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五分前からこんにちは

作者: 相川 秋葉

ねえ、「世界五分前仮説」って知ってる?


季節は春。春眠暁を覚えずとはよく言ったもので、僕は不真面目な学生の例に漏れず、陽当たりのよい自分の席でうつらうつらしていた。本当によい季節だ……。などと考えていると、前の方で話している女子が耳慣れない単語を口にした。

「ねえ、『世界五分前仮説』って知ってる?」

なんだそれは。世界が五分前に出来た?でも僕は確かに存在しているのだ。今僕は高校2年生の17歳の男だ。ひとつ隣りの駅からほど近い高校に通う幼なじみの彼女がいて、同じクラスには幼稚園から仲が良い親友もいる。成績は中の上で、なんとか特進クラスに入れた。得意なのは理系教科で、将来は旧帝大の薬学部から創薬の仕事をしたいと考えている。

そんな僕の設定も、五分前に出来たものだって?めちゃくちゃだ。どこかの暇人が考えた思考実験に過ぎない……

そんなことを考えていると、頭の中に突如、謎の声が響き渡った。

『君の設定は全部、5分前に小説を書き始めた僕が適当に考えたものだよ』

「はあ!?」

突然大きな声を上げてしまったせいで、周りの皆がびっくりしてこちらを向く。いやしかしそんなことはどうでも良いのだ。

『あはははは!!あはは!はあ……ひい……ひい……うえへへっへっゴホッゴホッ』

天の声(仮称)は素っ頓狂な声を上げた僕を見て笑っている。爆笑だ。なんなら噎せている。こんなのが僕の創造主だなんて……

『というか君さ、ボロを出すのが早いんだよな』

どういう事だ?いきなり意味の分からないことを言われて途方に暮れる。

『さっき「そんな僕の設定も」って言ってたじゃん、頭の中で。設定って言ったらダメなのよ。馬脚を露わしてるのよ。なんなら馬脚だけが出てきてるレベル』意味がわからない喩えだ。ここでひとつうんちくを披露すると、「馬脚を露わす」というのは人形浄瑠璃から来ていて、馬役の黒子が見えてはいけないのに見えてしまっている、という状態から来ているのだ。

『補足すると、人形浄瑠璃って言う名前は浄瑠璃って名前の作品がめちゃくちゃヒットしたからそう呼ばれるようになったんだよね』

その通り。しかし話がとっ散らかる。これはシリアスな、それでいてエモい、そんな小説のはずだった。なのにこれではただのギャグじゃないか。僕が第四の壁を超えてしまったせいで、あまりにも酷いことになってしまった。あと主人公の僕の名前くらい考えておけ!!!!!!

『今度があったら、考えてから書き始めます……ごめん』

声が響いた途端、急激な眠気に襲われる。視界が歪む。とてもねむい……ねむい……全てが夢であることを願って僕は睡眠という名の海へ、深く、深く、落ちてゆく………

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