感じていた。


ある日の放課後、美咲は教室の窓から、空を見上げていた。


「空飛ぶ魚は、私が若いころに見たんだ。パイロットとして飛行機に乗っていたときだ。空の上には、鮮やかな虹がかかっていた。その虹の中に、空飛ぶ魚がいたんだ。羽と尾が光っていて、まるで宝石のようだった。空飛ぶ魚は私に気づいて、私の飛行機に近づいてきた。私は空飛ぶ魚の目を見た。その目は、深い青色で、まるで海のようだった。空飛ぶ魚は私に何かを伝えようとしているようだった。でも、私にはわからなかった。空飛ぶ魚は、しばらく私の飛行機と一緒に飛んでいたが、やがて虹の中に消えていった。それが、私が空飛ぶ魚を見た唯一のときだった。」

美咲は祖父がよく話してくれた、その言葉を思い出していた。


すると、空には魚のような飛行機が一機、飛んでいた。美咲は驚いて目を見張った。それは祖父の話に出てくる空飛ぶ魚そのものだった。美咲は思わず声をあげた。


「空飛ぶ魚!」                            


その声に、近くにいた男子が振り向いた。

彼は茶色い髪に、黒い瞳の細身の少年だった。美咲は彼とはあまり話したことがなかったが、彼が空に関することに興味を持っているという噂を聞いたことがあった。彼は美咲に笑顔で話しかけてきた。


「あれは、空飛ぶ魚という名前の新型飛行機だよ。すごく綺麗だね。」


美咲は彼の言葉に驚いた。彼は空飛ぶ魚について知っているのだろうか。それとも、ただの冗談なのだろうか。彼は本当に空飛ぶ魚が好きなのだろうか。


「僕は悠斗。空飛ぶ魚が大好きで、いつか乗ってみたいと思ってるんだ。君もそうなんだね。一緒に空飛ぶ魚について話そうよ。」


悠斗は明るくて親しみやすい性格で、美咲の心に新しい希望と冒険の予感を運んだ。美咲は悠斗の笑顔に心を動かされた。


二人は教室を出て、校門に向かい一緒に帰ることになった。悠斗は自分の興味を語りながら、美咲にも興味深い話をしてくれた。


「実は、僕、スカイダイビングが趣味なんだ。空から見る景色って最高なんだよ。でもね、一番すごい瞬間は、飛び降りた瞬間なんだ。自由って感じがして、まるで空飛ぶ魚みたいだよ。」


美咲は悠斗の話に聞き入った。空から見る景色や飛び降りた瞬間の感覚に惹かれたが、同時に恐怖も感じた。


「そうなんだ、私もいつかスカイダイビングしてみたいな。でも、怖くないの?」


と尋ねた。


「怖いときもあるけど、それが楽しいんだよ。僕も空飛ぶ魚になった気分になるんだ。空飛ぶ魚って、スカイダイビングと似てるよね。」


「私、小さい頃からずっと空飛ぶ魚に憧れてて。祖父が元パイロットで、その話をよくしてくれるの。でも、なかなか実現できなくて。だから、虹の中に空飛ぶ魚がいるって話を聞いて、探してみることにしたんだ。」


悠斗は美咲の話に驚いた。彼女も空飛ぶ魚に興味があったとは思わなかった。それはすごい偶然だね。


「そうなんだ、君の夢は空飛ぶ魚だったんだね。それはすごい偶然だね。虹の中に空飛ぶ魚がいるって話、僕も聞いたことがあるよ。」


と言うと、美咲の手を握り、「僕も一緒に虹を探そう。そして、空飛ぶ魚に会えるといいね。」と言った。


美咲は悠斗の言葉に心が温かくなり、一緒に空飛ぶ魚を探したいと思った。

「伝説の虹の中の空飛ぶ魚へ、夢をのせて」は、夢と冒険、そして友情が交差する物語です。美咲と悠斗が出会い、共に成長していく姿を描きながら、彼らが辿り着く先には一体どんな空飛ぶ魚が待っているのでしょうか。読者の皆様には、彼らの冒険の行く末を楽しんでいただければと思います。虹の谷の中で繰り広げられる未知の世界への探求心と、青春の煌めきが詰まった一作です。

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