この中に裏切り者がいる!異世界転生した元IQ220の俺が頭脳ですべてを解決する!
「この中に裏切り者がいる」
俺は目を鋭く光らせ、今まで苦楽をともにしてきた仲間たちを見つめる。
本当は、こんなこと言いたくなかった。
仲間を疑うような真似はしたくなかった。
だが、俺は知ってしまった。
この中の誰かが、裏で秘密結社ダークナイトに情報を送っていることを。
魔法使い「私は裏切り者じゃありません!」
僧侶「騎士は裏切り者だ!」
占い師「魔法使いと騎士は本当のことを言っている!」
騎士「私は裏切り者だ!」
錬金術師「私は裏切り者ではないが、騎士は裏切り者だ!」
ナイフ使い「魔法使いと騎士のどちらかが裏切り者だ」
魔術師「偶数番目に発言した人物は本当のことを言っている」
脳外科医「この中に裏切り者はいません」
銃剣使い「俺は嘘つきじゃねぇぜ」
未来予知能力者「私は騎士が裏切る未来が見えます」
精霊「脳外科医は嘘つきです」
外科医「私は俺さんが嘘をついているように思えますが?」
ヒーラー「実は…騎士さんが裏切り者です…」
石膏技師「ふん!騎士は裏切り者じゃない!」
薬剤師「石膏技師さん、あなた嘘をついていますよね?」
道具屋の娘「俺さん!私は違います!」
税理士「私の計算では、騎士は確実に裏切り者です」
クソっ!誰が裏切り者なんだ!
俺は頭をフル回転させて答えを導き出す。
…いや、待てよ…。
そもそも、このパーティ人が多すぎないだろうか?
それに、魔法使いもいるのに魔術師もいる。重複しているように思える。
ナイフ使いもいるが上位互換っぽい銃剣使いがいる。
占い師と未来予知能力者はどう差別化されているんだ。
外科医と脳外科医がいる。医者をひとつのパーティーにふたりも入れる必要があるだろうか?両方外科医だし。もっと言えばヒーラーがいるから医者自体が必要ない気もする。
そして薬剤師もいらない。ヒーラーがいるから。
石膏技師はパーティに本当に必要だろうか。
道具屋の娘はもはや一般人だ。完全に忖度で入れている気がする。
税理士もいらない、と言おうと思ったがこれだけ人を雇っていたら確定申告とかする際に必要だろう。
あと騎士だけ疑われようが凄い。本人も自白しているし。むしろここまで気が付かなかった俺に問題があるの気がしてきた。
こんな意味不明なパーティを組んでいるんだ、よくよく考えれば問題があるのは俺だ。
パーティーの管理もロクにできていないし、賃金も滞納し続けている。
この一年で16人がパーティーを抜けた。
退職率は異常に高い。
パワハラもするし、やりがい搾取もする。朝礼でパーティーの教訓を大声で復唱させるし会議では他の人が口出しできない雰囲気を出している。
税金は払わないし今いる国も不法入国だし、活動資金は保護動物の密猟と仏像の窃盗で得ている。
秘密結社ダークナイトというのも、この前調べたら特に悪いことをしている組織ではないらしい。
慈善事業や発展途上国の支援、企業や農業の活動支援金の補助や、公共設備の保全を行っている団体だった。
今まで俺は秘密結社ダークナイトという悪そうな名前だけで判断していた。
聞くところによるとむしろ俺のパーティーが悪の組織として秘密結社ダークナイトに狙われているらしい。
このパーティーを裏切ろうとしている騎士はむしろ真っ当な思考なのではないだろうか。
このままでは騎士が謀反を起こして訴訟をしてくることだって考えられる。何か対策を打たなければならない。
騎士を殺すとか、そういうことはしない。脳外科医が人権派で、人道に反することは訴えると言われていた。
俺のパーティのやり方についても常に不満を口にしていた。
それならば、こちらも優秀な弁護士をつけるしかない。
しかし、今俺達のパーティに弁護士はいない。
俺は深く考え、静かに深呼吸をするとみんなの前で口を開いた。
「よし、次は弁護士をパーティに加えよう」