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以心伝心

作者: 結城新一

恋の始まりも、終わりも………




新学期から僕の電車通学が始まった。


毎朝、ほぼ同じ時間帯の同じ車両の同じ場所に乗り込む。


そんな数日が過ぎたある日の朝の電車の中で、


同じ学校の制服を着た可愛らしい女の子を見かけた。


次の日も、その次の日も見かけた。


僕がじっと彼女の顔を眺めていると不意に目が合う。


彼女が僕を見て微笑んだ。


僕は顔が赤くなったような気がして、恥ずかしくて下を向いてしまった。


ゆっくりと顔上げた僕の目と彼女の目は再び合った。


今度は彼女が頬を染めて下を向いてしまった。



以前、母から


「あのね、人はね、相手のことをいい人だなぁって快く思い続けているとね、相手


も自分のことを同じように快く思っているのものよ…」


そんなことを思い出した僕は次の日の朝、勇気を出して彼女に声を掛けた。


「ぉお、おはよう」


「あっ、はいっ、おはようございます」


「あの…今日の帰り、一緒に…帰らない?」


「ぅん、うん、いいよ」




その日から僕たちの青春の日々…恋が始まった。


登下校は一緒、土日もデート、マジで天国のような日々が続いた。


食事をしたり映画を観たりと楽しい、本当に楽しい日々。



そうしたある日のこと、約束の時間に遅れてきた彼女に僕は


「なんで遅れたんだヨォ」と言ってしまった。


彼女は少しムッとしていた様子だった。


「アタシだって…女の子には色々あるのよ」と少し不機嫌になったようだった。


しかし、僕は彼女の不機嫌な様子をなんとも思わず、


彼女の気持ちなんかは、微塵も気しなかった。


気にもならなかった。


それから僕は少しずつ、少しずつ彼女の態度、言葉、雰囲気にイラつくようになっていった。


彼女も少しずつ、少しずつ僕に口答えをするように生意気な態度をとるようになっていった。


少しずつ、少しずつ彼女の事を快く思わなくなっていた。


なんか…憎たらしく思うことも…


そして遂に僕たちは些細なことで喧嘩になり、お互いに売り言葉に買い言葉の応酬となった。


そして、なんともアッサリと、いとも簡単に僕と彼女の交際に終わりが、最後の日が来てしまった。




僕はあの時の、母の言葉の後半の部分を…続きを思い出した。


「…でもね、相手のこと心憎く思っていると、相手も自分ことを心憎く思っているってことなの


よ。忘れないでね。気をつけるのよ」


そう、後半を言葉を僕は今、たった今、思い出した。


「以心伝心か〜、ほんの少しだけ気をつけていればなぁ、彼女の気持ちを考えていればなぁ」


と彼女との出会った時の気持ちを思い出し、ひどく後悔している僕なのである。










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