カイガ街に到着!魔物コワイ!
お久しぶりです。ここから一気に書き直しましたので短いですがどうぞお付き合い下さい
「あ、」
向かいに座る人物に居心地の悪さを感じながら馬車の揺れに身を任せていた
ふと思い出して言葉が出た
「なんだ?」
「果物を頂きまして有難うございました」
「ああ、大したことない」
「いえ! この辺りでは手に入らない果物まであって…嬉しかったです」
以前貰った果物は本当に色んな種類があった。一部は見たこともないものもあった為マジックバッグに収納してある
「そうか。また欲しくなれば言うがよい」
「いえいえっ、そんな悪いので…!」
首をブンブンと横に振る。魔王に強請るとか怖すぎるよ!
「しかし先日のカキゴーリとやらは美味であったな、人間は皆あれを食べているのか?」
「い、いえ。私が考案しました。暑い時期にはぴったりと思い」
本当は前世の知識だけど
「そうか、他にはあのような冷たい甘味はあったりするのか?」
「冷たい甘味ですか…そうですね、アイスクリーム?とか?」
冷たいと言われて一番に思い浮かべるのがアイスクリームだと思う。たしか前世の記憶でも牛の乳と砂糖、卵で出来たはず。これは作ったことがなかったから知識しかないので曖昧だけど
この世界では甘味は焼菓子が主流となっており冷たい甘味は今迄無かった。もしかして魔王領でも同じなのかな
「あいす、くりむ?とは」
「えーっと、牛の乳を冷やしいて作る甘味です。砂糖と鶏の卵など材料が必要なので私は作ったことがありませんが、かき氷よりもとても甘いんですよ」
適当に答えて作れと言われても困るのではっきりと作れない宣言しておく。うん、これ大事。
「それは更に美味なのか?」
「そうですね、私は好きです」
「ほう、食べたことがある言い方だな」
目線を合わせ微笑した魔王にしまった!と思ったがもう遅い。あははと乾いた笑いを浮かべてやり過ごす。好きだなんて、食べたことありますって言ってるもんだよ私のバカー。
会話が少し弾んだなと思い、少し焦りもありつつ暫く経つと馬車の揺れが止まる
「着いたようだな」
魔王の言葉に連動したように扉が開かれた
「魔王様、到着致しました」
「ああご苦労」
魔王の返事に御者をしていた白髪の人物が頭を下げる。緊張したけど着いて良かった…
続いて出るとタツキが駆け寄ってきた
「スカーレット大丈夫だったか!?」
「ええ大丈夫よ。かなり疲れたけどね」
横目で魔王を見ながら苦笑する。タツキは心配そうに私を上から下まで見てから両手を頭の後ろで組んで屈託ない笑顔で頷く
「まぁ結果オーライってか。おかげで早く着いたしなっ。で、こいつ誰?」
タツキが顎を上げて魔王に視線を向けた次の瞬間、タツキの首筋に一筋の血が伝う
えっ
「よせ」
魔王の一言でようやく理解する。
タツキの斜め背後から御者が首筋に鋭く尖った爪をピタリと宛がっていた
「殺しても良いでしょうか」
まるで殺気が無かった。日常会話のように口にする御者に背筋が凍る。瞳の色が瞳孔と反転していた。やややっぱり魔物!
しかも悪い魔物っていうか普通の魔物ー!
どうしようとオロオロする私の隣で溜息をついた魔王が肩に手を乗せた
「よせ、と言っている。スカーレットが怯えることは許さぬ」
「……申し訳ございません」
静かに告げる声に一間空いて長く鋭かった爪が元に戻っていきタツキから下げられた。一糸乱れぬ恰好でスッと背筋を伸ばすと此方へと向き頭を下げる
下げられた頭を見ても先程のやり取りに私は固まっていた
「スカーレット、すまぬ。怖がらせたな」
「……い、いえ」
肩を引き寄せられ低い声に魔王へと視線を向ければ、御者とは違い穏やかな瞳が私を写していた。右肩から伝わる温度に少しずつ現実に戻ってくる
「だ、大丈夫です、わ。怖くありませんもの」
言葉に出して強く何度も頷く。怖いけど、言っては駄目だと思ったから
「フ、そうか」
頭上から優し気な口調をかけられ返答に困る。ていうか肩抱かれてる…?
「お前はそいつを介抱してやれ。俺は先に街へ入ってるから後から来い」
「えっ!?」
「かしこまりました」
肩を抱いたまま歩を始めた魔王に引かれるように私も歩くことに
魔王の言葉にタツキを見ると御者が片手に支えている。驚いて顔を見ると白目を向き、尾は足の間に丸まって入っていた
気絶してる!?
「タ、タツキの用事が…っ」
「気にするな。何あと数刻もすれば目が覚めるさ」
「で、でもっ」
ずんずん歩いていく魔王に連れられて振り返り見ている間に門まで来てしまった
「魔王様! えっと、あ! 角…!?」
どうしようと門を見て傍と気付く。魔王って街に入れるの!?
慌てて見上げればニヤリと笑う魔王…角がない!
「人間に化けれないとでも?」
驚き見上げたままの私に楽し気に笑った魔王は角が消え漆黒だった髪がシルバープラチナへと変わっていた




