感じた事の無い強い恐怖
そう悦に浸りながら饒舌に喋りだす地雷社員。
この手慣れた手つきからも常習犯なのであろう。
恐らく今日の犯行は私のシフトを見てすべてが計算づくされていたのだ。
だから最近大人しかったのかもしれない。
まるで獲物を待ち伏せする肉食獣のようだ。
悔しい。
この地雷社員が危ないと分かっていながら私の危機管理能力の無さに飽きれてしまう。
小太りマダムや先輩おばさん、そして他にも私を心配してくれた方々に申し訳なさで一杯になる。
「じゃぁ。今から一緒に俺の車に行こうか。時間なら心配しなくても大丈夫。ちゃんと休憩という体で抜け出して来たから一時間は時間に余裕があるからな。一時間もあれば余裕でしょう」
やばい。
やないやばいやばい。
まだ休憩室であるのならば誰かがやって来てこの地雷社員を止めてくれる可能性がまだあった。
しかしながらコイツの車に行って仕舞えばもう助かる確率は無いに等しい。
それこそ事が終わってから警察に行くしか無いのだろうが、元夫には何て言えば良いのか。
自業自得と言えばそれまでなのだが私が強姦されたと言ったところで完全にこの話を信じてくれるとは到底思えない。
もし私が夫の立場ならば、はやり全てを鵜呑みにして信用する事は出来ないであろう。
悔しいし、申し訳ないし、後悔してもしきれない。
だからと言って諦めるのか?
私は嫌だ。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!!痛いって言っているだろうがこの糞女っ!!」
「むぐぅっ!?」
「離せっ!離せっ!離せよっ!?」
「うぐっ!、むぐっ!、うぅうっ!!あうっ!?」
そして私は大きく口を開くと地雷社員の腕を思いっきり噛みつき、あまりの痛さに地雷社員は私を振りほどこうとするも、ここで話したら終わりだと両の手でがっしりと地雷社員の身体にしがみ付き、噛みついた口は離さまいとより強く噛みつく。
そして地雷社員はこのままでは振りほどけないと悟ったのか私を殴ったり、膝蹴りし始め、ついには流石の私も地雷社員の抵抗には耐え切れず、振りほどかれてしまう。
それもそのはずで、噛みついていた地雷社員の腕の肉が床に落ちているのが見えた。
噛む箇所がなくなり支えが一つ無くなった結果、振りほどかれたのであろう。
もし今この時が素面であったのならばこの状況を見て気持ち悪い感情が込み上げてくるのであろうが、今の私はそれどころではない。
気持ち悪いと思うより舞う、殺されるかもしれないという恐怖心が圧倒的に勝り、この場から逃げようとするも感じた事の無い強い恐怖心から腰が砕けて歩く事すらできず這うようにしてこの場から逃げようとする。
「よくも、よくもやってくれたな?このアマァァアアアアッ!?」




