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スローライフの第一歩


「さて、チップ君。君の出番がやってきましたよ」

「全くやる気が沸いてこないのですが、何でしょうお嬢様」


 あれから目覚まし鳥は居なくなってしまったけどそれ以外は特に何もなく家の中も粗方片付け終わり、今日は朝食後家の隣へ来ていた。


「今から畑を作りたいと思います!おー!」

「…おー。」


 元気よく片手を上げた私とは対照的に破棄のない声が返ってきる。


「もう、これからここで暮らすんだから食糧の調達をしなきゃでしょう」

「で、畑ですか…。」

「そうよ!」

「で、僕の出番ですか。」

「イエス! さあこの杖を持って! レッツ耕し!」


 ぽん、とチップの杖を渡して荒れ放題の庭へと背中を押していく。多分2年前までは前の住民が畑として利用していただろう痕跡は土の色でやっと分かるぐらいだ。後はここだけ木が生えてないしね。


「もしかして僕ってこの為に呼ばれたんじゃ…。はぁ」

「大丈夫! 貴方の力だけが頼りなの。ね、頑張ってちょうだい?」


 大きなため息と共に杖を受け取る彼に、ニコリと微笑んでそっと杖に手を添える。卒業パーティーから大分化けの皮が剥がれてしまったけどまだ令嬢なのは健在な筈。視線を合わせれば、杖を握りしめチップは此方へ向く


「僕が必要だから、ですか?」

「そうよ。貴方じゃなくては駄目だったの。ここの庭お願い、できる?」


 ちら、と上目遣いで見上げればチップはほんの少し頬を染めていた。よし。


「まずはこの荒れ放題の雑草を何とかしないと、なんだけど…。土弄りなんてしたことがなくて」

「分かりました! お嬢様の為にこの元庭師の力最大限に発揮しますよ!」


 やる気になったチップの背後に回り隠れてガッツポーズ。

 両手で杖を持つチップは小さく詠唱を始めた。私みたいに魔力がある程度ある人は結構力業でごり押しするんだけど、チップの場合はそもそも魔力量が元から少ないので詠唱に補助媒体が欠かせない。まあ、私も集中して行うときは媒体があったほうが楽だから扇子をいつも持ち歩いているんだけどね。



「草木よ根よ、成長したまえ天空へと続く道。長い土から出てくるが良い。恵みの水はすぐそこです」


 杖の先端から緑の光が一面に放つ。荒れていた雑草はぐんぐんと伸びだして成長を始める。にょきにょきと根も地面から出てくるのを見守っていた私はココ、という場所で両手から氷を放ち、一面の草や根っこを凍らせた。

 凍った雑草や地面に残っていた根はすべて氷漬けになり一塊となる。それをこんどは反対の要領で氷に圧力をかけバリンッとすべて砕いた。


「ん、雑草処理完了! 後は石ころだけねぇ」

「あい変わらず、お嬢様の大技には基礎が吹っ飛ばされてますね、ははは」


 乾いた笑いを受け苦笑いをする。実際に私の魔法は前世の記憶が戻ってからは基礎魔法から大分外れてしまっている。

 粉々になった凍った草木は何れ腐葉土になるだろう。根っこまで抜いたからだいぶ土も柔らかくなっている筈。

 問題は畑には邪魔でしかない石。これは私の水魔法でもチップの木属性でも役に立たない。仕方がない人力で頑張るか


「それじゃ石ころ拾って畑を肥やしてね。私は昼ご飯の用意をしてくるわ」

「面倒なほうを絶対押し付けたでしょう~。まぁ、やりますけどね…。」


 そう言いつつ籠を持ちに石拾いを始めるチップ。

 私は昼食を何にしようか考えながら家に戻るのあった


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