お礼とは
短くて済みません
「あの…、今日は何なのかしら?」
次の日、鳥の鳴き声と共に元気な子供の声が聞こえ家を出るとそこには荷台を引いたオーク親子と鳥が居た。
「いやあ、昨日は礼も出来なかったもので!」
「姉ちゃんおはよう!」
笑顔を向ける二人に引き攣った笑みが漏れる。
「は、はあ。今日は二人で?」
とりあえず一番大事なことは聞く
「そうだよ! 今日は父ちゃんとなんでかコイツもついて来たけどさ」
「魔王様は今日は公務がありまして…すみません」
「違うの! いえ、二人で大歓迎だわ!」
胸を撫でおろしつつも二人が引いてきた荷台へと目をやると乗っていた鳥が一声鳴いた
「キエー!」
「こちらは魔王様からだそうです」
「まぁ! すごい、果物がこんなに沢山…っ」
鳥が羽ばたいて被っていた布を捲ると昨日使った果物やこの辺りでは見かけない貴重な国外のものまで沢山敷き詰められていた
「姉ちゃんこれでまたかき氷作ってよ」
「もちろん!」
嬉しすぎる。こんなに沢山あれば煮詰めてシロップも作れる、ジャムも追加して…あ、干したらよいものもあるわ。わくわくと流行る気持ちにロクへと返事をしていれば、オーク父は辺りを見回し小さく丸まって庭仕事をしているチップへと歩いていく
「すみません、これ土を耕してるところで合ってますか?」
「ひょえっ!」
声をかけられたほうは遠くから見ても猫が飛び上がる様にビクつき肩を揺らしてた。大丈夫かなぁチップ。ロクはまだ子供だったけどオーク父は見た目からして本物のオークだ。昨日いつからチップが失神していたのか分からないが普通の人間ならばオークに出会えばまず逃げる。冒険者でもランクcでも一人じゃ厳しかったはず。そして私たちは冒険者でもない。チップは元庭師の現従者(無理矢理)だ
一抹の不安をかかえながらなりゆきを見守ってるとオーク父が身振り手振り何か話しているようだ。
チップの頭が高速前後に動いてる。頷いてるのか? あ、立ち上がったと思ったら隅に走って逃げた!
「チッ……」
「大丈夫だよー、父ちゃんに任せといてって」
思わず呼びかけようとしたのをロクに止められた。でも、と二人をよく観察するとどうやらオーク父が未だに転がっている大きい石を軽々拾って端へと投げていく。反対側へと逃げたチップはその慣れた動きをやや呆然を眺めていた
「俺の父ちゃんすっげー仕事早いんだぜ! 姉ちゃんは他にすることしたら? 俺ここで見張ってるし」
何を見張るんだろうか分からなかったが朝食もまだだったのでお言葉に甘えさせて頂こう。ついでに三人と鳥にもまた何か用意したほうがいいのかしら……。
頂いた果物はありがたくマジックバッグに収納しておいた