物凄く遠回りな言い方でもって
そして三十分程真奈美と一緒に湯船に浸かる。
流石にこれ以上はのぼせてしまいそうだし水分が不足している可能性もある為まだまだ入っていたいと言う真奈美をジュースを餌で釣り、抱きかかえて脱衣所へと向かいしっかりと身体を拭いて着替えさせてからポッカリを買ってあげて飲ませる。
やはり喉は渇いていたらしく一気飲みだ。
そして私も真奈美と一緒にポッカリを一気飲みする。
温まった身体に冷たいポッカリは癖になってしまいそうな程美味しく思えてしまう。
不倫をしている時はこんな、娘と一緒にスーパー銭湯へ行き風呂上がりにジュースを飲むというそんな日常を贅沢だなんて思える日が来るとは思いもしなかった。
そして真奈美を自転車へと乗せて来た道を通って、そんなありふれた幸せを噛み締めて帰って行くのであった。
◆
「き、北川さんっ!!ちょっとっ!ちょっと来てっ!電話っ!!」
休日明け今日も今日とても揚げ物を作っていると少し焦った表情の先輩おばちゃんパートさんが私宛に電話が来ていると教えてくれる。
わざわざパート先まで電話をかけて来るのは何事であろうかと少し不安に思いながら裏の事務所にある電話を取る。
「はい、北川です」
「あ、真奈美ちゃんのさんのお母さんですか?」
この枕言葉から始まった無駄に長く容量の得ない話を聞く事十五分。
要約すれば真奈美が喧嘩をして怪我をさせた相手の親が物凄く面倒臭い相手なのでとりあえず謝りに来て貰えないか、というものであった。
怪我の内容は単なる引っ掻き傷で、喧嘩の内容は相手の児童が真奈美に目掛けて石を投げたのが発端らしい。
その話を聞いて一瞬血の気が引いたのだが真奈美に大怪我などはなく相手同様に引っ掻き傷が少しあるくらいだと聞き安堵するものの釈然としない。
何故こちら側が謝罪をする為に保育園まで行かなければいけないのか、納得出来る訳がない。
しかし悩んだ所でどうすれば良いのか分かる筈もないし、私自身地頭が良くない事は身を持って思い知らされている。
私がその不満を口にした所で言いくるめられて終わりか、余計にややこしくするかのどちらかなのは目に見えて明らかだ。
だったら相手の親御さんが言う様に頭を下げた方が早いというのも分かるし、保育士さんも早く終わらせる為に何重にも真綿で包んで物凄く遠回りな言い方でもって私に謝って欲しいというお願いをしたのであろう。
「だ、大丈夫………娘ちゃん」
「ええ、真奈美は大丈夫みたいですけど少しややこしい事になっているみたいでして……」




