6人目・とある伯爵令嬢〈エピローグ2〉
で、娘は転生者なのかしら、違うのかしら?
“あの”エカテリーネという悪役令嬢は、王太子の婚約者でしたけれど。
うちのエカテリーネは今現在フリー。
何しろ王太子の婚約者になることには、ジェイド様が大反対で。
無論わたくしも反対でしたから、そこは助かりましたけど。
しかしジェイド様は、娘にはまだ早いと王太子以外の婚約者も遠ざける始末。
当の娘はといえば、王太子にもその婚約者という地位にも、興味なし。
で、娘は転生者なのかしら、違うのかしら?
たまにですけれど、会話の端に感じるのですわ。
娘の発想は、転生者といえるような気もするけれど、単に発想力が豊かといえる気もする。
もしも転生者で、“あの”ゲームを知っていれば自衛ができる。だから、娘が転生者かどうか確かめたい。
けれど娘のほうが頭がいいから、かまをかけてもかわされてしまいそうで、それができない。
母として情けないかしら。
だから、障害予定のほうを取り除く方向に切り替えることにしましたわ。
侯爵家の私兵を使いましょう。
ジェイド様には、そうですわね、占いに出たといって、私兵を動かす許可を得ましょう。
この世界、魔術師がいるのど同じように占術師もいますもの。
占いのほうが、転生の話をするより話が通りやすいという判断ですわ。
“あの”ヒロインの出身領を覚えていれば話は早かったのですが、これも覚えていないのだから仕方がありません。ならば次善の策。
聖属性だったかしら、そんな庶民の娘が現れたら、侯爵家の力でもってその娘と出身領の情報をいち早く得て、その娘が王都に着く前に私兵を向かわせ、そして。
わたくしにしては思い切った手段を取った、そのはずだったのですが。
残念なことに失敗してしまいました。
侯爵家の私兵が襲うタイミングを計っていたところ、何と本物の盗賊が現れてターゲットを襲い、しかも実にタイミングよく現れたヒーローのような令息がターゲットを助けたというのだから。
報告を受けたときには、何の冗談かと思いましたわ、マジで。
ジェイド様には苦笑されてしまいましたし。
ええ、ジェイド様はわたくしの案には反対だったのです。ヤるなら、もっと確実に排除したほうが良いと。
何とでも理由をつけて、海を越えた隣国の親戚の侯爵家で快適に住まわせる、監視付きで。数年の間、エカテリーネと遭遇しなければ良いだけならば、その方が確実だと。
でも、母としては娘を守りたいのですわ。できれば、もっと根本から。
“あの”ゲームのヒロインちゃん、彼女を傷つけるつもりはなかった。
侯爵家の私兵に襲わせて、そして侯爵家の私兵に助けさせる。ちょっと怖がらせて、そして助けた侯爵家、つまりわたくしに気を許して内緒話をしてくれるように。
ヒロインちゃんは何が目的なのか、何か目的があるのか、知りたかったのですわ。
そうすれば、ヒロインちゃんの要望を満たすことができる。
ええ、殿方に囲まれてちやほやされたいなら、そんな環境くらい用意してさしあげますし。
王太子妃になって何かしたいというなら、その何かの方の手助けをしてさしあげます、王太子妃になる意味がないくらいに。
誰にも認めてもらえない今の環境が不遇だというなら、適性が活かせる場所を用意してあげましょう、学園で騒動を起こさずすむように。
そうすれば、問題はなくなる。ヒロインちゃんにとって、悪役令嬢が必要なくなるのだから。
そういう、思い切った手段だったのですけれど。
でも、これは何を意味するのかしら。
いいえ、どれほど策を講じようと、誰かの思惑は入ってくるもの。
その全部を知り操ることは不可能、わたくしなどにはとうていできない。
母にできることは、全部やってみました。
あとはもう、娘を信じるしかないのかしら。
もちろん、助けを求めてきたら、いくらでも力を貸してあげるから。
「どうか、あなただけの道を切り拓いていって」




