6人目・とある伯爵令嬢〈エピローグ1〉
迂闊でした。
って、わたくしの頭が良くないことは、今に始まったことではありませんが。
しかしこの国、“あの”ゲームに実によく似ておりますわ。
わたくしの中にある前世の記憶としか思えないもの。
何の役にも立たないと思ってきましたけれど。
ええ、わたくしの頭の悪さでは、前世の知識が活かせないのです。
だって、わたくし覚えておりませんもの。
そんな細かいところまで覚えているわけないでしょう!
悪役令嬢の両親は仲が悪かった。それは確か。
では、その両親の名前は?
お義兄さまの駆け落ちは、ストーリーの範疇に入っておりますの?
今のこの状況、ストーリーを踏襲しておりますの、どうですの?
例えば、こんな選択肢だって考えられるのだから。
実はお義兄様が転生者だった。あるいは駆け落ち相手が転生者だった。
どちらも転生者だった、あるいは両方違う。
わたくしに確かめるすべなどありませんが、娘の将来が心配で。
とはいえ。
侯爵家の路線は堅実に変更、わたくしとジェイド様の仲も良い。
これだけ環境が変われば、この娘が悪役令嬢になる可能性は低い。
でも、もし。
もし、娘が転生者で、更には悪役令嬢がやりたかったのに!といってきたらどうすれば!?
……どうしましょう。
さすがに想定していなかったですわ。
母としては、穏やな幸せを願いたいけれど。
あえて娘が、悪役令嬢の生き方を選ぶというなら、こう伝えることにしましょう。
「悪役令嬢への道、自ら切り拓いてご覧なさい」と。




