手のひらを反して土下座をする
小太りマダムの余りにも無責任な物言いに私は怒りを隠す事もせずに詰め寄る。
「では、今からあなたには的となり子供たちに石を投げられてもらいましょうか。子供が投げると言えどやはり飛んでくるのは石ですので当たる場所によっては痛いでしょうし下手したら一生残る傷ができるかもしれませんね。それに当たり所が悪ければ失明とかするかもしれませんが子供が投げるのですもの。問題ないですし問題にしないですよね?」
「な、何でそんな事をこのわたくしがしないといけないんですのよっ!?」
「私ってバカですから本当に『子供が石を投げた【くらいで】』と言えるのかどうか実際に確認するだけですよ。ですがあなた曰く子供が石を投げたくらいと言えるぐらいですので大丈夫なのでしょう?でも子供って大人と違って逆に手加減やこれ以上は危ないという域などできないし分からないのでしょうけど、子供が石を投げるくらいですものね。さぁ行きましょうか」
そして私は小太りマダムの胸倉を掴んで嫌がる小太りマダムの言葉を一蹴し聞く耳持たぬとばかりにグラウンドへと引きずりながら向かう。
「わ、わたくしの夫はあの有名な児童を持つ親御さん向け雑誌を販売している出版社の編集長を務めておりますのよっ!!そのわたくしこんな事をしてただで済むと────」
「あら、あらあらあらっ!」
そんな時小太りマダムはついに最後の切り札であろう最大の虎の威を口にするのだが、その言葉を聞き私は待ってましたとばかりに小太りマダムの真似をしながら話を遮りにやりと笑うと小太りマダムの胸倉から手を放す。
そもそも名誉棄損罪と侮辱罪の違いも分からず、そして自分の夫が働いている会社のイメージを損なう行いをしているという自覚が無いうえにむしろ庶民にたいして啓蒙活動をしている風すらあるこの小太りマダムは今や私にとっては恐れる存在からただのネギを背負った鴨にしか見えない。
「い、今更後悔しても遅いですわよっ!覚えてらっしゃいっ!!」
「あら、良くお分かりで。後悔するのも覚えておくのもあなたですものね。今回のこの一連の流れをスマートフォンを使って撮影させて頂いてたんですよ。勿論まるで庶民の事を見下してバカにする様な態度に発言から、石を投げたくらいでという発言まで。あ、このスマートフォンは調子が悪いので途切れ途切れに撮影されているかもしれませんね。子供が石を投げたくらいでという言葉の子供という単語が撮れてなかったり私が反撃するところが撮れてなかったりするかも」
そして私はズズイと小太りマダムに迫る。
「ひっ!?」
「どうしましょうか?マスコミにでも────」
「も、申し訳ございませんっ!」
「聞こえない」
「わたくしが悪かったですっ申し訳ございませんっ!!マスコミにだけは言わないでくださいっ!!」
そしてマダムは私の怒涛の反撃と自らの墓穴により手のひらを反して土下座をする勢いで謝罪してくる。




