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バツイチ子持ちとカレーライス  作者: Crosis


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小太りマダムには内緒にしておこう

「わたくしは、人に石を投げて悪いと思わない子はわたくしの息子ではございませんわっ」

「うぅぅうういやだぁあああすてないでぇぇえええっ!!!!」


そしてついにまーくんの涙腺は母親である小太りマダムの一言により一瞬にして崩壊して声を出して泣き嫌だと抗議し始める。


親に見捨てられるかもしれないという不安は子供にとっては何よりも恐ろしい事なのかもしれない、と彼を見てそう思う。


「じゃぁどうすれば良いのかわかりますわよね?」

「あやまる………」

「分かっているじゃないですの。ほら、悪いことをしたのですからしっかりと償うのですよ」


そしてまーくんは真奈美の方を向きしっかりと目線を合わせると「いしを、なげて、ごめんなさい」と言って頭を下げる。


なんだかんだ言って素直な子なのであろう。


だからこそ小太りマダムも『うちの子に限って悪い事はしない。だから悪い事はしていない』という様な考えになってしまったのかもしれない。


「ほら、真奈美。次は真奈美も謝るばんだよ。石を投げられたからといって暴力でやり返した事は謝らないとね」


そして私はまーくんの謝罪を聞き終えたあと真奈美にも謝罪をするように言う。


喧嘩両成敗。


とはあまり言いたくは無いのだけれども法に触れない程度の子供たちの喧嘩は百パーセント相手に非が無い限りはやはり喧嘩両成敗にするべきだ。


そうする事によって大人達とは違ってまだまだ子供である二人は明日から友達として仲良くなれる可能性が生まれるからと、私は思うからである。


賛否両論あるかもしれないがこれが我が家の教育方針でもある。


「わたしも、ひっかいてしまって、ごめんなさいっ」


そう言うと真奈美は「なかなおりのはぐ」と言ってまーくんに抱き着くではないか。


抱き着かれたまーくんはというと、耳まで真っ赤になっているのが分かる。


そして私でも分かると言う事は当然小太りマダムも耳まで真っ赤になっているのをばっちりと確認したのち「あらあらまぁまぁっ!!は、初恋かしらっ!?」と今にも小躍りしそうな程テンションが上がっているのが見える。


少し前までの光景が嘘のようだ。


そして私ははたと気付く。


もし仲直りのハグがこの保育園で日常的に行われていたのだとすれば、もしまーくんは真奈美に淡い恋心を抱いていたとすれば、もし常に達也君と一緒にいる事にやきもきしていたのだとすれば、もしこれは好きな娘には悪戯をしたいというあれからくる行動だったのだとすれば。


結果、今回の騒動で一番得したのはまーくんなのかもしれないと、そんな様々なたらればを思いながら、今日は真奈美を慰めまくり褒めまくり愚痴を聞いてあげようと思うのであった。


そしてその結果、真奈美のまーくんに対する評価はかなり低い事が分かったのは小太りマダムには内緒にしておこう。

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