4人目・とある侯爵令嬢〈エピローグ〉
魔法使いとわたくしの婚約が、あと一歩で調います。
わが侯爵家が持っている子爵位を、わたくしが継がせてもらう予定です。
キリル様の研究が認められて、一代限りの爵位をいただける予定です。
そうすれば婚約、そして結婚ができる。
念願の、魔法(を見せてもらう)生活が叶う!
わたくし、この世界のありとあらゆるものに、感謝を捧げたい気分ですわ!
そして、わたくしはいつものように、中庭の片隅に来ております。
第一に、魔法を見せてもらうため。
第二に、キリル様にお伝えしておかねばならないことがあって。
「領地経営ならば、ある程度はできます。
幸いなことに、わたくしの頭はけっこう優秀みたいで。
それにお父様と、お母様と、弟が、優秀な人材を取り揃えてくださいましたの。
ですから、キリル様は魔法の研究に専念していただいて大丈夫ですわ。
そしてわたくしに、毎日、魔法を見せていただいても、大丈夫ですわ!」
え、キリル様、どことなく不機嫌そうですね。
「もしかして、余計なことでしたか?」
待望の、一日二回、魔法生活が……。
「あーもう、そんなこの世の終わりのような顔すんな!俺、すげー外道みたいじゃねえか!」
魔法使いが何か言ってるみたいですが、わたくし、それどころではありません。
「俺は魔法しかできない、だから。お嬢様が俺の魔法で喜ぶなら、いくらでも見せてやる!
なんだ、嬉しくないのかよ!?」
何をおっしゃいますやら。
「もちろん、嬉しいに決まっておりますわ。ただ」
「ただ?」
「そろそろ、名前で呼んでほしいですわ」
おや、魔法使いが絶句しておりますわね。
「……、……、……、……、……、リーネ」
思わず、じっと観察してしまいました。
「仕方ねーだろーが!!」
キリル様が怒鳴って、そのあと、ぼそりと付け加える。
「俺は、お嬢様に、惚れてるんだから」
かくして。
エカテリーネの物語は、ハッピーエンドに向かう。
これ、向かってますわよね。きっとそうですわよね?
ただ、そうしますと。
ひとつ、疑問が残る。
わたくし、全然頑張りませんでしたけれど、これで良かったのかしら?




