7人目・とある男爵令嬢〈エピローグ1〉
今、私の脳内を駆け巡っているのは“想定外”という言葉だ。
一番の想定外は、転生したことでも、転生前の記憶でも、ロイ君とミーナちゃんの婚約でもなく。
私の一番の想定外は間違いなく、コイツだ!!
勤務時間終了後、こちらにやってきた騎士君が大真面目に私に話しかけている。
「私たちは婚約しています。一年後には結婚します。
私は約束を違えることはいたしません。あなたを逃がすこともありません。
それでも、許してはいただけませんか」
……何か、不穏な言葉も入ってたけど!?
「私が貴女に触れたいと思う気持ちは、そんなにイケナイことでしょうか。」
……たぶん、そんなことはない、はず。
「貴女を愛したいと思う気持ちは、そんなに受け入れがたいことなのでしょうか。」
……受け入れたいと、思ってはいる。
「慣例通り、結婚は一年後としましたが、その間、貴女に触れることができないなど。私には到底、耐えられません。」
……そこは、何とか!
「何より、貴女に私の愛情を伝えることができないのが、辛い。」
……今のままでも十分だから!
「どうか、貴女の頬に口づけることを、許してはいただけませんか?」
………………。
いいの!
私は転生者!!
私にこの世界の基準は当てはまらない!!!
だから、
「手をつなぐところから、始めてください」
騎士君が重々しく肯く。
私はほっと胸をなで下ろし。
そして、騎士君が告げる。
「わかりました。結婚を早めましょう、一か月後に」
私の繊細な硝子細工のチキンハートが、阿鼻叫喚の地獄絵図と化しました。
そして二週間後。
どこかで交わしたような台詞を再び言い合っている。
そうなるんじゃないかとは、思ってたけどさ……。
「私たちは婚約しています。
それでも、許してはいただけませんか、貴女の唇に口づけることを」
……カーティス君、手加減という言葉を覚えようか。




