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side チップ

「貴方、私の従者になりなさい」



 有無を言わさずそう告げたのは雇い主だった当主のご令嬢、スカーレット様でした。

 僕はそれまで代々続く庭師の家系で自分も庭師の下働きとして父と共に働いていた。有無を言わせず言い切ったお嬢様はまだ幼さが残る容貌に似合わず有言実行され、何故か庭師からお嬢様付きの従者に何時の間にかなっていた。初め自分なんかがと思ったがお嬢様はすべて自分で成される方で特段此方のすることは無かったです。


「なんでまたお前が選ばれたんかねぇ」


 庭で父にそう言われても僕も何でだろうとしか言えませんでした。

 お嬢様の婚約者はこの国の皇太子、従者として不釣り合いなのは僕が一番分かっていましたがお嬢様は僕を外すことはしませんでした。時折自分の宝石を換金してこい、野菜を買ってこいなどなどよく分からない指示がありましたが。

 ある時お嬢様が頭が可笑しくなったとしか考えれないことを言い出したんです。自分は未来に王太子から断絶されると。婚約者ですよ?言っては何ですが偶に可笑しいことはありますがお嬢様は勉強にマナーにおいてすべて完璧にこなしておりました。僕から見てもお似合いの二人だったのです。しかし頑なに言い募る姿は何処か鬼気迫るものがあり僕は半信半疑になりながらも言われるまま必要とされるものを用意しました


 そしてあの運命の日

 お嬢様の言ったことは本当でした。ざわつくホールへと慌てて駆け寄ればお嬢様を囲うようにして王太子を中心に顔の知った人物達が何か言っていました。

 この状況で不敵に笑っていたお嬢様に僕は後悔しました。これは着いて行っては僕はきっと苦労しか見えないと思ったからです。そしてそれは当たりました


 転移術で飛んだ先はまさかの魔王軍に滅ぼされた廃墟。なぜか一軒だけ無事でどうやらそこが僕たちの家とのこと。一体いつからお嬢様はこのことを知り用意していたのか



 お嬢様は僕が必要だと言って下さったけど、畑をつくるのよー!と言っているのを聞いてこの為だったのかとストンと腑に落ちました。別に傷ついてませんよ?

 オークを家に居れた時はこの世の終わりだと思いました。後日、さらに魔王の登場…気づけば僕はベッドで寝ていました。


「チップはほんと働き者だな、人間って皆こんなに働くのか?」


 隣で小石を拾いながら不思議そうに問うのはオークのダッド。オークなんてと初め思いましたが一緒に畑を肥してくれたりウッドデッキを作ったりとダッドのほうが働き者なんじゃ…と言うと、自分はこれも仕事とよく分からない答えが。まぁいいか

 何しろお嬢様のご飯は美味しいし嫌味を言う奴も居ない、好きな庭(畑?)も弄れて何だかんだ言って僕はこの生活に満足していた




 ある日お嬢様が帰らなくなるまでは



 あの日外に出ると隣に禍々しい城が出来ていました。そう昨日までは無かった城が。

 どう考えても例の魔王としか考えれなかった。怖い

 お嬢様は勇敢にも隣へと行くという、僕は怖くて動けなかった。あの禍々しいオーラにお嬢様は気付かない…?とてもじゃないけど自宅の敷地から出れるようなものじゃない。僕のような魔力の少ない人間は城へと入ったら気絶してしまう。ごめんなさい、お嬢様


 一日、二日…と日が過ぎてもお嬢様は帰らなかった。お腹も空いてたけどお嬢様が気になって僕は出来る限り外で待った。

 ある時お嬢様が二人になって僕の周りに居た。お嬢様が帰ってきた!と僕は嬉しくなって家へと戻るも食事を出してくれないお嬢様にあれ?と思ったのは覚えてる



「お目覚めになられましたか?」


 次に目が覚めたらとても綺麗な女性がベッドの横に立っていました。お腹の空いていた僕にパン粥を作ってくれて手ずから食べさせてくれたのは、リアさんという。

 パン粥が美味しいのか嬉しいのか分からないけど僕は泣いてしまって、そうしたら一階からダッドも来てくれてあれからのことを教えてくれました


「そうかぁ…お嬢様、帰って来ないんですね」


 何となく途中で薄々と感じてた予感。言葉に出るととても寂しい気持ちが胸に広がりました。リアさんがそっと掌に手を重ねてくれました


「チップさんの身の回りの世話を、と頼まれました。これからは私がお傍に居ても良いでっしょうか?」

「そんな…、僕なんかに悪いです。リアさん」

「いいえ、チップさんのような優しい方にお仕えできてリアは嬉しいです」


 リアさん……。

 栗毛色の髪を後ろで一括りにし、瞳はグリーン、色素の薄い肌は年中日焼けしている僕とは大違い。こんな僕で良いのだろうか


「お前は気にしすぎなんだ、ありがとって言っとけばいいって」

「ダッドさん…、そ、そうですかね。リアさんありがとうございます」


 明るく笑うダッドに押されるようにリアさんに礼を言うと静かに頷いてくれた。お嬢様もきっとたまには帰ってくるだろうから、畑に家にいつでも大丈夫なように僕がしないと!

 そう思うと力が漲ってきたのでした

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