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二人のメイド

 私スカーレットは今後の計画を大幅に変更しなければならない。初めの計画だった飲食店は人外しか居ない為まずは休業。チップに田畑をさせてのスローライフも魔王城へ来てしまった結果無くなった。では魔王城で何をする?アイスクリームを作ってみたけれど魔王は今は不在。やることがなくなってしまった…。


「暇だわ…。ねぇ、外へ出ても良いかしら?」


 扉近くで待機しているメイドへと声をかければ、こちらを向きニコリと笑みを向けられる

 

「もちろん主様の許可が下りれば、可能ですわ」

「そうですわ」


 二人のメイドは有無を言わせず

 分かってたけど、することがないんだもの。


「ねぇ、二人とも人間なの?マシューさんも」


 気になっていたことを聞いてみる。魔王みたいに角がない二人はメイド服を完璧に着こなしている。ムシューさんに至っては執事長で魔物には全く見えない

 二人は顔を見合わせると可愛らしい高い声で笑い合った


「あははっ、人間?人間なわけないじゃないですか」

「あははっ、私達?気になりますか?」


 クスクスと笑って一人はツインテールの髪の毛を両手で上げる。もう一人はスカートを少しまくりあげ背後を見せた。…耳と尻尾っ!尖った耳に黒い尻尾が魔族の象徴だと知らしめる。驚いた顔に楽し気に二人揃って笑う顔はまさに魔族だった


「あ、怖がらないで下さい~。スカーレット様専属に選ばれたエリートなんです私達」

「そうなんですよう~。やっと就けた就職先なんです~」


 何も言わない私に慌てだす二人。専属?就職先…?どうやら此方を害する気はないようだ。そもそも3日間、彼女たちはメイドとして完璧に仕えてくれていた


「私達はスカーレット様の為に尽くすのが仕事なんです~」

「話したのは内緒にしてくれますか~?」


 つまり滞在中の私専用メイドとして雇われた魔族、ということで良いのかしら。魔物にも雇用関係があるのかと驚いたけれど二人を見るに今の就職先、魔王城は好待遇のようだ。もしかしてマシューも魔王に雇われてるのかしら


「マシューさんも魔王に雇われてるの?」

「マシュー様ですか?う~ん、私達が生まれた時には既に居ましたから…」

「あ、あと私達はマシュー様に雇って頂いてますの~」


 マシューが雇い主?魔王からの指示だろうけど余程マシューは魔王の信頼を得ているようだ。二人は話し終えると人差し指を立てて、内緒とばかりにウインクをした。情報開示も禁止されているかもしれない。彼女達の様子にクスッと小さく笑い


「ありがとう。良かったら食べる?試作品だけど」


 残っているアイスクリームのボウルを指さすと彼女達の瞳がきらりと光るのを見た






「美味しい~~~!!何のこれ!?」

「甘~い!冷たい~、とろけます~~!」


 初めの発言がネリサ、次がサリサ。あの後二人は皿とスプーンを持参しアイスクリームを食べでの発言だ。あれから話してみたら二人は姉妹とのこと。かき氷を食べる私と魔王のことがずっと気になっていたらしい


「喜んでもらえて良かったわ。まだ沢山あるから…」


「おかわりします~!」

「いくらでも食べれます~!!」


 わーい、とはしゃぐ二人にメイド?と思うがこれが地なんだろう。いつもの無言を貫いていた時より好感が持てる。可愛らしいなと思いながらアイスクリームのおかわりを皿へと盛り付ける


「あま~い!」

「美味しいです~!」


「いい加減にしなさい」


「っ!!」

「っ!!」


 ムシューの登場に二人尻尾が逆立ち立ち上がる。見えてるよ尻尾…。ギギギと固い動きで二人はムシューへと振り返る。顔面は蒼白だ


「貴方達クビになりたいのですか?」

「そ、そそそんなことっ」

「仕事してますっ」


 ムシューは白髭を弄りながら冷たい視線を二人に送る。二人はアイスを置いて立ち上がり両手でお互いを抱きしめ合いながら首を横に何度も振る。ああ、尻尾が今度は垂れてる…。怯えてるよ可哀そうに、って思うのはおかしくないよね。別段彼女たちは悪いことはしていない


「ムシューさん、怒らないで下さいませんか?私が試食を頼みましたの…」


 ごめんなさい、と両手を添えてムシューを見れば、ハァと溜息をつかれた


「それが一番の問題なのですが」

「駄目でした…?」


 よく分からないものを食べさせたのが悪かったのかしら。ムシューは分かってないとばかりに小首を振り、残っているアイスクリームのボウルを手にした


「こちらは私がお預かりしても?」

「あ、はい。まだ試作品ですが」

「結構です。これからも何か作るのであれば、あれらに渡す前に私に言って下さい」

「分かりました…」


 有無を言わせず、頷いた私に一礼を取るとムシューはアイスクリームを持って扉の向こうへと去って行った


「怖かったです~っ」

「本当~っ!スカーレット様ありがとうございます~!」


 二人が抱きしめ合って私に礼を言う姿に、大丈夫よと伝えるしかなかった。魔王といいムシューという上の魔物は良く分からない、ということだけは理解した


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