お狐さまと暮らす
「お狐さま、朝ごはんです」
大きな錠の掛かる引き戸の前で、私は膳を提げて声の届くのを待つ。
「うん、入れよ」
いまだ眠そうに怠いと言わんばかりの声が発せられてから膳を足元に置き、胸の辺りの高さにある錠に古い鉄鍵を差し込んで錆びた音を鳴らして鎖を解く。
重たく軋む1枚天板を全体重をかけて引き、丸い裸電球の灯る黄色い光りの中へと膳を運ぶ。
その部屋・・の正面、壁際で大欠伸をかます青年が一人。
狐を模した木彫りの面を着け、Tシャツにジーンズ、肩を越す長さの黒髪の痩せた青年は、薄っぺらい煎餅布団の上に胡座をかいて、膳を手にする私を待つ。
「お待たせいたしました。朝ごはんです」
毛羽立つ畳の上で正座をして膳を差し出し、頭をちょこんと下げて礼をする私を、青年……お狐さまは面にある2つの空洞からじっと見据えてくる。
「今日の朝はクロワッサンにハムエッグ、ソーセージとシーザーサラダ、アールグレイだろうな?」
「白ご飯にワカメの味噌汁、たくあんときゅうりの浅漬け、だし巻き玉子と緑茶です」
「……」
「……」
「俺はクロワッサンにハムエッグ、ソーセージとシーザーサラダにアールグレイ…」
「ライスあんどワカーメのミソスープ、タクアーン、キューリィ、巻き巻きタマーゴあーんどチャ!」
「……」
「……いらないんなら私がいただきます」
「いただきます」
面のお陰で表情は読めないが、お狐さまは不貞腐れながらも膳の前にすり寄り、箸を取って白ご飯を運び始めた。
質素な木彫りの面を少しだけずらして口元を曝す。
私は未だお狐さまの顔を拝見した事がない。
ただ、その風貌から"若い"であろう事は伺える。
なぜなら、お狐さまにヒゲはない。
「あのさぁ、ベル●ら読み終わった。次持って来て?」
湯気を揺らす味噌汁をずずずぅ~と音をたてて美味しそうに啜り、箸を持つ手を軽く振って枕元を指す。
行儀が悪いなどと口にするのも面倒で、チラリとその先に積み重ねられた漫画本の山に視線を向けてコクリと頷いて応える。
裸電球一個の灯り。
私の身長の2倍は在ろうかという所に1つだけあるくすんだ嵌め込み窓が、時間の流れを教えてくれるだけの8畳ばかりの部屋。
土壁で四方を固められ、唯一の出入口には強固な錠前が掛けられているこの中で、お狐さまの楽しみは私の運ぶ暖かな食事と漫画本だけらしい。
目が悪くなるなんて事も口には出来ない。
そもそもこの薄暗い中で視界を狭める面を着けているのだから、言っても仕方がない。
私は盛り付けた食事が空からになるまで正座をしてお狐さまの正面でいつも大人しく待つ。
*****
「今日からお前はあそこに飯めしを運べ。それ以外の事はするな」
そう乱暴に言い捨てられたのは幾日前の事だったのか。
普通に可愛らしいワンピースを着て、普通にニコニコと笑って、普通に公園で友だちと遊んでいただけ。
なのに強面こわもてなオヤジに連れられてやって来た山の中で、何故かご飯の乗った膳を手渡されて運ばさせられる。
不自由はない。
ないはずだ。
勉強はしなくていいし、かなり古いが好きなだけ漫画が読める。
与えられた6畳間の三方の壁には、備え付けの棚が埋め尽くされるほどびっしりと漫画本が並べられていた。
ただ、この家の周りが大木と雑草だらけなだけ。
虫や鳥の鳴き声、獣の遠吠えが聞こえるだけで、人の気配がしないのが欠点か。
言われた通りに湯気の立つ器の乗った朱塗りの膳を手に、毎日およそ決まった時間に訪れる部屋。
そこで狐を模した面を着ける"お狐さま"と会ったのはここに来て直ぐだった。
「……やあ、初めましてだな。君はいくつ?」
飄々としたチャラい感じで話し掛けてきた初対面のお狐さまに、私は内心心臓バクバクで恐る恐る膳を差し出した。
引き戸の前ではオヤジが睨みを利かしていたはずだ。
「……10歳……ご飯持ってきた」
「ありがと、俺はね……忘れた」
初めて交わした会話はそんなもんだ。
オヤジは次からは一人で行けと吐き捨てて、私を自室へ放置した。
1日に3回、お狐さまに食事を運ぶその時だけ、私は彼と会話する。
その時だけが私の楽しみとなった。
「お前は珍しいな。怯えもしないで俺と話しをする」
「そうですか」
「お前は面白いな。表情も変えず俺を笑わせる」
「そうですか」
「今までのヤツは泣いてばかりだった」
「……今まで、って、何人?」
「────3……いや、忘れた」
お狐さまは面の中にくぐもった笑いを漏らす。
私はじっとその姿を見てるだけ。
そんな日がいったい何日過ぎたのだろう。
いつもと同じ時間にオヤジが私の部屋へ膳を2つ持ってくる。
「ほら、持っていけ」
1つは私の分、急いで掻き込みオヤジの前で朱塗りの膳を持って部屋を出る。
小汚ない大きめなジャージの服の中に漫画本を忍ばせて、開いた扉をすり抜ける。
オヤジが眠そうに欠伸をしながら、チャラリと部屋の鍵を自身のポケットに仕舞う仕種を横目に、私はお狐さまの処へ急ぐ。
「お、来た来た」
嬉しそうにお狐さまは珍しく私の訪問を喜んだ。
いや、昼ご飯を待っていただけかもしれない。
ベル●らを読ませたから西洋被れになりかけ、いつも質素なご飯にケチ付ける事を覚えたのだ。
昼ご飯の時は何と言ってくるだろうか。
少しばかり私は浮かれてそんな事を考えた。
「お狐さま、昼ご飯です」
「ああ、待ってたよ。漫画は持って来てくれたか?」
あ、そうか。
娯楽が無くなっていたからなのか。
「はい、こちらに」
膳を差し出し、ジャージのファスナーを下げて漫画を見せると、お狐さまは長くて細い腕を伸ばしてそれを隠すように私の手を掴んだ。
「女が男の前で服をはだけるな。お前は恥じらいというものを学んでないのか?」
膳を跨ぎ、間近で2つの空洞の中と視線が重なる。
黒く揺らぐ瞳に気付いた。
「学んだ覚えがありません」
「ベル●らを読んでないのか?婦女子の嗜たしなみが描いてあるだろ!」
お狐さまは"オタク"街道を走り出したに違いない。
私はお狐さまに漫画本を渡している事を後悔し始めた。
そもそも、お狐さまが退屈そうに部屋の中でゴロゴロしていたから、私に与えられた部屋には漫画本がたくさんある事を話しの種にしたのがきっかけだ。
こんなにも嵌まってくるとは誤算だ。
何せ既に壁1枚と半分の棚の中は空からになってしまっている。
それではと、背中を向けて服の内側から取り出し渡した漫画に、お狐さまは鼻歌を奏でるほど喜び、伸び掛けた醤油ラーメンを適当に啜り上げてさっさと部屋から私を追い出した。
何故だかちょっとだけ寂しく感じた。
頑丈な錠前をがっちりと閉じ、私は俯き加減に自室へと戻る。
*****
その日の晩ご飯はハンバーグだった。
「ほら、持っていけ」
いつも不機嫌な顔のオヤジは酒臭い息を吐き、私の食べ終わるまで扉の前で待つ。
だが今日はなんだか私まで不快な気分になった。
「ごちそうさまでした」
そう告げて朱塗りの膳を手に急いでオヤジの側を抜けようとした。
だが、今まで簡単に抜けられていたその傍らは、今夜はオヤジの手に遮られた。
「……そろそろ食い時か、ん?」
突然背後から鷲掴みされた胸に走る痛みと、耳元へと吹き付けられる酒臭い息に全身が泡立ちゾクリと走る悪寒。
「おっと、大事な飯めしを落とすなよ。アレは貴重な金蔓かねづるなんだ……殺すわけにゃいかねぇんだからな」
呟かれる気色悪い声に、支えるように触れられた膳を持つ手が震える。
固まる私にニタリと顔を歪ませて、オヤジはゆっくりと品定めするかのように私の全身を隈無く撫で上げた。
「ほら、行って来い」
愉快そうな声に弾かれて足が動く。
ここに来て、久し振りに心臓がバクバクと息苦しさを感じた。
「お、今日は肉か────どうした?」
お狐さまが膳を差し出し正座する私の様子に疑問を表してくる。
私は答えられず固まったままだ。
何をどう話して良いのか判らなかったのだ。
「何か言われたか?」
言われた……言われたんだ。
「何か、されたか?」
何か……され、た……
問い掛けてくれるその声が優しくて、じっといつものようにお狐さまを見ていたはずなのに、今夜はその姿が段々と揺らいで見えた。
ぼやけるお狐さまは箸を膳に戻し、昼ご飯の時とは違いその長く細い腕で私を覆ってくれた。
「……そろそろ、か」
お狐さまからは何故か花の薫りがした。
知らずにしがみついたその胸は以外にもがっしりと硬く、暖かだ。
そっと囁かれた声も聞こえないほど、私は必死になって声を圧し殺して泣いていた。
*****
翌朝、私は心なしかスッキリとした朝を迎えた。
いつも通りお狐さまの処から戻り、びくつきながらもオヤジに膳を返すと、拍子抜けするほどオヤジは素っ気なく気怠そうに受け取って早々と私の部屋に鍵を掛けて去った。
お狐さまと私は変わらない。
私もお狐さまと同じように閉じ込められているのだから。
暖かなご飯も食べられるし、お風呂にも入れて、布団でも寝られる。
好きなだけ漫画も読めるけど、虫や鳥の声に獣の遠吠えに怯える。
オヤジ以外の人の気配のない山の奥深く、私はここに連れ去られて来た。
ただ、お狐さまの世話をするためだけに。
ここは昔は信仰心ある人々のいた神社だったのかもしれない。
面影もなく崩れた社殿跡、その裏にぽつんと建つボロボロで黒い土壁の蔵。
そこにお狐さまは囚われている。
お狐さまの神通力を売りにして、オヤジは詐欺紛いの事をしているに違いない。
離れに建つトタン造りのこのボロ屋で、オヤジはなかなか裕福そうに暮らしているのだから。
昨夜の出来事が脳裏に焼き付いた私は、ご飯の時間にオヤジを警戒するようになった。
なのにオヤジは平然としていて、以降手を出してくる様子が無くなった。
ほっとしていた。
「お狐さま、晩ご飯をお持ちしました」
私はいつもと同じ事を繰り返す。
お狐さまは私が来るたびににこやかに迎えてくれる。
その事に、私は安心していた。
ここに来た時と同じ時間を過ごす事に安心していた。
あの時よりオヤジの顔が赤くテカっていたなんて気付かず、お狐さまと少しの会話が出来た事に気が緩んでいた。
空からの器の並ぶ膳をオヤジに返すその腕を掴まれ、部屋内へ投げ飛ばされるまで、私は数日前の事を忘れようとしていたから。
*****
「すまない、遅くなった」
そう言って身動き出来ない私を抱えあげようとしてくれる。
「さあ、ここから出るんだ」
虚ろな目で瞬きを繰り返し、転がるオヤジを視界の端に写す。
「やっと、自由だ!」
そう歓喜の声を出し、私を担いだままボロ屋から駆け出す。
「お……き……ねさ……」
「俺の名前は不知火しらぬい!」
「し、ら……?」
「そう!君のお陰でやっとあそこから脱け出せた!
さあ、帰ろう!」
お狐さまは聞き慣れない名前を告げ、嬉々として暗い山道を草や突き出た枝葉を掻き分け駆け抜けて行く。
私は一瞬で恐怖に支配されていた。
手から膳が離れ、器ごと床に飛び散り陶器が砕ける音がした。
同じように私も砕けてしまうのではないだろうかと思った。
オヤジの荒く、堪えるに堪えられない臭いを発する息が周囲に充満してくる。
何が起こったのか理解する前に体中を虫の這う感覚に襲われ始め、全身が麻痺してしまったように動かせなくなった。
心臓が止まり、呼吸が止まり、声が出せない。
オヤジが乱暴に何をしていようが、私は天を仰いだまま目を見開いたままだった。
そこへお狐さまが音もなく現れ、オヤジから私を救ってくれたのだ。
腹を蹴りあげられ、壁に頭部を打ち付けた鈍い音が鳴ると、オヤジは動かなくなった。
ボロ屋がガタガタと揺れていた。
狐面から覗く2つの空洞の中から赤く燃える光りが見えた気がした。
お狐さまに抱えられた私はその首にしがみつき、暗闇の中に消えていく電灯の灯りを見送った。
*****
「3年……3年よ?信じられない……」
「無事で……無事で本当に良かった!」
私の目の前で大粒の涙を流し続ける大人がいる。
少し、いや、かなり老けたように感じるが見覚えのあるこの2人は私の両親で間違いない。
「……ただいま」
飛び交う言葉の多さと無機質な物の触れ合う音に電子音という喧騒の溢れる建物の中、回転する椅子に座らされた私は、ただ、そう呟いた。
お狐さまは風のように山を抜け、アスファルトの道に出ると私を民家の集まる場所まで連れていってくれた。
「お前のお陰であの天窓に手が届くようになった」
「……なんで?」
「漫画だ。あれを組み合わせ、積み上げて土台にしたんだ。
急がなきゃお前も前の子たちと同じ目に会ってしまうと焦った」
お狐さまは悲し気な声で私を集落の近くまで抱えて走った。
「お前の前に俺の世話をした子たちはあの男に殺された……いいように扱われて、あのボロ屋の裏に埋められた。
俺はあの蔵から出られず、いつも助ける事が出来なかった」
狐面のせいでその表情は見えないのに、お狐さまの悲しみが伝わった。
「お前を助ける事が出来て良かった。
さ、家に帰れよ」
向かい合うお狐さまはすらりと背が高く、イケメンの雰囲気を醸し出す。
じっと狐面を見る私の頭を撫で、ニンマリと笑んだ気がした。
「お狐さまは、一緒に行かないのですか?」
そう言葉を吐き出すのにも、地に足が着いて足裏が冷たいからだと言い訳をしたくなるくらい震えてた。
見上げる私の前でお狐さまは首を傾けてクスリと漏らす。
「お前の名前は?」
「……杏子きょうこ」
「杏子、またな」
お狐さまはわしゃわしゃと私の頭を掻き乱して跳ねるようにして離れる。
明るい空に昇る朝日を浴び、狐面を澄んだ空気の中へと放り投げた。
「じゃあな!」
その言葉を聞きながら私はお狐さまの背中をずっと見ていた。
朝焼けに霞む景色に溶けていく様を見ていた。
結局、お狐さまの素顔を知らないままだ。
カランと転がる狐面を手にするために、私は駆けた。
*****
「杏子ちゃん、おはよう。朝ごはんは食べられる?」
3年振りに帰って来た自宅の自分の部屋は、全く変わる事のない幼い雰囲気を残してくれていた。
「はい……」
畏まった物言いをしてしまう私に戸惑いを隠せない母親の顔が、申し訳なく感じてしまう。
私についてしまった誘拐暮らしの癖。
恐怖から無意識に泣き喚かないように努め、逆らわないように言葉を丁寧に使う事を心掛けていた。
あの部屋にあった古い漫画本から学んだ。
じっとしているしか無かった私が、現実逃避に選んだ手段は漫画を読む事。
山から脱出出来てから、検査入院を経て自宅に戻れて半年経ったけど、未だ私は復学せず、自宅療養をしている。
小学4年から学んでいないのだ。
13才となり、通うなら中学1年生だというが、それほどの知識は私には無い。
個人的に周りに追いつけるまで学習する必要があるらしい。
「クロワッサンにハムエッグ……ソーセージに……タマゴサラダ」
目の前のワンプレートに並ぶ料理を声に出した。
「ダージリンティーが好きでしょ?」
母親がプレートの隣にウサギ模様のマグカップを静かに並べた。
「杏子ちゃん?────どうしたの?!」
母親の慌てた声で私は頬を伝う温もりに気付き、ゆっくりと拭う。
「……な、んでも、ない」
態とらしく笑顔を見せて食事を終える。
気遣わしく接してくる両親にはやはり謝罪の言葉しか浮かんでこない。
結局自宅に戻っても1日を自室で過ごす。
鍵が掛けられているかいないかの差しかないのだ。
食事時には特に、ふとした瞬間にお狐さまを思い出してしまう。
彼は今、何処で何をしているだろう。
柔らかく暖かな風が吹き抜ける住宅地にあって、自室にあるたった1つの窓から、気力なく陽の沈む様を眺めて思考を止める。
不自由と思えなかった日々が懐かしく思える。
何日過ぎても忘れる事はないだろう。
あのオヤジは15年の間に6人の小学女児を誘拐監禁し、5人殺害していたとニュースが報じた。
私が発見され警察に保護された後、山の中を捜索、気絶したままの犯人は捕まった。
トタン造りのボロ屋の他は崩れた社殿と崩れ掛けた黒い土壁の蔵が建っているだけで、周りは大木と雑草に覆われた場所。
5人の子たちは皆、ボロ屋の裏から骨となって見付かった。
オヤジと私以外に人の住んでいた気配は無かったらしい────
私は自宅に戻るとしだいに寂しさを募らせた。
隠して持ち帰った狐面を抱き締めなければ眠れないほどに、お狐さまに会いたいと思うようになった。
お狐さまは特別な力の無いただの化け狐だと言っていた。
あのオヤジはお狐さまを座敷わらしのように扱っていただけ。
誘拐した子が暴れると、見境無く暴力をふるい殺害してはまた拐うを繰り返していたオヤジは、『狐のせいだ』と喚き精神異常を訴えている。
「なんだ、泣いてるのか?」
空が藍色に染まり、月と星が飾り立てる中、少し肌寒い夜風に乗って部屋の窓から聞き覚えのある声が届く。
「……泣いてません」
そこに在る姿に驚きで思考が固まる。
胸に抱いていた狐面を、思わず背中に隠してしまった。
「そうか。なあ、腹減ったんだけど飯めしあるか?」
「……はい、用意します」
お狐さまは自然と私の部屋へと入ってくる。
面を着けていないのに、それがお狐さまだと認められる事に不思議と感じない私がいた。
急いで部屋を飛び出し、何の変哲もないお盆にお握りとワカメの味噌汁を乗せて差し出す。
「うん、やっぱりお前の持ってくる飯めしがいいな」
そう言ってご飯を食べる姿を私はただじっと見る。
「明日の朝はクロワッサンとハムエッグを出せよ?」
「ダージリンティーも、ですね」
そう言う私に向かい、狐面の無い笑顔を見せる青年の姿を私は微笑んで見詰める。
~fin~