梅雨程も思わなかった
そう、先ほどの様に上手く行かなかった時はトイレで罵倒しまくっていたり、店の外で隠れてアルバイト等に仕事を押し付けて自分は仕事をサボりタバコを吸っていたり、女子高校生に手を出そうとしたりしている事など全てである。
勿論それだけで終わる筈がなく、男性従業員やロックオンしていない異性に対してパワハラじみた事をしてこないだ一人の女子高生を泣かせた事も、全てである。
それでいて本人は全くバレていないと思っているのが滑稽というか何というか、逆にそれぐらいの知能しか無いからこそ気付かないのだろう。
周りの評価や自分がやっている事の愚かさに。
そして私は気分を切り替えて年末年始用のオードブルに入れる唐揚げ作りに専念する。
あんな人の為に気分を乱されるのも仕事が遅れるのもシャクだから地雷社員は初めから居なかった程で黙々と唐揚げを作るのであった。
◆
あの日から数日が経ち、あれ以降何事も無く平和な日常が続いていた。
地雷社員もあれ以降は大人しくなったのか仕事態度は相変わらずなのだが女性従業員にちょっかいをかける事はぱったりと無くなったみたいで良かったのか、仕事しない時点でどうにかしろというか、とにかく私からすれば平和とは言い切れないものの平穏な日常が戻って来て一安心と言った所である。
もしかしたら店長にかなりこっ酷く叱られたのかも知れないし、周りでも私と同じ様にその様な推測をされている。
これで彼も心機一転してくれれば良いのだが私には嵐の前の静けさにも思えて警戒心を解く事は出来ない。
その為出勤時と退勤時に会った時の挨拶で毎回身体が強張ってしまうのは致し方ない事であろうし、それを地雷社員に失礼だと指摘されたとしても自業自得だと言いたい。
しかしながら私は心の何処かでは最近大人しくなった地雷社員に対して少しばかり安心してしまったのであろう。
普段は退勤時にタイムカードを切ってそのまま帰るのだが、その時は何故か偶の贅沢に誰もいない休憩室へと缶ジュースを買いに行ってしまったのだ。
後で何故住んでいる場所の近くのスーパーやコンビニで買わず地雷社員がいるこのスーパー、それも人気の無い時間帯の休憩室でジュースを買おうとしたのかと思う羽目になるとは梅雨程も思わなかった。
「やっぱり、俺の思った通り。君は口ではあんな事を言っては居たけど本心では俺の事が気になって仕方なかったんだね?」
「ひっ!?やっ、な、何ですかっ!?触らないで下さいっ!大声出しますよっ!!」




