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婚約破棄は避けられない?



「スカーレット・スワン・フォルツナー! 貴様との婚約を破棄する!!」



 よく通る美声に突き付けられた指先。ざわついていた先程までと打って変わりしんと静まり返った会場。

周りの姿勢が二人へと集まる中、美声の持ち主はさらに続ける。



「今までの悪行、知らぬとは言わさないぞ」

「………ジョニー様」


 キっと睨みつける王子の背後に守られるように佇む人物を見て、やっぱりかとため息が出た。

うるうるした瞳に桃色のふわふわした巻き毛。淡いミモザのようなふんわりとしたドレスがとても似合ってい る。王子の後ろでこちらを伺う姿は何とも庇護欲をそそるだろう。


「何だそのため息は!だからお前が嫌だったんだ!」

「ジョニー殿下、今は卒業パーティーの場です。言うなれば本日より貴方様の言動は子供の戯言では済まされないということ。分かっていての言葉でしょうか? ちなみに今の発言は国の決定ということですの?」


 口元を扇子で隠しながら務めて冷静さを保つようにバカ王子へ告げる。あーあ、やっぱりこうなったかと思いながらもこの先のことを古い記憶から思いだしつつ、左手を後ろへ回し合図を送る。


「あ、当たり前だっ! それにこのリボンちゃんを虐めてるのだって知ってるんだからな!」


 リボンちゃんって。王子、公共の場でその呼び方はNGですよ。あ、さらにリボンちゃんの瞳がうるうるしてる。チワワかな。

 静まり返った会場には父であるこの国の宰相と国王も居ることを忘れてるいるんだろうか。あ、父の額に筋が……。これは長引くと色々とまずい、本当にシナリオ通りになってしまう。



「殿下、そちらのリボンチャンとはどなたでしょう?」

「なっ!知らぬとは言わせぬぞ!貴様が虐めてた相手だろう!平民だからと寮への出入りを禁止したことは分かっている!」

「殿下への差し入れを氷魔法で氷漬けに」

「図書館にて読書中の本をとりあげノートを破くなんて!」

「俺の愛馬の足元を氷で動けなくしたのも貴殿の仕業だろう」


 従者のジョルジュがスッとリボンちゃんの前に守り出た。円になった観客から一歩前に出て司書が叫ぶ。近衛団長の息子が柄に手をかけ前に出る。

 あー、こいつらも攻略対象だったかぁ。もうそろそろ時間がないかも。扇子で口元を隠しながらもひたりと蟀谷に汗が滲む。間違えることはできない。あくまでも毅然とした態度で悟られてはいけない。


「この国の王子として貴族だからと好き勝手する貴様とは」

「お、おおおおお嬢様~!!」


 間に合った!


「誰だ貴様!」

「はわわ~っ! お嬢様ぁ、ほ、本当にやるんですかぁ!?」


 観衆を押し分け中央へと入ってきた人物へと一斉に視線が向く中、小さくガッツポーズをしてしまう。


「もちろんよ! この為に3年間頑張ってきたんだから!」

「うう、僕抜け…」

「いまさらよ!!」


 大きな風呂敷を抱えやってきた、への字眉に往生際の悪いこの男はチップ・デルデー。きっぱり言い切る私と対照的に周りの目が痛いのがオドオドしてる。一応男爵家の五男なんだからリボンちゃんより上なのに。


「スカーレット! どういことだ!? こいつは誰だ!?」


「お答えする義務もありませんし、わたくし婚約破棄されたということで決まりで宜しくて?」



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