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自分の気持ち


「ふぁ…、朝だわ」


 結局昨夜は魔王と一度も会わずに寝てしまった。今日こそ家のことが知りたいから会いたいけれど、あの時以来会ってないからどんな顔で会えば良いか分からない

 それでも会わないとい選択肢は無い


 今日は黒に深紅のルビーが散りばめられたマーメイドドレスだった。相変わらずサイズがぴったりすぎて怖い。深紅のピアスも今日はつけられてしまった。段々と豪華になってる気がするのは私だけかしら…。ネリサに髪型を結ってもらい軽く化粧をする。鏡に写った自分を見るのは好きじゃない。釣り目がちな瞳に冷笑を浮かべると言われる薄い唇。可愛いとは懸け離れた容貌は嫌でもあの誰にでも愛されていたピンクの髪の主人公を思い出してしまう。

 前世の記憶が戻って何もしなかったわけじゃない、何度回避しようとしても私の所為にされていつしか回避することを諦めた。その代わり最後の最後で掛けに出て、今の私がある。誰にも愛されないなら一人で生きていくことを決めた筈なのに…


 魔王ルートに入ってるなんて……


 爽やかな日差しが窓から差し込む中、黒ドレスを着て項垂れてしまう。人生何があるか分からない。溜息をひとつ着くと胸元に手を当て


「ルーク様…」


 一言呟けば背後からの腕に抱き留められて、身体が傾く。髪へと触れる魔王の頬に、近い距離への羞恥で頬が染まる

 今日はいらしゃった…


「おはよう、ございます。ルーク様」

「うむ。朝から呼ばれるとは僥倖なことだ」


 スリ、と頭を頬で撫ぜられる。そういうところ…っ、かぁっと赤くなりながらも見上げれば笑みを浮かべた魔王の顔、思わず見つめてしまう

 ああ、やっぱり推しの顔尊すぎる……。見れば見る程前世の記憶からの推しへの愛が蘇る。


 じっと見ていた私に何を思ったか、軽く瞳を広げると魔王が軽く口付けをする


「…っ!!」


 またされたぁ…!

 バッと口元に手を当てると、魔王は面白げに微笑を浮かべ


「ん?違ったか?」

「…っ、違います…!も、もう」

「では何を見てたんだ?」

「何って、ルーク様の顔が…良いなと、と思って」


 推しの顔面最強…って。本人目の前に言うことじゃなくてっ?何言ってるの私。思わず出てしまった言葉にあわあわと慌てるも目前の当人は方眉を上げこちらを見てくる


「ふむ。つまりスカーレットはこの顔が好きだと」

「えっ!?いや…、はい、そ、そうなり、ます…?」


 再確認されてしまった!確かにそうなんだけど、本人に言われるととても恥ずかしいのですが…!


「我が好きだということか」


 また何か言ってる…!これ以上何て答えていいのか分からず黙ってる私に魔王はひとり気を良くしたように笑顔を見せて、腕の中の私の向きを変えてお互いが向き合う形を取る

 何度目かの腕の中で大分慣れてきたとは言え美形すぎる魔王にドキドキが止まらない


「スカーレット、俺が好きか?」

「……はい」


 好きか嫌いか聞かれたら好きに決まってる。言葉に表すと好き、が推しへの愛から実現している魔王への好きに変換される。手の届かない推しだった筈なのに今ここに目の前にいる

 魔王の頬へと手をそっと差し出せば、私の手を掴んだ魔王が頬へと導いてくれる。少しひんやりとした体温に実現していることを実感する


「…好き、です。ルーク様」


 そっと背中へと腕を伸ばして抱きしめ返す。ああああ、言ってしまった。取返しつかない言葉だと分かってながらも返してしまった。魔王の反応が怖くて胸元に顔埋めて隠す。何かすぐに言われるかと思ったが魔王は何も言わず抱き返すのみで、余計に動けなくなってしまった

 

 前世の推しを好きになってしまいました







「朝食にするとしよう、スカーレット」


 どれくらい抱きしめ合っていただろう。ふいに頭上からの声におずおずと顔を上げる。そういえば朝起きてからまだ何も食べてなかった。お腹も空いていたので、こくりと頷く。

 玉座につくと何時ものように膝の上で朝食を頂く。好きと言ってしまったからか昨日までの逃げたい気持ちは薄れていた。ちぎったパンを口元へと運ばれ赤くなりながらも啄むように小さく唇で受け取る


「美味しいですわ」


 にこり、と魔王へと笑みを浮かべれば魔王も嬉し気に笑みを返す。え、これって両想い?いやいやいや、気に入ったと言ってたからペット的な存在よね。ハムスターを飼う、的な。でも普通ペットに口付けはおかしいよね…?うーんうーん、と考え込む間も魔王からの食事は止まらない。掬ったスープを飲めば今日はパンプキンスープだと気付いた


「ルーク様、隣は今どうなってますか?」

「まだ気にするのか」

「それは…隣へはダッドが行っていますの?」


 オーク達が行ってくれててもチップの食生活がすごく気になるのだ。まして人間の食べ物を用意してくれているとは考えれない。マジックバッグも私の魔力登録してあるから取り出せない筈。気になりだしたら更に心配になった。待って、魔王城に来てから何日になる…?


「ああ、魔駝鳥がついているから安心しろ」

「一番安心できなかったー!」


 ああ、あの鳥ー…。


「あ、あの、ルーク様?あの鳥の言葉は人間には分かりません。きっとお腹も空かせてますわ。お願い少しだけ帰らせてください」


 チップごめんなさい、自分のことでいっぱいだったの。まさかダッドではなく鳥が傍にいるなんて…むしろ余計衰弱してるんじゃないかしらっ

 魔王の袖を少しだけ引っ張りながら上目遣いでお願いする


「…っ、……すぐに戻るからな」

「…っ!ありがとうございますルーク様!」


 ぱぁっと顔を上げて礼を言うと口元を抑えてる魔王。嬉しい、何日ぶりかの家!そうと決まれば早く食べてしまいましょうっ


「ルーク様」


 クイクイと袖を引いて口を小さく開ける。行儀が悪いかもしれないけれど魔王しかいないので気にしない。早くご飯をくださいな


「っ!」


 ガタッ、と椅子から魔王の身体が揺れる。思わず抱き着いてしまいましたがフォークが口元にくるとモグモグと頂く。普段よりもスピードアップで朝食を頂き、主に私が催促して。食べ終えたのでした


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