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時をかけるのは、悪役令嬢  作者: コノハナ咲夜
24/26

ハンバーグとの再会ですわ。

全てが落ち着いた。

カーネリアン公爵は爵位剥奪の上、元神殿長のネルミットと纏めて、実刑として監獄へ送られ、元教皇様は記憶を全て無くす魔道具を使われ、廃人となり、国の外れの山のふもとにある養護院で余生を送っている。


監獄へ送られた二人には、ユースベルタが刻まれたのと同じ印が付けられ、生涯魔法が使えない身となった。

「魔法が使えると、監獄で好き放題する輩が出てくるからね。そうすると看守たちが危険になるんだよ。守るべきは真面目に生きる国民であり、ズルをした罪人ではないだろう?」

シルベスター様の説明は分かりやすく、腑に落ちた。


命があっただけ良かったと思うべきでしょうね。


「案外、監獄では先輩罪人の実行犯の彼に頭が上がらないことになってるかもね。」


ケラケラと笑って話すことから、それが想像ではなく、事実なのではないかと思う。


神殿も、一気に粛清が行われたことにより、「神は見ている」と神官たちの間での合言葉になっているのだとか。

1年間の無償奉仕も、神殿にいる間は特にお金を使うこともないと言い、軽いくらいの処分だったのではないかと言われているようだ。


「大半の横領はネルミットが行っていたのでしょう?その他の神官たちが着服した額なんて、たかが知れてますものね…。」


神殿では国の税金や寄付金、お布施から食費や生活費が賄われているだけでなく、階級によってそれなりのお給金が出ている。

お給金がなくなっても、生活に困ることはない。

多少、息抜きの為の外出が出来なくなる程度のことだ。


「今、城下町で人気の料理店に通うお金が欲しかったらしいよ。」

「人気店ですか。」

「なんでも、肉じゃがとクリームシチューが人気のお店なんだとか?」

「最近は唐揚げとグラタンも人気メニューですわよ。…あら、私のお布施で私のお店に食べに来てらしたの?」

「そのようだね。」


なんともマヌケなオチに、私とシルベスター様は顔を見合わせて笑った。


城下町の料理店は料理長ライデンが店長として二足の草鞋で営業しているお店だ。

店長だけでも大変だからと言ったのだが、新しいレシピは自分が一番に作りたいからという理由で、屋敷の料理長も続けてくれている。


「それで…きみに要望書が届いているんだけど…。」

「要望書ですの?一体どなたからどんな要望ですの?」

私が大した興味もなさそうにお茶を飲みながらショコラマフィンにかぶりついていると、シルベスター様が苦笑いで口を開いた。


「名前だけでもいいから、神殿長になって欲しいと、神官たちからだ。」

「はあ?!」

「なんでも、神殿には女神様が必要だ!そうだよ。」

「私は悪役令嬢ですわよ?」


私たちの会話をずっと黙って聞いていたミドーグチが笑い出す。


「本物の悪役令嬢は自分で悪役だなんて言わないだろう?なんで悪役令嬢であることに誇らしい顔をするんだよ?」

「リーネちゃんが楽しそうなら何でもいいじゃない?笑ったら可哀想よ。」

ミドーグチの母親がミドーグチを窘めながら、私の口元についたチョコを取ってくれる。


女神は私じゃなく、ミドーグチの母親だと思うのですが。


今日はミドーグチの車で駅前にあるカフェにやってきた。

だから、今日のシルベスター様はシャツにスラックスという、シンプルなスタイルだ。


「リーネちゃん、シフォンケーキも食べましょ。」

「はい!喜んで。シルベスター様はもう召し上がらないのですか?」

「甘いものは一つで十分だよ。私はこのコーヒーに感銘を受けている。」

「流石、王太子。味が分かる男だな!」


シルベスター様とミドーグチは気が合うようで、シルベスター様に初めてできた親友なのかもしれないと思えてきている。


シルベスター様の片腕だったユースベルタを失くした今、シルベスター様の心を守れるのは、ミドーグチみたいな人なのかもしれませんね。


「ここのカフェはね、甘いものが豊富で、私のお気に入りなのよ。」

「確かに!!沢山種類があって選ぶのに悩みますね。」

「でしょう?リーネちゃんと食べたくなっちゃって、ヒサシにお願いしたの。」

ふふっと笑ったミドーグチの母親が可愛らしく見える。


「なんだ。ミドーグチはヒサシというのか。」

「そうだよ。シルベスターに負けず劣らず、良い名前だろう?」

「意味は分からんが、両親の愛情は感じるぞ。」

シルベスター様の言葉に、一瞬キョトンとした顔をしたミドーグチが、照れ臭そうに笑った。


そんな二人を見て楽しそうに笑うミドーグチの母親に、私はふと思いついて聞く。


「ミドーグチの母親の名前は何ですの?呼ぶ時に長いので、良かったら教えて頂けないかしら?」

「え?私?」

「ショウコ。」

ミドーグチの母親の代わりにミドーグチが答える。

「ショーコ。うん、良い名前ですわね。何より呼びやすいですもの。」

私が笑って言えば、ショーコが嬉しそうに言った。

「リーネちゃん、ミルクレープとマカロンも食べる?」

「食べます。」

「「まだ食うのか?!」」


シルベスター様とミドーグチの声が重なる。

本当に二人は仲が良いようですわ。




帰りに夕飯の材料を買うと言って、近くのスーパーに寄ることになった。

「女の買い物は付き合いきれない。」

そう言ったミドーグチがシルベスター様を連れて「30分後に車に集合〜」と行ってしまった。


「リーネちゃんを一人占めさせてくれたのよ。」

ショーコが笑うから、私は嬉しくなった。

「ショーコ、ここには何がありますの?」

「ご飯の材料がなんでも揃うお店なのよ。お菓子もあるわ。」

「凄いですね!」


いつかミドーグチが押していたようなカゴのついた車に買い物用のカゴを載せて、ショーコが歩き出すのを「私が押したい」と立候補して代わって貰った。


スーパーは楽しかった。

沢山の野菜が山積みに置かれ、色んなお肉が種類毎に小分けされていて、見たことのない魚が沢山いて、美味しそうなお菓子が並んでいる。


「栄養ドリンクは口にあった?」

ショーコが思い出したように聞いてきたから

「甘くて苦くて不思議な飲み物でしたわ。でも効果は凄かったのです。みるみる魔力も体力も戻って…あ、そういえば、神殿でベタベタの膜で包んでみたのですが、大福をイメージしたら大成功でしたの。ショーコのお陰ですわ!」

「ええ?!」

「ショーコは神様なのですわね。私は確信しましたの。」

私の言葉に、一瞬キョトンとした顔を見せたショーコが、照れ臭そうに笑ったので、やっぱりミドーグチの親なんだなぁ~と感心した。


その後も「プリン買っちゃう?」とか「バナナとは何ですの?」とか、レジという勝手に計算する魔道具に感動する、楽しい買い物タイムが終わって車に向かうと、ミドーグチとシルベスターがじゃれ合っていた。


「あらあら、本当仲良くなっちゃって。」

ショーコが楽しそうに笑った。


「夕飯何にするの?」

ミドーグチの質問に、私は胸を張って答える。

「ハンバーグですわ!」

「リーネ、そんなに食べれるの?」

シルベスター様の言葉に私はハッとする。


「お腹がいっぱいです…。」

「当たり前だろう?お前、ケーキ何個食ったと思ってるんだ?」

「ううう〜。」


やっと再会を果たそうとしていたハンバーグがまた遠退いてしまった…。

涙目になる私にショーコが思いついたように言う。


「お弁当にしてあげるから、持って帰ったらいいじゃない?」

「「オベントー?」」

私とシルベスター様の声が重なる。

「持ち帰れる食事よ。」

ショーコがそんな私たちに笑いながら答えた。


やったわ!

ハンバーグと帰れるなんて!

ハンバーグを今度こそ食べれますわ。


「やっぱり、ショーコは神様ですわ!」

「ああ、今日ばかりはリーネのその意見に賛同する。」

はしゃぐ私たちに、ミドーグチが「やれやれ」と苦笑いするのを、ショーコはコロコロと笑っていた。


1時間後。

ショーコに手渡されたハンバーグ入りのオベントーを抱え、私たちはホクホク気分で帰った。

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