凄く美味しいね
しかし真奈美よ、大きさにバラツキがあり過ぎるのではないか?とは思うのだが、これも個性だ。
大きく切られた野菜に合わせて煮込めば問題ないだろう。
初めに豚肉を炒めた後取り分け、豚肉から出た油で玉ねぎを炒めた後、取り分けた豚肉と根菜を入れて行く。
コトコト、コトコトと煮て行き、見た感じ一番大きなジャガイモとニンジンに竹串を刺して火が通っている事を確認したらカレーのルーと粉状に乾燥されたカレーの素をブレンドして入れた後、隠し味にコーヒーとリンゴジュースとパイナップルジュースに唐辛子パウダーを入れて更に煮込んで完成である。
そして白ごはんの上に出来たばかりのルーをかけ、更に真奈美のカレーには蜂蜜をかけてあげて完成だ。
そして家族三人で頂きますをして食べ始めるのだが、何故か一目散に食べるであろうと思っていた真奈美のスプーンは動いておらず、そしてじっと私を見て来る。
「どうしたの?」
「おかあさん、すきってどういうきもち?」
そして私は真奈美の言葉により気付かされる。
あぁ、そうだ。
そうだったのだ。
私は、高城に初めて告白をされたその時、その瞬間高城の事が異性として好きになっていたのだ。
普段意識すらしていなかった異性だったからこそ、自分のその感情にすら気付かなかったのであろう。
そして私は今も高城の事が好きで、だからこそ高城にだけは嫌われたくなくて、無意識のうちにああいう卑怯な手段を使ったのだ。
いや、私は高城の事を好きだったのだ。
それと同時に私は元夫である和哉さんの事を今もまだ確かに愛しているのだ。
そんな簡単な事にすら私は気付いてすらしなかった。
ただ今までの私は汚くて醜い気持ちであると蓋をして目を背けて来た。
また周りに迷惑をかけるんじゃないかと人を愛する事が恐怖ですらあった。
小太りマダムの藤本さんや達也君パパさんである竹中さんにも、私は無意識に距離を取っていた事にも気付かされる。
「そうだね………友達とは違う好きって気持ちかなぁ。その内真奈美も分かる様になるよ」
そんな真奈美の頭を撫でながら元夫である和哉さんが私の代わりにこたえてくれる。
私には答えづらい質問だからと察して、代わりに答えてくれたのかもしれない。
「まま?かれーたべないの?おいしいよ?」
そしていつに間にか今度は私のスプーンが止まっていた様で真奈美に指摘される。
「うん、うん、凄く美味しいね」
この日食べたカレーは、野菜の大きさは滅茶苦茶だし店で出されるカレーの様にそこまで拘っているものでもない、一般的な家庭のカレーであったのだが、和哉さんと真奈美で食べるカレーは人生で一番美味しいカレーだった事は間違いがない。
他人にとっては何の変哲も無い普通の味がこんなにも美味しくて、そして尊い物なのだと私は知る事ができたのだ。




