私は決心する
それに万が一相手が示談を申し込んできたとしても、いくらお金をつぎ込まれたとて絶対に訴えるつもりであった為、私からすれば示談どうこうではなくただ地雷社員の罪が重くなるだけという感覚である。
元夫には最早頭が上がらないし足を向けて眠れない。
そして、今回の事件の話が終わると急に静かになり気まずい空間が出来上がる。
「ままぁーーっ!!」
それでも何とか会話を続けようと父も母も私も絞り出す様に当たり障りのない事を、それこそ天気の話等をぽつぽつと会話を続けていると病室の扉が開き、真奈美がベッドで横になる私の元へ元夫と手を繋ぎ、元夫を引っ張るようにしてやってくるではないか。
「ままっ、ままっ、いたいいたい?いたいいたい?」
「もう大丈夫だよーっ」
突然の真奈美と元夫登場にびっくりするも、まずは心配させたであろう真奈美を安心させる為にママは大丈夫
「すまん。病院からかかってきた電話を真奈美に聞かれたらしく、ママに合わせろと聞かないもんで北側のご両親と一緒に来てたんだ。いままで真奈美を車で寝かしてたんだけど起きた瞬間ママの所に行くって聞かなくてな」
「そ、そうなんだ」
そして私はまた周りの皆に多大な迷惑をかけてしまったという罪悪感で潰れてしまいそうになる。
「ごめんなさい。私のせいでまた皆に迷惑を────」
「何でお前が謝るんだ?今回の件はどう考えてもお前は被害者で迷惑をかけられた側だろう。謝る必要は無い」
「で、でも………」
「でもも案山子も無い。お前は被害者で一番迷惑を被っているんだから罪悪感に駆られる必要は無い。今は兎に角真奈美の為に身体を一日でも早く回復させる事だな」
「………わ、分かった」
元夫はそう言ってくれるのだが、だからと言って周りに迷惑をかけてしまったという罪悪感が消える訳でも無いのだが、真奈美の為に身体を回復させる事が今は一番大事であるという事は私も同感である。
それと同時に私は決心するのであった。
◆
「長い付き合いになりましたが今まで部屋の一角を間借りさせて頂き本当にありがとうございました」
「本当に大丈夫なのか?」
「ええ、新しい部屋も私たちの様な人の為に動いてくれるNPO団体や行政の方達のお陰で保育園の近くかつ安い家賃の場所を探してもらえたからあとはここにきてから地味に増えた荷物を持って引っ越すだけだし有難いことに両親の支援も多少はあるしね。今までと変わる事と言えば高城が居ないだけだよ」
「まぁ、大丈夫ならそれで良いのだが」
あれから私は精密検査を終え、軽度の骨折であり内蔵の損傷は無しという事で退院して高城が住む部屋から出るという考えを告げる。




