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オークの食材探し

 あれからオーク達は毎日やって来た

 そう、毎日


「ねぇ、貴方達って暇なの?」


 庭先のウッドデッキにパラソル傘の日陰の元、かき氷を頬張りながら横目で問いかける


「はっはっは! オークだからな! さて今日は何やればいいだ?」


 きらりと光る牙を見せつけ笑うダッド。ダッドとはオーク父のことだ。毎日来るからいい加減名前も覚えたし敬語も取れた


「何もしなくていいんだけど…ていうか来なくていい」

「え、それじゃご飯もかき氷も食べれないよ~!」


 一緒になってかき氷を食べながら私へと文句を言うのはロク。3回目ぐらいから何となく気づいてたけど聞いたら駄目なやつと思って黙ってた。畑が完成した後はもう来なくて良いとオブラートに包みまくって言ったのだが彼らは日参した

 オーク親子は手伝うイコール食べ物、の図式が出来上がっているようで毎日何かしら仕事を要求してきた。このウッドデッキも二日前に完成したものだ。昨日はこのパラソル付きガーデンテーブルとチェアを作り上げた


「えぇ…、そうねぇ…」


 特にないけれど何か言うまで絶対帰らないぞと無言の圧を感じる。チップへと目をやれば此方に気づくとブンブンと頭を横に振って両手を交差させる。実は一番の被害者はチップだったりする。

 オーク達はあくまで手伝い、をしに来たらしく。必ず無理矢理チップを引っ張っていく。ここ一週間程雲一つない炎天下にて延々とDIYをさせられた彼は既に力無くふらふらしている


「んー、食材が減ってきてるから二人で何か採ってきてくれない?」

「おお! それは気づかなくて悪かった。分かった俺達に任せろ」

「父ちゃんと僕も手伝って沢山もってくるよっ」


 食材探しなら二人どこかでやってくれるだろう。毎日食べていく分予定していたよりも食材の減りが早いから自分達で補完してほしいところ。私が二人、と強調したことで意図が伝わったのだろう。チップが安堵した表情になった


「ええお願いね。チップはたまには休んでいいわよ」

「ありがとうございますお嬢様、お言葉に甘え、ぐえっ」

「よしチップ行くぞ!」

「キェー!」


 力強い掛け声と共に首根っこを掴まれたチップが引きずられていく。上空で見ていたのであろう、鳥がチップの頭に乗る。ロクが腕を組み親子笑顔で喋りながら小さくなっていくのを眺める私。今日もいい天気ね

 せめてチップの好きな料理を用意して待っていてようと思った







「ねぇ、これ何なの?」


 小一時間昼寝をし食事の用意が終わった頃に彼らは帰ってきた。玄関を出るとダットは両肩でチップともうひとりを抱えていた。隣のロクは引きずってきたのであろう背後に血の跡を残して鱗毒蛾の幼虫を持っていた。鳥は尾が二股に避けた蛇を振り回しながら飛んでいる。血の雨が酷い


「すぐそこの森で捕ってきたぞ」

「この辺り全然荒らされてないのなー、まだあっちに捕ったのあるよ」

「キエッキエ!」


 ロクの指先の家から出た先を見やれば黒々した背丈程の小山が出来ていた。何あれ…ゾクリ、と鳥肌が立った。鳥よ叫ばないで! 血が降るわ!


「私は食材を採ってきてとお願いしたんだけど」

「捕ってきたよ」


 何言ってるんだと自分の物を突き出すロク。青と赤の斑模様の幼虫の死骸がこちらを見てる。死んだ魚と同じ目…


「ロック・アイス!」


 氷魔法でガチガチに四角に固める


「あっぶない! も~姉ちゃん凍らせるなら先言ってよ」


 瞬時に手を放し難を逃れたロクに言われるも見せるほうが悪いので知りません。幼虫はクリスタルレジンみたいなって地面に落ちた。氷だから溶けるけどね


「で、チップともう一人は…まさか食材と言わないわよね?」

「あー、チップはそこの二股の蛇を見て気絶しちまった。で、こっちは怪我してたからとりあえず拾ってきた」

「拾ってきたって…」

「こいつゴブリンに攻撃されてたから一応拾ってきた」


 扉からずれて中へとダッドを促す。続いて入ろうとしたロクの前に立ち


「手を手足しっかり洗ってから入ること! あとあの山は何か説明して」

「ええ~っ分かったよう。あっちのはこの芋虫とサンドワームの子供が数匹、は僕が捕ったやつ! 父ちゃんがゴブリンとキラービーの巣持ち帰ってきたよ」

「食材とか言わないよね?」

「え、食材でしょ?」


 とぼけたセリフに頭が痛くなりそう。そうよオークだったわ、毎日見てるからすっかり忘れてた

 手を洗い綺麗になったことを確認して部屋へ入れる。続いて入ろうとした鳥の前で扉を閉めた


「悪いけどチップを部屋まで運んでくれる?」

「兄ちゃん、何もする間もなく気絶だったよ」

「そう。それでこちらの人は…獣人ね」


 外で鳥の鳴き声が聞こえるが無視してチップをダッドに頼む。簡易ベッドへと下ろされたもうひとりを見る。かすり傷や服の汚れなどを見て魔物か何かと戦った後のようだった。背丈は私と同じくらい、薄茶色の緩く巻いた髪そして頭の上に三角の茶色の耳が二つ。長細いしっぽもある。猫系の獣人だろう


「ひとまず二人テーブルに食事があるから食べちゃって」

「わーい、やったー」

「お、今日はシチューか。やるねぇ」


 戻ってきたオーク親子に食事を促し、食べ始める親子の声を背後にこの猫獣人を観察する。うーん、見た目だけの傷ならロクの時と同じように応急処置だけでいいかしら。汚れを洗い流して傷口を観察する。かすり傷や内出血をしている部分が数カ所、あとはゴブリンの爪にやられたのであろう引っかき傷が服を引き裂いて二の腕まで到達していた

 応急処置だけでいいだろう。というもポーションなんてものは持ってなかったりする。だってスローライフに必要ないもの。誰が初っ端から魔物と知り合いこんなことになるとは想像できようか。食糧も当てに全くならなかったし一度街へ買い出しに行く必要があるかもしれない

 処置をしながら考えていると猫獣人が身を動かした


「……んっ、こ、ここは…?」

「気が付いた? 安心してここは私の家よ」

「っ! あんたが助けてくれたのか?…っつ」

「応急処置だけさせて貰ったけど気をつけて」


 耳がぴくぴくっと揺れて瞼が開かれ私を見つけると戸惑う声音で問いかけられた

 瞳孔が縦に細く綺麗なイエローアイに少し低めな声、私より年下の男の子のようだった。傷を忘れていたのだろう上半身を起した時に痛みに気づいたように身体が揺れた


「もう駄目かと思った、オレ後ろからゴブリンにやられてさ」

「私はスカーレット。怪我を処置したのは私だけど」


 ちら、と横目で満面の笑みで食事を頬張るオーク達を見やる。私の視線に気づき同じように食卓へと猫獣人も視線を動かし


「オ、オーク!?」


 驚きの声に続きシャー!!と叫ぶ。あああオーク、また忘れてた。ゴブリンよりも上位種だったわ彼ら…。

 フーフー唸る彼に視線を戻すと尻尾が膨れ立ち上がっていた


「あのね大丈夫だから。いいオークなの」


 いいオークって何だろう。自分に心の中でツッコむ


「それに助けたのは彼らよ。証拠にゴブリンの死体が外にあるわ」


 彼らにとっては食材だけどね…


「いいオークって何だよ、あんた騙されてるよ!」

「まぁオークなんだけどね、うーんと…」


 目を見開いてウーウー唸っている音に気付きダッドがやってきた


「お、目覚めたのか。大丈夫だったか?」

「フギャー!」


 ひょいっと巨体を屈めて猫獣人を上から見下ろしたダッドに、全身を逆撫で耳がぺたんと伏せてしまうも威嚇する獣人

 か、かわいいかも。日本の実家で飼っていた猫を思い出す。そうそう動くお掃除ロボットにこんな状態だったっけ


「ダッド、怖がってるからあっちいってて」

「あっちって、分かったよ。坊主、取って食ったりしねぇから安心しな」

「フー!カッ!」


 最後の一言余分っ。更に怯えちゃったじゃないの

 離れていくダッドを凝視している姿もかわいいけれど哀れだわ。コップに水を出して彼にそっと差し出す


「取り合えず落ち着いて。彼はダッドよ姿はオークだけど…」

「フー…ッ、…う、水」


 言葉が続かない。うん、とりあえず落ち着いてもらう

 水を受け取りコクコクと喉を鳴らすと幾分か落ち着いたのか膨らんでいた尻尾が下がる。耳を緩やかに立ち上がる頃私へとかを向け


「オレ、タツキ。何なんだアレ…」

「うーん、話すと長くなるけれど」



 まずはタツキを落ち着かせる為、ここに来たからのことを説明する羽目になるのであった

 早くシチュー食べたい…

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