少ししか痩せない理由
なるほど。
太る訳だし痩せる訳である。
等とは言わずに適当に相槌を打ってその場は流していく。
そうこうしている内に本日のパートのメンバーが揃いはじめ私のお土産からどこに行ってきたのか、あの遊園地の近くにはこんな場所もある等と会話に花を咲かしていると時間はあっと言う間に過ぎ去り、出勤時間が来たので仕事着に着替えてタイムカードを押し出勤する。
「あ、そうそう。昨日店長が言っていたのだけれど今日新しい社員さんが転勤してくるらしいんだけどどうも元居た場所でお痛をしちゃったらしく都心の店舗から左遷させられてここに来るみたいよ。キタちゃんも気をつけなさいよ」
「わ、分かりました」
そして私はチューリップを作る機会に成ろうと意識を切り替えようとしたその時、パートの先輩でもあり私に仕事を教えてくれたおばちゃんからそんな噂話を聞かされる。
いったいそのネタはどこで仕入れてきたのか、どこまで信用していいのか分からないのだが取り敢えずは決めつけるのは良くないのだが先輩の忠告を無視してハブられるのも嫌だしつかず離れずの距離感で接していこうと思う。
恐らく新しい社員さんが来るのは本当で、そこから昼ドラばりのとんでも推理をしてしまっただけで根も葉もない可能性が高い気がするな、と思いながら私はチューリップを作る機械からチューリップを作る鬼へと気分を切り替えていく。
「キタちゃん、一緒に休憩取りましょ」
「北川さんは今日の賄は何を作りますの?」
なんだかんだ言って『どうやれば早くできるのだろうか』『どうやれば綺麗に美しく仕上げれるのだろうか?』等と試行錯誤しながら仕事をこなしていると時間はいつの間にか休憩時間を回っており、一緒に休憩を取ろうと小太りマダムと先輩おばちゃんが誘って来てくっる。
何だかんだで私も小太りマダム同様にこの仕事が、時間を気にせず没頭してしまうくらいには好きなのだろう。
「あ、はい。私も休憩に入ります入りますっ!因みに私は天ぷらを揚げて天丼でも作ろうかと思ってます」
太る、とは思うものの別段女性らしさなど二の次になっている今の私には多少太った所で誰に見せる訳でも、痩せている姿を見せたい人がいる訳でも無いと迷うことなく天丼を選ぶ。
「天丼っ!おいしそうですわねっ!わたくしも天丼と唐揚げにしようかしら」
「じゃあ私も今日は天丼にしましょうか」
そして小太りマダムも先輩おばちゃんも私と同じように天丼をチョイスするのだが、賄は一品のみというルールの為小太りマダムは自腹で唐揚げも追加するらしい。
最早いつもの光景なのだが、良く唐揚をこんなに食べても飽きないなと思ってしまうと共に、メロンパンから鶏むね肉へとおやつが変わっても少ししか痩せない理由はここにあるのだと思ってしまう。




