2人目・美少女転入生〈エピローグ〉
借りた本を読む。
おすすめなだけあって、確かにおもしろいのだけど……ちょっと釈然としない。
恋物語を楽しむ会にも誘われている。返事は、保留中。
しばらくすると迎えが来た。
今日は、レナルド様のお家に招かれて、二人でお茶会。
天気がいいのでと、庭園に用意されたお茶にお菓子。
レナルド様とおしゃべりをする。
ただそれだけ、だけど。
「トリア、やっぱり、君と過ごすのは楽しい」
私は、挙動不審になりたい気分ですよ。
婚約者がいるという状態に慣れつつはあるのだけど。
「やっぱり、まだ慣れません、あなたの婚約者であるということに」
「そう、か」
レナルド様が立ち上がる、そして。
……私のゆっくりさに合わせるって話は、やっぱり、どこにいったの!?
レナルド様に、後ろから抱きしめられている。
「少し、このままで。誰も見ていないから。
君とっては早すぎるかもしれないけど、俺はイヤだね。待てない。
君の気持ちが、他の誰かにあるのならともかく、そうじゃないんだ。
殿下だろうと、他の男だろうと、渡せるわけない。
誰よりも俺は、君に恋い焦がれている」
この人の言葉はやはり、受け入れるのが難しい。でも。
私が、商家の養女だから、男爵様の養女だから、侯爵家の養女だから、殿下に能力を認められたから、成績が良いから、頑張っているから、だから私のことを好きだと言っているわけではないらしいのは、わかる。
ということは、私がそうではなくなっても、私と一緒にいたいと望んでくれるということだろうか。
商家の養女でなくなっても、男爵様の養女でなくなっても、侯爵家の養女でなくなっても、殿下に能力を認められなくなっても、成績が落ちても、頑張るのをやめても。
レナルド様の腕の中で、ゆっくりと肩の力を抜いてみる。
空が、青い。