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時をかけるのは、悪役令嬢  作者: コノハナ咲夜
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さあ!決着をつけましょう。【後編】

神殿中の施錠を掛け終わり、念の為、神殿から出られても動けなくなるように、神殿を包み込むようにネバネバした膜を張り巡らせた。


何年間も通った神殿だから、ある程度の出入り口や窓の位置は予測も含め、頭に思い描けているが、私の予想外の場所がないとも限らないからだ。


祭壇の前に立つ教皇様が、落ち着いた仕草で近付いてくる。

私を背に隠すように、シルベスター様とクリスティン兄様、ルイコス、セイバス、メイラが動き、シルベスター様と一緒に来た執務長キースと数名の騎士たちが喉を鳴らすのが分かる。


祭壇に立つ女神像に、私は祈りを捧げる。


『神様、少しお目汚しをしてしまいますが、お許し下さいませね。』


「…!!?」

「リーネ?」

「…なんでもありませんわ。」


『白は染まりやすいけれど、綺麗にすれば、どの色よりも明るい色になるわよ。』


神様の声が聞こえた気がしたのです。

正確には、ミドーグチの母親の声でした。


確かに…白ほど明るい色はありませんわね。


「ボルン…貴方はなんてことをしてしまったのでしょう…。」

いかにも憐れむように口を開く教皇様に、シルベスター様がクスクスと笑い出す。

「教皇様。ボルンではなく、本当の名前で呼んで差し上げてください。貴方の血をひいた実の息子なんですから、流石に死ぬ気で働いた息子に他人のフリした挙げ句、斬り捨てるのは、あまりに無慈悲すぎるでしょう?なぁ?ユースベルタ。」


「ええっ!!?」


その場にいた者たちが驚きの声を上げる。


それもそのはずだ。

ユースベルタは得意の変身魔法を駆使して、王太子の侍従と神殿の神官見習いを演じてきたのだから。


私が彼の変身魔法を見抜いてしまう為に、なかなか神官見習いとして私の前に出ることはなかったのだけれど、彼はなかなか研究熱心なようで、いかに私を騙そうかと努力し、やっとの思いで見出したのだ。

私の第六感を惑わせる方法を。


「私は魔力量が少なかった頃は、ありとあらゆる事を事細かに観察する癖がありましたわ。それが自分を守るための手段だったからです。しかし、魔力量が激増したことで、私自身の驕りもあったのでしょう…。観察することに甘さが生まれ、そこをユースベルタ様につけ込まれたのです。…先日のあれは、私への皮肉でしたのかしら?」

「…いつ、気付いた?」

ルイコスの足元に転がるボルン…もとい、ユースベルタは口の中の布を吐き出すと、私を見つめ呟いた。


「皮肉が…似てるように思えたのです。カーネリアン・ジャスミン様からのお手紙に。」

私の言葉に、セイバスが「確かに」と呟いた。


「リーネの話を聞いて調べたら、カーネリアン公爵と教皇様は腹違いの兄弟だったことが分かったよ。つまり、ユースベルタとジャスミン嬢は従兄弟同士。そして、二人はここ神殿で何度か会っていただろうことが予想出来る…。互いに互いの話をしていたら、自ずと気付くこともあったんじゃないか?」

シルベスター様の言葉に、ユースベルタは頷いた。


「私の父はこの国の教皇だ。しかし、それは秘密にしなければならなかった。母は年に数回、巡礼のついでに現れる父から金を受け取り、私のことは死んだ昔の男との子供だと言っていた。…でも、ジャスミンに出合って互いに『似てる』と感じたよ。容姿とかは分からないけれど、なんていうか…雰囲気かな。外に出している自分と、隠している自分との差異が…大きくなるにつれて、ドス黒い感情が生まれるんだ。」

「そうね…二人とも嘘が下手すぎるのですわ。まだ、カーネリアン公爵の方が上手いように思います。」

「な!?」

今度は騎士たちの足元に転がされたカーネリアン公爵が声を上げた。

瞬間、騎士たちに睨まれている。


「いや…公爵もある意味素直すぎる人だよ。私を馬鹿にする様子は隠れてさえいなかったしね。その傲慢さを隠そうともしない伯父に対して、ユースベルタは殺意を抱いていたよね。」

「な!?」

「ふん。」


カーネリアン公爵がユースベルタを睨むも、ユースベルタは鼻を鳴らすだけだった。

その様子を見たシルベスターが、「やはり、血は争えないものなんだね。」

と呟くと


「さて、教皇様。今回、この者たちは私の周りに盗聴の魔道具を取り付けて回ったり、私に必要な情報を隠したりした上に、私の大切な婚約者を亡き者にしようとしたのだが…彼らの話を聞いていると、どうも違和感が拭いきれず貴方に会いに来た。」

私の腰に手を回しているシルベスター様の手に力が籠もる。

私は、そっと彼の腕に回している手に力を込め『頑張りましょう』と念を送る。


シルベスター様はそんな私に気付いた様子で、ふわりと笑って見せる。


「彼らの心を言葉巧みに惑わせ、彼らの道徳心を失わせた上に、今まさに斬り捨てる算段を立てている貴方に罪はないのでしょうか?」


シルベスター様の声が響く。


「確かにあなたは実行犯ではない。しかし、彼らや神官たちの心を惑わせる発言を繰り返し聞かせることで、結果、貴方の代わりに動く駒として利用した貴方には…本当に罪はないのか?」

「私は、何も動いてはいない。」

イライラを隠せない様子で教皇様が声を発する。

「しかし、他人を自分の代わりに動かした。」

シルベスター様は負けない。

「そんな証拠はない!」

よし!言質取ったも同然。

私たちは心の中でガッツポーズをする。

「証拠はある!彼らの記憶の中に!」

「まさか!?」

教皇様とカーネリアン公爵とユースベルタの視線が一気に私に向かう。


「私、人の記憶を操れますの…もう皆さんはご存知なのでしょう?」

わざとらしく、コテッと首をかしげながら伝えれば

「それを知っている者にも使えるのか…?」

「私、魔力量が豊富なので、そのような小さなこと、関係はございませんよ?」

「なに?!では!馬車の事故の記憶は?!」

明らかに焦った様子の教皇様に、私はニコリと笑ってみせる。


「私とシルベスター様、それと事故に間接的にでも犯人として関わった人を除くという条件をつけて発動致しました。後に、私の専属たちの記憶は戻しましたわ。」


教皇様の表情から血の気が引くのか分かる。


「面倒臭いから、消した記憶を全員に戻してしまえば良いんじゃないか?」

クリスティン兄様が私を見る。

シルベスター様を見れば、「もう、良いよ。戻して。」と言うので

「じゃあ、戻しますね。」



記憶を戻した者たちが、ガヤガヤと騒ぎ始めるのが、少し遠くに聞こえる。


あ…流石に魔力使いすぎたかも。


少し目眩がする私の目の前に、シルベスター様が小さな瓶を出した。


ミドーグチの母親から貰った栄養ドリンクだ。


私は迷わずに受け取ると、コクコクとそれを喉に流し込む。

「どんな味?」

「う~…甘いけど…少しだけ苦いような…あ!凄い…魔力も体力も回復してきましたわ。」

「本当に?!」

私は大きく頷く。


「さて、王太子殿下、この者たちの処分はいかが致しましょう?」


セイバスの声にハッとする。


そうでした。

今回、償うべき罪を犯した者たち3名に加え、神殿でお布施で私腹を肥した神官たちをどうすべきか。

それをずっと悩んでいた。


シルベスター様がジャスミン様を国外に逃がしたかった理由もここにあることを、私は理解している。

面白くはないけれど…。


国民たちの記憶が戻った今、自然に忘れられる日まで彼女は隣国から戻れないでしょうけれど。


あ…その前にカーネリアン公爵邸がなくなっちゃうか。


私利私欲の為に動いた者たちは実刑を与えたいが、大人たちの気を引きたくて罪を犯した者たちには反省の機会を与えたい。


「教皇ルーカイス・マズール、及び、カーネリアン・ラズベルト公爵は実刑を言い渡すために王城への連行を。アルマイト・ユースベルタの実刑は今、ここで魔法に関する記憶を消し去り、魔力を封じる印を印すことで、今後一切、魔法を使えない生を送ることを命じる。また、神殿のお金を私利私欲のために使っていた神官たちには罰として、今後1年間の無料奉仕を命じる。この判決が気に入らない者は今ここに名乗り出よ。」

「誰が着服していたか、これだけ神官がいるのに分かるのですか?」


神官の疑問はもっともだ。


私はそっと想像する。

着服したお金で私利私欲を満たした経験がある者は手を挙げる想像だ。

「皆さん素直で素晴らしいですわ。これなら、この神殿もすぐに立て直せそう。」

私がそう言って微笑む中

手を挙げる神官たちからは「悪魔だ」の呟きが、それ以外の神官たちからは「女神だ」の呟きが漏れ出した。


「私は悪役令嬢ですわ!」



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