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バツイチ子持ちとカレーライス  作者: Crosis


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わたくしのエゴ

しかしながら私には一生関係ない事なので小太りマダムが何を食べているかで一々腹が立つのも馬鹿らしいと、この話題はコレで終わりである。


そして私が話を切り上げ少しだけ沈黙が訪れ、私達二人が黙々と作業する音が聞こえて来る。


と言っても小太りマダムはこの仕事が本当に楽しいのか時折鼻歌が聞こえて来るのだが、その鼻歌も最近流行りのポップな曲ではなくクラシックな感じの音楽なんだろうなと思わせるメロディーをとてつも無く綺麗な声音で鼻歌を奏でるので産まれながらにして金持ちなのだという事が窺えてくる。


「わたくし、北川さんには感謝しているのですよ?」

「な、何よいきなり。気持ち悪いですね」


そんな事を考えながら黙々と作業をこなしていると小太りマダムは急に私に対して感謝の言葉を述べて来る。


しかしながら小太りマダムから感謝される様な事は一回も行っていないし私の金銭面から見ても感謝される様な事を出来るとも思えない上にプライドの塊といった感じの小太りマダムがわざわざ庶民、下手すれば庶民以下の私に対して感謝の言葉を言ってくるという、言い知れぬ気持ち悪さを感じてしまい、そのまま口にしてしまう。


「あら、辛辣ですわね。まぁ、以前のわたくしからすればそう思われても致し方無い事だとわたくしも思いますので痛い所を突かれた様な感じなんですけれども」


そういうとマダムは手を動かしながらも言葉を続ける。


「まーくんの為、まーくんの為という割にはその実自分の為だという事に気付かされましたわ。あのまま何も気付かずに過ごしていたと思うとゾッと致しますもの。もしかしたらまーくんは人の痛みが解らない大人になってしまったのではないのかって。ま、そんな事はたらればですし心優しい大人になったのかも知れないのですけれども、ただ分かる事はどちらに育ったとしても母親であるわたくしは間違いなくまーくんには嫌われていたのだろう、という事ですわね」

「そんな事───」

「そんな事はあるのですわ。だってわたくしがそうですもの。わたくしはあんなに嫌いだった両親とやり方は違えども同じ事をしようとしていた事に気づかされましたの。子供は親のおもちゃでは無いとは思ってはいたのですけれども、なかなか上手くはいかない物ですわね。あの時のわたくしがやっていた事は子供が悪い事をしたら謝るという経験を奪っていんですもの。恐らくは今までもそうやってまーくんが本来経験すべき沢山の事を親であるわたくしのエゴで奪って来たのでしょう」

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