7人目・とある男爵令嬢〈プロローグ1〉
騎士君は今日も時間通り。礼儀正しく一礼して、出迎えた私の手を取る。
ごちゃごちゃした工房のなかを打ち合わせに使うテーブルまで、魔導具士である私を騎士君は大真面目にエスコートする。
騎士君は私の雇い主との連絡役。今日の打ち合わせもスムーズに進む。
作成中の魔導具について、新たな作成依頼について、必要な材料や経費について、完成間近な試作品について、魔物の出現状況について、それから。
「この前の試作品を改良したものがこれ、持っていきますか?」
「ありがとうございます。こちらの試行には立ち会っていただけますか?」
「その方が良ければ」
「では日取りが決まりましたら、またお知らせします」
打ち合わせがひと段落したら、いつものように声をかける。
「騎士殿、お茶をいかがですか?」
「ありがたくいただきます」
お茶といっても作法は気にしない。
簡易キッチンでお湯を沸かし、お気に入りの茶葉を入れたポットに注ぐ。
簡単につまめる焼菓子を用意し、マグカップに紅茶を注ぐ。
二人分のマグカップを持っていけば、テーブルの上の資料はきれいに片付けられている。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
真面目な騎士君の表情が少し和らぐ。
紅茶を飲み終えるまで雑談をする。
領主館を訪れた商人について、騎士団で話題になっていること、雨の話、それから。
騎士君が話をふってくる。
「お聞きしてもよろしいでしょうか、あれは何ですか?」
「……」
なんていうか、魔導実験のなれの果て、前衛的芸術のオブジェみたいな?
魔石の組み合わせをいろいろ試していたら、おもしろくなって、まあこんな感じ。
マグカップが空になると、騎士君は立ち上がった。
「では、明後日また伺います」
一礼して去っていく騎士君は、今日も礼儀正しい。




