男と男だからこそ通じる物
そして褒めちぎられた真奈美はどこか誇らしげにデザートであるブラックベリーの入ったゼリーを食べていた。
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高城とのご好意でルームシェアを初めてから一ヶ月半が経とうとしていた。
季節はクリスマスシーズンで街の外は気がつけばどこもかしこも、聞こえてくる音楽までもがクリスマス一色である。
「楽しみだねーっ!」
「うんっ!たのしみっ!」
そして今日は訳一ヶ月振りとなる元夫が真奈美に会ってくれる日でもあった。
朝から真奈美はそわそわしておりいつ嬉しさが爆発してもおかしくないと言った感じである。
私もそんな真奈美を見れて嬉しく思うのと同時にどこか楽しみだと思ってしまう自分がいた。
本来であればそんな事を思っていい立場でない事くらい分かっているのだが、なんだか昔の幸せだった日々に巻き戻った様な、そんな錯覚さえ覚えてしまう。
因みに今日真奈美がこれ程までにそわそわと落ち着きがないのは元夫に会えるだけではなく、待望の遊園地に連れて行ってくれるからである。
その小さな背中には、同じく小さなリュックサックをパンパンにして背負っている。
兎にも角にも真奈美にとって今日は大好きが二個も訪れる最高の日なのだ。
その嬉しさもひとしおであろう。
そして元夫は高城とルームシェアしているアパートの前まで車で迎えに来てくれ、クラクションを軽く鳴らしてくれる。
因みに待ち合わせ場所を指定したのは元夫であるのだが、私が高城とルームシェアしている事は既に知っていたりする。
こうして真奈美と一緒に会う時間がある以上隠し通せるものでも無いと思っていたし流石に黙っているのも苦しかった為三日後ぐらいに元夫にメール(電話は着信拒否されていた為あの頃の連絡手段はメールのみであった為)にて全て話したのだが、私よりも先に高城が事の顛末を全て話していたらしい。
そして元夫はそれを許し尚且つ高城に私達の事、特に真奈美の事を宜しく頼むと頭を下げていたという事を今日知らされ驚きを隠せないでいた。
何というか、偶に見せる男同士の強い信頼関係が元夫と高城との間で見えた気がして少しだけ羨ましいと思ってしまう。
元夫曰く私が間借りした翌日に高城は会社を半休して菓子折持参で事の顛末を告げ、謝罪までしてきたのでだそうだ。
男と男だからこそ通じる物がそこにはあったのだろう。
もし逆の立場だったとしたら私はどうしたのだろうか?
想像するのも億劫な光景しか思い浮かばない。
そして真奈美は車の助手席に座ると言うのでチャイルドシートを二人がかりで外し助手席へとセットし直す。




